27.私の気持ち
「であるからして----」
ジルバ先生のお話しは分かりやすく、柔らかな声は頭にすっと入ってくる。今日から王家について学ぶ事となり、ダンスやマナーといったレッスンは明日から始めるようだ。
私は将来、騎士となり皆の近くで生活していきたいとはっきりシュウに伝えた。シュウは私の気持ちを分かっていたようで、ジルベート王と話してくれているという。
何でも私の両親が亡くなっていた為、籍をどうするか決めてから直接会って話してくれるらしい。私自身は孤児のままでもいいのだが、シュウいわくそれは難しいようだ。
王族として身の危険を常に考えるよう言われたものの、どういう危険があるのか私には良く分からない。その為シュウに頼んでジルバ先生の授業に組み込んで貰った。
今行われている授業は、王家の役割と何故王族は命を狙われるのかだ。
将来騎士になるとしても、王族の一員として知識はちゃんと取り入れたいと思うし、何より迷惑だけはかけたくない。お披露目パーティーの日にちも決まり後三日と迫っていた。
しっかり勉強しないと----
トントン。
ノック音が部屋に響いたので、扉へと視線を動かす。開かれた扉から顔をみせたのはシュウの侍従だった。
何かあったのかな?
シュウは侍従の言葉を聞いて、ニヤリと片側の口角を上げた顔で私を見てくる。久しぶりに見るシュウの表情にどんな顔で返せばいいか悩んでしまった。
「ジルバ先生、すみません。シアに客人が来たようなので、授業はまた後日お願い出来ますか?」
----- 客人? ここにいる私へ会いにきたって事はセレステア様かな?
でも---- シュウの表情から考えればそれはないだろうなと何となく分かる。シュウがああいう表情をする時は何か企んでいる時か、面白がっている時だ。
そういえば---- ミリヤ嬢って大丈夫だったのかな?
金色を持つ三人に囲まれた時を思い出し、思わず体がゾっとした。
「シア様に客人ですか。それは優先させないといけませんなあ。ではまた後日にお会いしましょう」
「宜しくお願いします」
シュウに連れられ部屋を出た私は客間へと足を進める。
「ねえ、誰が私に会いにきてくれたの?」
「それは会ってからのお楽しみ」
ご機嫌の殿下は何故かウィンクまでしてくる始末。
何でこんなに機嫌が良いんだろう------ 私じゃなくてカレン様が来たのかな?
ボーっと考えていたらシュウが急に立ち止まったので、シュウの背中に顔をぶつけてしまう。
「シア。またボーっとしてたの? まあいいか、客間に着いたよ。扉を開けて?」
「えっと---- ごめんね。私が開けるの?」
「そうだよ。シアの客人だからね、ほら早く開けなよ。中にいる人がシアを待ちわびてるよ?」
シュウの笑顔に何だか怖くなりながら、恐る恐るドアノブに手を置きゆっくりと回す。ドキドキしながら開けて中を覗くと、セバスの顔が目に映り込んだ。
「あっ、セバス!」
嬉しくなり思わずセバスへと駆け寄る。セバスが私を見てソファから立ち上がったので、そのまま勢いよく抱きついた。
「セバス、会いたかった。マリやカイは? セバス一人?」
「シア---- 元気そうで良かった」
抱きついた私をセバスが抱きしめてくれる。ギュッと私を抱きしめ、話しかけたが無言のまま中々離してくれない。
ど、どうしよう----- 怒ってるのかな?
「セバス、いい加減離れたら? 心配だったのはわかるけどさあ」
「殿下。説明してくれないから心配したんですよ」
「ハハッ。やっぱりセバスは面白いよね! 流石僕の従者だ、まさか城にまで来るとはね」
「ハア---- こうでもしないと当分シアに会えなさそうでしたからね。どうして学園に帰って来ないんです? いい加減説明してくれませんか?」
「まあ落ち着きなよ。取り敢えずソファへ座ろうか。シアを離してあげて」
「シア、それにしても色を隠さなくていいのか?」
セバスの体が少し離れたと思ったら、今度は私の顔をじっと見てきた。私を見てくるセバスの目の位置が高くなっているのに気づく。
セバスってこんなに背高かった? 何だか大人ぽくなったように感じる。
「まあそれも説明したら分かるから、シアこっちにおいで」
シュウの元へ行き一緒にソファへと腰を下ろす。
「セバス歓迎するよ、シアも皆に会いたがっていたしね。今日は一人かい?」
「はい。会える保証が無かったので」
「セバス、マリとカイは大丈夫? 元気にしてる?」
「ああ、大丈夫だ。でもマリが心配してるから手紙を書いてやれ」
「分かった。セバスごめんね? 二人にも謝っておいて?」
「シアは謝らなくていい。どちらかといえば殿下に俺は怒ってる」
「ええー、何で僕に怒るの? 八つ当たりも良いとこだよ、シアもそう思うでしょ?」
「シュウ---- セバスは--」
「シア、どうして殿下の事をシュウって呼ぶんだ?」
「えっ。それは----」
「ハハッ。セバスが心配するような関係じゃないよ。シアと僕は家族だからね、当たり前だろ?」
「なっ家族?」
「そうそう、家族や親しい人は僕の事シュウって呼ぶんだよ」
「家族ならシアは王族? 殿下の兄弟?」
「まあ正しく言えば従姉妹かな、そこはちょっと複雑だから話がまとまったら説明するよ。今セバスに言えるのはシアが王族だっていう事かな。こないだシアを見て気づいちゃったんだよね」
「でもシアは金色じゃありません、どうして----」
「それはまた後に分かるよ。お披露目パーティーで父様が説明しないと僕からは詳しく言えないんだ」
「そんな----」
「セバス、わざわざ城まで会いに来てくれたのにごめんね。出来るだけ早く学園には戻るつもり、私もマリやカイと会いたいし----」
「折角だし、マリやカイも呼んだら?」
「大丈夫? 良いの?」
「今日はもう何もないし、明日から忙しくなるから会いたいなら今しかないよー。僕もカレンを呼ぼうかな」
「シュウも会えてないもんね」
「マリとカイなら街に出てる筈だから、俺が探してきます」
「騎士を一人セバスにつけるよ。僕の大事な客人だからね、ちょっと待ってて今連れてくるからさ」
「分かりました」
シュウが退室し、セバスと久しぶりに二人きり。厳密には侍女もいるけど、二人で対面するのはいつぶりだろうか----
「シア、城の暮らしはどうだ?」
「あ、うん。皆優しくしてくれるよ」
「そうか。それにしてもお姫様みたいな格好だな。凄く似合ってる」
「本当? 嬉しい。でも全然慣れないんだよね」
「ああ、本当だ。シアの色にその青いドレスはぴったりだな。でもまさか王族だったとは」
「私、シュウに言われて色々怖かったんだけど、皆私を受け入れてくれたの」
「なあ、シアの両親は生きていたのか?」
「ううん、亡くなっているようなの」
「いるよう?」
「そう。母親は分かったんだけど、父親がまだちゃんと分かっていないの」
「何でシアを王族だって皆認めたんだ? 両親はいないんだろう?」
「それは----」
「はーいセバスそこまで! シアに聞くのは反則だよ。騎士を連れてきたから、早く街に行って連れておいで」
「殿下---- マリやカイの事感謝します。じゃあシアまた後で」
セバスがいなくなるのを見計らったように、扉が閉まったとたんシュウが話し始めた。
「前に城へ入った時、裏口を使ったの覚えている?」
「うん、それがどうかしたの?」
「セバスさ、その近くの門あたりに隠れてたみたいだよ。運良くビルドが見に行ったから良かったけど、一歩間違えれば捕まっていたんじゃないかなあ」
「そんな----」
「そこまでしてシアに会いたかったなんて、愛を感じるよね。シアもそう思わない?」
---- セバス。そこまでして私に会いにきてくれたの?
セバスに抱きしめられた時の温もりを思い出し、視界が歪む。どうして---- セバスの気持ちに胸が温かくなった。
私の事、心配してくれたんだよね。セバスに有難うって言わなきゃ--- セバスには感謝してもしきれない。マリやカイもだけど、セバスがいたから今の私がいるんだ。
もしかして、この温かい気持ちが好きって事なのかな?
シュウが言う愛ってどんな気持ちなの?
マリやカイの到着を待つ為、一度部屋へ戻った私はソファへと転がる。
セバスに対する気持ちがどういう気持ちなのかはっきり分からなくて、目を瞑ったまま自分へ問い続けた。
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