千堂アリシア、思いがけない再会
『千堂アリシアか……?』
「え……っ?」
思いがけず名前を呼ばれ、しかも聞き覚えのあるそれに、アリシアはハッと声の方に振り返った。
「秀青さん……!」
彼女が声を上げたとおり、そこにいたのは、<茅島秀青>だった。
<茅島秀青>
アリシアの主人である千堂京一の隣人、<勝昭=ミシェル=茅島>の孫にして、千堂アリシア(アリシア2234-LMN-UNIQUE000)と同型機である<アリシア2234-LMN>を従えた少年。
以前、彼が、<カセイヒイロシジミ>の研究のために知らずに千堂邸の敷地内に侵入してしまった際に知り合ってから、<カセイヒイロシジミ>をはじめとした様々な昆虫などの情報交換を中心とした交流が続いている。
しかし、思いがけない出会いだったのは彼の方も同じで、明らかに驚いた様子だった。
成長期ということもあってか、知り合った当時よりも明らかに背が伸び、やや大人びた彼だったものの、さすがに少しあどけない表情にもなっている。
「やっぱり、千堂アリシアか。まさかこんなところで出会うとか、奇遇だな」
「は、はい。私もまさか秀青さんがいらっしゃるとは、夢にも思いませんでした」
「夢にも思わないとか、普通のロボットは言わないぞ。お前はやっぱり変なロボットだな」
昆虫に興味を持っている彼は、ロボットにも詳しく、だからこそ彼女が普通のロボットではないということも察していたものの、詳しいからこそ、その辺りはあまり深く詮索しない方がいいと察することもできる聡い少年だった。
それもあり、
「千堂さんのお遣いか? にしてもなんだその格好は。千堂さんの趣味じゃないだろ。なにがあった?」
安ジャージをまとった彼女がこの場に一人でいる事情も、察してしまう。
「あ、こ、これは、着ていたスーツが破れてしまって、仕方なく……」
明らかに照れくさそうに応えるアリシアに対しても、
「お前はホントにドジだなあ」
呆れながらも柔和な笑みを見せた。そんな彼に、アリシアも、
「あはは……」
照れながらも笑顔を返す。と同時に、なんとも言えない安堵感も覚えていた。その上で、
「秀青さんこそ、お買い物ですか?」
と問い掛ける。加えて、
「今日は、アリシア2234-LMNとは一緒じゃないんですね」
とも。彼を守らせるために祖父が与えた<アリシア2234-LMN>の姿が見えないことを口にする。彼とは<友達>だからこその気安い質問だった。
それに対して秀青も、
「ああ、僕だっていつまでも子供じゃないからな。あいつに守られてばかりじゃないよ」
今度は、実際の年齢以上の印象を受ける強かな笑みを浮かべて、応えたのだった。




