第7話「道を変える」
ちょっと難しいかもです。
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※長編作品です
『エルナリア、エルナリア……』
どこからか少女の声が聞こえる。
『必ず守りきって、裏をかかれてはダメだよ―絶対に知られてはいけない、知られてしまったら私のようになるから―あぁ、世界を終わらせないで…同じ運命を辿らないために……はなしちゃダメ、エルナリア―』
意識の中で朧気に少女の声が聞こえ、輪郭が微かに浮び上がる。
(……わたくしは……倒れているのですね……貴方様は―誰でしょうか)
『エルナリア―エルナリア、起きて―』
(……夢が1つ、また消えるのですか―?)
夢現なのか、ぼんやりした思考で思うがまま考える。
(わたくしの海は、夢は―運命はいつか消えると……そう知って、でも抗おうともがいた結果がこれなのです、果たして運命に抗うというのは、本当に抗ったことになるのかと……)
『……抗う必要は無いよ、ただ道を変えるの。キミの選択が運命になると言うなら、突き進めばいいだけ。でも、だからこそ……私はキミに忠告をする。過ちを2度も犯さないために……』
(……眩しい……)
『でも、やっぱり心配。だから待ってて―その日をね』
……
「―っ」
目を覚まし、勢いよく起き上がるとエルナリアは頭を抑える。
「ここは……?」
―陣にいたはずが、いつの間にか移動してしまったようだ。
水平線上にどこまでも続く花畑、空に浮かぶ満月、無数にきらめく星……極めつきはどこからか誰かが歌うような子守唄が優しく耳を撫でるのだ―それは鼻歌のようで最近どこかで聞いたことがあるような声も―
「―あ、もしかして……」
そう呟いたところで、背後から突然の強風が吹き……空中に花弁が舞う。
―『少しばかり、話を交わさないか?』
エルナリアはその場に立ち上がると、体の向きを変え、声の主と向き合った。
「……貴方様が、わたくしをここへ?」
どこか神秘的で、しかし威圧感すらある……エルナリアから見ても美形の類に入るであろうその青年は口元に笑みを浮かべた。
重厚な黒服にマントがひらひらと風で靡き、長髪の黒髪を少し抑えながら言う。
『そうだが、何か不都合でもあったか?』
悪気は無さそうに小首を傾げた。青年が持つ紅色の瞳が月光を反射して美しく輝く。
「……魔法使いめいた女性がいたはずです」
『あぁ……その者ならば今は眠っている頃だろう、直に目は覚める』
「何が目的なのですか」
『余はただ其方と話を交わしたかったのだ……少々強引だったか?しかし妨害を少しばかり受けた故……このような方法しか無かったのだ』
「……」
少し落ち込む姿を見せる青年に、エルナリアは問う。
「貴方様は何者ですか」
『……余は―この世界に住むただの精霊だ』
エルナリアは訝しむ。
『安心せよ、余は其方を傷つけるつもりはない、その逆だ』
青年が手を軽く前に出すと、青白い光がフッと現れ―その光はふよふよと浮かびながらエルナリアに近づいてきた。
それを避けようとするものの、体は固定されたかのように動かず、遂にその光と当たってしまう。
「……?」
しかし、それはエルナリアの体を通り抜けると瞬く間に消える。
青年は―どうだ?と言わんばかりに微笑むとその身を翻し数歩歩くと立ち止まる。
『これで分かってくれたか?』
「……」
先ほどの行動の意図はよく分からなかったが、とりあえずは敵意が無いことを確信し、エルナリアは頷く。
(もしわたくしを殺害したい意思があるのならば手間がかかる方法を取らずにさっさと殺すはずです……少なくとも、今は警戒を解いても問題は無いでしょう)
『少し語り合おう』
青年は振り向く。
「先程から流れるこの子守唄は……誰が歌っているのでしょうか?」
『あぁ……これは余の母が歌っていた、眠れぬ時によく聞かせてくれたものだ。余の記憶から抽出し、世界に流している』
「そうなのですか……」
すると、その青年はフッと笑う。
『余のことをしばらくは煌月と呼んでくれ。其方の名は?』
「わたくしはエルナリアと申します」
『エルナリア……良い名前だな』
「その、煌月様はいつからここに……?」
『生まれた時から、1度も離れたことは無い―故に、俗世に興味があるのだ』
「俗世……わたくしがいる世界のことでしょうか?」
『あぁ、だが気軽に外出することは叶わない身……どうしようかと思案していた矢先、其方と出会ったのだ』
―煌月はどこか遠い目をする。
『余と契約できたものは1人として存在せぬ。それは最近まで俗世に興味がなかったのもあるが、何より足りる器を持たぬ者が多い』
「しかし、世界は広いです……流石に1人ぐらいは居るのでは……?」
『器を持つ者はいる、だが選ぶには条件が足りぬ場合が多い……余としても、不本意な相手との契約は遠慮したいのだ』
「そういえば、精霊は気に入った相手とだけ契約するとありましたね……」
『だからこそ、余に選ばれた其方は運がいい。滅多に姿を現さない余が顕現してるだけ珍しいというのにその上対話しているのだ。故に子供達も気になるというもの』
そう言って視線を横に向ける。エルナリアも同じように向けると何かが逃げていく様子が見えた。
「……あれは?」
『様子が気になったのだろう、気にすることでは無い』
気を取り直して前に視線を向けると、目が合った。
「ちなみに、煌月様と契約出来る条件とは……?」
『精霊に好かれる者、また余と対等に話すことが出来る者、余が入ることができる器がある者……難しくは無いだろう?』
「……わたくしの世界では、精霊に好かれる者は魔力が乏しい傾向にあります」
『あぁ、魔力は器を満たす。すると精霊の居場所はなくなるからな』
煌月は顎に手を当てると微かに頷く。
『だが其方は違う――器そのものが大きい。魔力が溢れても、まだ余地が残っている。だから余は其方を選んだのだ』
「そうなのですか……」
曖昧ながらも頷く。
(魔力と精霊……このバランスが大切なのですね)
『しかし例外はつきもの、器と魔力は先天的に大きさは決まっているが、器に関しては稀に成長することもある―だが得てしてそのような者は早死にしやすい』
「いつ頃に死ぬ傾向があるのですか……?」
エルナリアは少し怖くなった。
『成人後だな……怖いのか?』
視線を彷徨わせた後、目尻を下げる。
「少しだけ……」
煌月は愛らしいと言わんばかりにフッと笑った。
『安心せよ、其方はとんだ逸材だ。先天的にも凄まじい器と魔力は成長したとて支障はない、だが残念なことにまだ成長しきっていない器故……余と契約はできない、しかし今ある器のスペースであれば余以外ならば誰とでも契約できるだろう』
煌月は優しく微笑む。
『こうやって精霊界に人を呼び寄せるなど初めてだ、それほど其方のことを気に入ったということか……』
「わたくしはどうしたら煌月様と契約できるのでしょうか……?」
『待つ他ない、其方の器が成熟しきったその日に……余自ら出向こう、その時―其方が判断してくれ』
「その前に煌月様が他の人と契約する可能性もあるのですか?」
『ふっ、ないな。其方以外興味を持てそうにない、俗世に興味を持ったのは其方がいるからだ、いつまでも待とう』
「そ、そうですか……」
エルナリアは動揺する……考えているような意図はないにしても、そのような言葉は如何なものか……
『だがその前に其方に死なれては余も心が痛むというもの、そこで提案なのだが、仮契約を結ばないか?』
「仮契約……?」
『完全な契約は結べないが、其方の命を数回は守ることができるだろう』
聞きなれない言葉に、エルナリアは小首を傾げた。
――
分からない人向け、セラ先生の説明〜
まず、精霊と契約出来る場合の殆どは、魔力が少ない人、それは、魔力が少ない=精霊が入れるスペースが大きいから!
人は生まれながらにして器の大きさは決まっているけど本当に稀にその器が成長する人がいる。
器……魔力と精霊のスペースのこと。
魔力〉精霊の場合は精霊と契約しにくい。魔力〈精霊は契約しやすい。
エルちゃんは器がとても大きいのにその上さらに成長しようとしてる、魔力が占める割合もそれほど多くないから精霊と契約できる!
これがいわゆる例外ってやつね!
注意してほしいのは、魔力は生まれた時に必ず決まるから増えはしないってこと!
エルちゃんは精霊のスペースが大きくなっていってるの!
えっと、ここで疑問に思う方もいるかもね。
精霊に好かれる人は魔力が少ない人だけなの?って。
それは違うわ、人格的要素も必要なの。精霊に好かれるっていうのは、もちろん魔力の少なさもあるけどその人の人柄にも影響される。
つまり、魔力が少なくても悪い人なら精霊に嫌われるってこともあるの。
魔力が多いけどスペースが少ない……でもいい人……この人としか契約したくない、スペース少ないけどこの人がいい!契約する!
ってなる場合もあるから、皆諦める必要は無いわよ!
『救済の運命が開花しますように』
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改善点等ありましたら是非ご指摘ください




