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黎幻光夢  作者: ルネッターナ
第1章「フラビトアの旅路」
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29/30

第25話「初旅」

※長編作品です

2人は先ほどの広場へと戻る。目の前に広がる光景を見て、エルナリアはふふっと声を漏らした。


「やはり、こちらの光景の方が楽しそうです。皆様、目が爛々ですし、何よりわたくしたちに注目していませんから」

「あのリアルな幻覚にいつ惑わされたかは分からないけど、とにかく目の前にある光景が本物ってことでいいのよね」

「そうですね。ちょっと疑り深くなるのは仕方ありません」


エルナリアはブローチを売っていた露店に目を向け、クイっとセラの裾を引っ張る。


「正直、あの女性が見せてくれたブローチが気になっています。行きませんか?」

「ふふっ、楽しみみたいね?もちろん行くわよ」


小走りで向かう。少し視線を動かすとすぐに目当てのブローチを見つけることができた。


「店の方、これはどういうものなのでしょう?」

「エンクイック王国の国花、メイメイよ。娘さん?目がまんまるでかわいいわ!割引してあげるよっ!」


セラは気をよくして言う。


「気前のいいお姉さんだわ、大好き!」

「はい、ありがとね〜!奥さんも1つどう?色違いのお揃いは?」

「乗った!でももちろん割引……よね!」

「勧めた手前、断るわけにはいかないねぇ!持っていきなぁ!」


セラと店主が豪快に笑いあっているのをみて、エルナリアは思わずクスクスと笑う。


「このままその国1つ1つの国花が彫られたアクセサリーを買うのもいいですね」

「そうね!センスあるわー!今回はブローチだから次は指輪!とかもいいわね」

「確かに、とてもいいです」


―それからも2人は露店を巡り歩き、まだ祝意祭1ヶ月前だというのに随分と堪能した。


「―エルちゃん、あそこ。あまり人もいないからちょうどいいわ」


セラが指差した先は、騒がしい広場から少し離れていた。そこには小池があり傍にはベンチがある。


「あまり人もいないようですね、静かなので休むには最適です」


2人は腰を落ち着け、それぞれ買った食べ物を口に入れた。


「それにしても、祭りはまだ先なのにこんなに賑わってるなんて」

「しかし、一通り見た後では大通りとは雲泥の差ですね。わたくしたちが教皇様に拾われた場所ではこんなに騒がしくも、花びらも舞っていませんでした」

「―はぁ……ここ、いいわね………すごく落ち着くわ」


セラは手元の食べ物をそっと見つめた後、視線を上げてオレンジ色に染まりつつある空を眺めた。


「ねぇエルちゃん。祝意祭が終わった後は隣国、フェルタルノに行くけど……ふふっ、なんだか……早かったわねぇ。この国に来て2ヶ月ほど、その中でエルちゃんはたっくさん成長して……魔法も覚えて―初旅、どうだったかしら?」

「初旅……わたくしにとっては始まったばかりだというのに立て続けに色々なことがあったので……なんというか、あっという間でしたね」


恥ずかしそうに目を伏せると、裾をいじる。


「―でも何があったのか、誰と出会って物語を紡いできたのか……はっきりと覚えています……わたくし、ふと思うのです。あの日の生誕祭から……今の今まで―わたくしたちを見届けてくれる人がいる、それはきっと遠い遠い……視線からであって、見つけることのできない存在―」


息を吐くと空を見上げる。


「恥ずかしながら、そう考えることで何とか生きてきたのも事実なのです。しかし、今は―お師匠様が身近にいて、共に旅をする仲間で……本当に何があるかわかりませんね」

「私は今でも、誰かが空から見てるって思ってるわよ。恥ずかしがることなんてないわ、なにせ女神やら魔王やらが存在する世界なのよ―でも、そう考えると不思議よね。この世界以外に存在する世界から干渉があってもいいのに。交流してみたいわ!」

「確かにそうですね。世外―考えたこともありませんでした。お師匠様はわたくしが考えつかないことを思いつくのですね」

「それが私のいいところよ、―さ、話し込んでたらいつのまにかこんなに暗くなっちゃったわ。教皇のお友達として神殿に泊まらせてもらいましょ」


エルナリアは目を見開く。


「えぇ?いいのですか?怒られませんかね……」

「教皇からしてみたらエルちゃんはなるべく近くにいてもらった方がいいと思うけど?預言に関係してるし、何より聖樹に選ばれたんだから」

「わ、わたくしは……」


戸惑いながら目を伏せると、エルナリアは俯く。


「あまり目立ちたくありません……」

「グラナディスに狙われ、不思議なペンダントを持って、魔力量は多いし、預言に登場する。精霊王に選ばれ、極めつきは聖樹に選ばれてる―要素が多いわね。これからの旅、エルちゃんはどんどん遠い場所に行く、私からも離れて行くのかしら」


少し感慨深く感じ、うんうんと頷く。


「そ、そんなこと、わたくしは一切望みません。だってお師匠はわたくしをエルナリアとして見てくれるんですから、それに離れる必要はありませんし……」


モゴモゴすると、セラは微笑みながらエルナリアの頭上に手を置く。


「ふふっ、そうね。エルちゃんはエルちゃん。例えどんな肩書きや後ろ盾があるとしても、私にとってはかわいい子ども……―なんだか、とても嬉しい気持ちだわ」

『救済の運命が開花しますように』


改善点等ありましたら是非ご指摘ください

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