第17話「招待状」
※長編作品です
「あ、やっと帰ってきたわ……!」
声が聞こえて顔を上げると、扉の前に遠目から見てもわかる人影が立っていた。エルナリアは小走りでその人影の元へ向かう。
「―エルちゃん、こんな暗い中1人お散歩?怖くはなかったかしら?」
セラの姿を認め、少し瞳を揺らして目を伏せた。
(思わず……期待、しちゃいましたね)
「……少し不思議な体験をしたんですよ」
「あら?寂しそうな顔してるわね、そんなに良かったなんて……エルちゃんが羨ましいわ」
「羨ましい……?なぜでしょうか」
セラは思い出しながら呟く。
「目が覚めたあと、エルちゃんがいなくて探しに行こうと思って。でもとてつもない激痛が私を襲うの。その原因を見ようとお腹に視線を下げると、アッチャンの手が私の腹を貫いていて……本当にびっくりしたわ」
「えっ?それって、笑い事なのですか……?」
「―……冗談よ」
あまりにも真面目な声音だっため、本当かと思ったが……とにかく、冗談で良かったと安堵の息をつく。
(わたくしを笑わせようと冗談をついてくださったんですね……それにしても、タチの悪い冗談ですが)
エルナリアは思わず笑う。
「あ、笑ったわね!ふふっ、エルちゃんの笑いのツボを把握したわ!」
「お師匠様に把握されてしまいました、どうなるんでしょう?」
「これからの旅、たくさん笑わせるわ!楽しみでしょ?」
「はい、とても……とても、楽しみです」
……
「貴方達……随分と時間をかけてくれましたね?」
クイッと上げたメガネが部屋の光を反射する。
「パーティが終わった後でしょ?なんなら明日行っても良かったけどね」
「そのうるさい口を塞いでやりましょうか?」
「きゃっ」
エルナリアは咄嗟に口元を隠す。その頬はどこか赤みを帯びていた。
「ちょっ、エルちゃん。勘違いしないでよ、やめてやめて。私たちがそういう関係とか吐きそう、本当に」
「悪いことをしましたね、しかしこれは……意趣返しということにしましょう」
「あぁもう、それで?私たちをここに呼び出して何の用?報酬?それならたんまりもらうけど」
「話を勝手に進めないでください―支部長として、私はこの街を救ってもらった恩があります。そこで2人には何か恩返しをしたいと」
「あ、それなら……」
セラはニヤリと笑う。
「この街で無料で飲み食いできる権利が欲しいわね」
エルナリアは悩みながら言う。
「わたくしは……特にありませんね」
「エルちゃん、こういう時に貰えるものは貰っとかないと!」
「コホン、では。セラには酒場にて無料で飲み食いできる権利を差し上げます」
「えっ?それって普通じゃないの?」
「お忘れですか?貴方の冒険者の証は既に失効しているのですよ。つまり、今の貴方はただの実力者です」
「すっかり忘れてたわ……はぁ」
「さて、エルナリア嬢は何がお望みでしょうか?ない、はダメですよ」
「えっと……」
エルナリアは顎に手を当てる。
(……何だか、騙しているようで申し訳ないです……だって魔物たちが攻めてきたのだってそもそもわたくしが原因ですし……わたくしがここに来ることさえなければ襲われることもなかった……そう考えると、罪悪感が……)
「エルちゃん、あまり考えすぎないで。欲しいものとか、権利とか……ない?」
「わたくしは……ただ街の皆様が楽しく過ごせたらそれで……」
(願い……願いとはなんでしょう。わたくしの、願い……)
「エルちゃん、貴方の願いは……何?」
「わたくしの……」
「叶えられる範囲でお願いしますね」
2人はそっと優しく見守る。
「なら、わたくしは―」
最後まで聞いて、支部長は数回頷く。
「ほう?その願い、しかと聞き入れました。楽しみにしててください」
「あら?支部長のその顔、もう1つ何かありそうね」
「分かりましたか?実はこの街の代表者として王城に招待されたのですが、その同行者に貴方達をと言われまして」
セラは目を丸くする。
「いいご身分ね……」
「支部長様が招待を……?この街を治める領主が招待されると思っていました」
「通常であればそうなのですが……数ヶ月前、領主は法令違反で実刑を受け、それが思いの外罪が重かったようで……家族諸共没落してしまい、現在不在中なのです。ちなみに、その家族方は元気に過ごしていますよ」
「……」
「これに関しては、何故?という気持ちが強いのですがね。家族方は仕方がないと仰られていますが、私的には―と。お話に夢中になってしまいました。どうか他言は無用でお願いしますよ」
(それってわざと話したのでは……?)
「それで、返事はどうでしょう?色良い返事を期待していますが」
「どうせ隣の国に行くためには都市に行かないといけないし、丁度いいんじゃないかしら?」
「そうですね、ちなみに……誰が参加をなされるのですか?」
「それは銀の王族や他国の王族方……重要人物等…….」
「銀の王族…?」
思わず聞き返す。初めて聞いた言葉だったのだ。
「あぁ、エンクイック王国の象徴である王族方は揃って銀の髪をお持ちになっています。なのでそのまま銀の王族と呼ばれているのですよ」
「かっこいいですね……銀の王族……」
エルナリアは自らの髪を手に取ってじっと見つめる。
(そういえば、わたくしだけが金髪でしたね。先祖返りでしょうか?)
「でもその中に招待されるって、私とエルちゃんは信用されたって思ってもいいわけ?」
「それはもちろん、街を救った英雄ですからね。それ以外にも、エルナリア嬢は王族ですしセラは街1番の冒険者でしたから」
「なるほど……」
(……わたくし、いつ王族だと言いましたでしょうか……?)
密かに首を傾げる。
「では参加していただけますか?」
「はい、またとない機会ですからね」
「エルちゃんが行くなら行くわ」
「では招待状を渡します。決して無くさないようにお願いしますね」
『救済の運命が開花しますように』
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