茅島秀青、顔をほころばせる
茅島秀青は、自分の世話をロボットであるアリシア2234-LMNに丸投げされていると感じ、祖父や両親には強く反抗できなかった鬱憤をロボットへの不信感へと本人も気付かないうちにすり替えてしまっていて、強くあたるということをしてしまっていたものの、アリシアとの出逢いを経て、自分自身と向き合い、自らを律することができるようになったという経緯がある。
それをもたらしてくれたアリシアに対し、秀青は敬意すら抱くようになっていた。
しかし、同時に彼はまだ、子供っぽさが抜けきらず、普段の振る舞いにおいてまで素直な気持ちを表せるようにまではまだ至っていない。
それでもアリシアの方も、そんな彼の心情は察していて、秀青がぶっきらぼうな態度をとったとしても、気にすることはもうない。
それどころか、彼のそういう部分を、『可愛い』とさえ思っていた。
「ところで秀青さんは、どうしてここに?」
アリシアが問い掛けるものの、これも 普通のロボットは人間のプライバシーに積極的に踏み入ることはしないので、ロボットよく知る者にとっては、違和感を覚える質問だっただろう。
アリシアも、相手が、秀青でなければおそらく口にしなかった。
そんなアリシアに、少し苦笑いは浮かべつつも、秀青は、
「この近くに、昆虫の研究をしている専門家がいるんだ。だからこうして時々、遊びに寄せてもらってるってことだよ」
正直に応える。
「ああ、なるほど」
その<専門家>については、アリシアも、他ならぬ秀青自身から聞いていた。なんでも、元々は地球に拠点を置く生物学者で、火星で独自の進化を遂げた昆虫達の研究をするために火星に移住したという人物だそうだ。
年齢は、彼の祖父と同年代とのことらしいが、すごく子供っぽいところがある人物らしく、
『なんか僕より年下のような気がする』
とまで、秀青に言わせるほどだとのこと。
どこに住んでいるかまでは聞いていなかったが、まさかこの辺りに住んでいたとは。
そしてアリシアは、こうして偶然、彼に会えたことで、ハッとなった。
『そうか。具体的な繋がりはなくても こうやって再会することだってある。必ずしももう二度と会えなくなるというわけじゃないんだ。会える機会は、いつだって残されてる。お互いに生きてさえいれば…』
それに気付いた途端、気持ちが落ち着くのを感じた。
そしてそれは、アリシアの表情にも表れていて、
「なに、笑ってんだ?」
秀青に問い掛けられてしまった。
「え...っ!? ごめんなさい! 私、笑ってました…?」
慌てる彼女の様子がひどくあどけなく見えて、秀青も、
「お前は本当に変なロボットだな…!」
顔をほころばせてしまっていたのだった。




