第2話 かけがえのないもの
2話目です、気分を害する恐れがありますので、ご理解のうえお読みください。
ある夫婦がいた。
子供はいなかったが、大型犬を飼っていた。
まるで自分たちの子供のように、可愛がっていた。
だが――その大型犬に、突然の悲劇が訪れる。
子供が生まれたのだ。
夫婦は次第に、大型犬を構わなくなっていく。
すべての時間と愛情は、子供へと向けられた。
大型犬は、かまってほしくて必死だった。
イタズラをしたり、飛びついたり、
できることは何でもした。
それでも――夫婦が振り向くことはなかった。
数ヶ月後。
突然、車で出かけることになった。
大型犬は散歩だと思い、嬉しそうに車に乗り込む。
長い時間、揺られる。
どれくらい走ったのか、分からない。
やがて着いたのは、大きな公園だった。
リードを外される。
大型犬は嬉しそうに走り回った。
――だが。
少しして、気づく。
夫婦の姿がない。
車もない。
必死に公園の中を探す。
走り回る。吠える。何度も、何度も。
それでも――何も返ってこない。
その時、理解した。
捨てられたのだと。
家に戻った夫婦は、こう言った。
「あの子がいたら、子供が危ないかもしれない」
妻が言う。
「これからは、この子がいるからね」
夫が続ける。
その瞬間。
視界が、真っ暗になった。
「なに?どうしたの?」
「何があったの?」
慌てる二人。
やがて視界が戻る。
だが、何も見えない。
目隠しをされている。
体も動かない。
縛られている。
かろうじて、声だけは出せた。
「どこ?あなた?」
「ここにいる……大丈夫か?」
「子供は……?」
互いを確認し合う二人。
その時――
「因果応報」
低い声が響く。
「なに?」
「誰?」
「お前たちは、家族を捨てた」
「家族を捨てた?」
「妻はここにいる!」
「私たちは、家族を捨ててない!」
乗っている何かが止まる。
車なのか、それすら分からない。
突然、男だけが引きずり降ろされる。
「なんだ!?何をする!離せ!」
「あなた!?どうしたの!?」
――バンッ。
音だけが響く。
もう、声は届かない。
「え……あなた……?」
その後、何度か移動させられた。
やがて、女も降ろされる。
目隠しが外されると――そこは海だった。
小さな島。
「え……なに……?」
混乱する女の耳に、別の声が届く。
「よしよし、いい子だね」
「ゆっくり水飲みな」
「ここでゆっくり暮らそう」
その先にいたのは――あの大型犬だった。
大きな家の庭で、穏やかに座っている。
どこか寂しさは残っている。
それでも――確かに、幸せそうだった。
新しい家族に囲まれ、温かい場所で生きている。
もう、何も心配はいらない。
その後。
海外で、衰弱した日本人が二人、保護されたというニュースが流れた。
男女一名ずつ。
身元は不明のまま――。
気分は大丈夫でしょうか。
無理をしないようにしてください。




