第9話 閑却
いつも読んでいただきありがとうございます。
気分を調整してからお読みください。
1人の獣医がいた。
患者も多く、信頼もされている。
だがその一方で、クレームやトラブルも多かった。
「これは風邪みたいなものですね。薬を出しておきます」
「分かりました」
飼い主は薬を受け取り、家で与え続ける。
だが――良くならない。
不安になり、別の病院へ向かう。
「これはウイルスですね。何の薬を与えていますか?」
「これです」
「……これ、ただのビタミン剤ですよ」
「えっ!?うちの子、大丈夫なんでしょうか……」
「この状態なら、きちんとした薬で回復します。何かあれば連絡してください」
「ありがとうございます……!」
こうしたことが、何度も繰り返されていた。
患者は徐々に減っていく。
それでもゼロにはならない。
ネットの評判。
「近いから」という理由。
高級住宅街が近く、経営には困らなかった。
「先生!うちの子、足が動かなくて……折れてるかもしれないんです!」
「すみません、うちは予約制です。緊急なら他の病院へ行ってください」
「え……診てくれないんですか?鳴いてるんですが……」
「予約がないので無理です」
「……分かりました!」
飼い主は別の病院へ駆け込む。
「お願いします!」
すぐに対応したのは、別の獣医。
応急処置を行う。
「今日は入院させましょう」
「……ありがとうございます。本当にありがとうございます」
こうしたことも、何度も続いた。
診察を終え、帰ろうとしたその時。
部屋のドアが開かない。
「……ん?なんだ?」
何度試しても、開かない。
次の瞬間――
部屋が暗くなる。
「なんだ……?」
声が響く。
「因果応報」
「……なんだ?何が起きてる?」
明かりが戻る。
だが様子がおかしい。
見慣れた診察室。
しかし――
自分が診察台の上にいる。
「……は?」
理解が追いつかない。
その瞬間、体が拘束される。
「なにする!やめろ!外せ!」
声が響く。
「風邪だな」
雑に注射が打たれる。
「やめろ!」
1本。2本。3本――
何本も打たれる。
体調が急激に悪化していく。
倦怠感。頭痛。吐き気。
「なにを打った……!」
返事はない。
次の瞬間。
鈍い音。
足に衝撃。
「ぎゃあああ!」
完全に折れる感覚。
声が響く。
「予約制なので」
さらに殴られる。
足。腕。
骨が折れる。
獣医は悶絶する。
だが――放置される。
「元気になりましたが、まだ骨がくっついていません。無理はさせないでくださいね」
「本当にありがとうございました。今後もよろしくお願いします」
その動物は、今――
骨折も治り、元気に散歩している。
読んでいただきありがとうございます。
気分は大丈夫ですか?
無理をしないように気を付けてください。




