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千堂アリシア、人間の心理を想う

ロボットは、人間がやりたくない、人間がすると危険な、人間にとって苦痛な、様々な仕事や作業をこなすために開発・改良が続けられてきた。


二十世紀後半から二十一世紀初頭にかけて、ロボットというものが人間の世界に姿を現し始めた頃には既に『いずれあらゆる場面で人間にとって代わるだろう』とは言われていたものの、最初の百年は残念ながら玩具の域を出ないものだった。


ゆえに、長きにわたって、メイトギアのようなヘルパーロボットの実現は夢物語だと揶揄されてきた。


しかしそれでも、家庭内での雑事はもとより、それこそ公園における犬猫の糞の始末などといった、必ずしも危険ではないができればやりたくないという作業を肩代わりしてくれる存在は強く求められ続け、技術者達のたゆまぬ努力の甲斐もあり、フィクションの中でしかありえなかった、人間が求める全てを実現するロボットが実用化されるに至った。


家事をこなし、不眠不休で街角に立って犯罪に目を光らせつつ空いた時間には街の清掃さえしてくれる警察用のロボットなど、人間にやらせていてはおよそ非現実的なものにしかならない役目さえ、こなしてくれるようになった。


もちろんそんな細々とした雑用までさせられるようになったのは、人間を雇うよりもむしろコストを抑えられるくらいにロボットの価格自体を下げられたというのもある。その上で、『せっかくいちいち文句を言わないロボットを使うんだから』とついでにあれこれやらせてるうちに、警察用のロボットに街や公園の清掃までやらせるに至ったという経緯もある。


にも拘らず、ロボットにやらせてしまえばいいものをあえて自分たちでやろうとする人間がいる事は。不思議と言えば不思議だったかもしれない。


文句や愚痴を言いたくなるような作業を人間に代わってするために自分達ロボットは作出されたはずなのにやらせようとしない人間の心理の難しさを、アリシアは改めて痛感していた。


自分達ロボットの存在意義を否定するかのようなそれでありながら、なぜか不思議と嫌じゃなかった。


ロボットが誕生する以前、人間はどうやって暮らしていたのかを垣間見せてくれるものだと思った。


思いつつ周囲の様子も油断なく窺う。するとその時一匹の猫の姿をアリシアのカメラが捉えていた。


ナニーニではない。別の猫だ。ただし、一瞬見ただけでは猫には見えないかもしれないが。猫にしては大きすぎるのだ。


と言うか、丸い?


<猫のプロポーション>をしていない。推定体重七キロ強。明らかに重度の肥満。


「あ、ブータ」


その猫の姿に気付いたコデットが声を上げる。その名前なのだろう地域猫の一匹だと思われる。


しかし<ブータ>とは…



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