24.顔合わせ
「じゃあシア。中に入るよ」
シュウに付き添って貰いながら部屋へ入れば、金の髪を持つ人々が椅子に座ったまま私へ顔を向けた。興味深そうに見られる視線に緊張してしまい、思わず顔を伏せたくなる。軽く顔を強張ってしまったがどうにか前を向いて空いてる席へと歩き腰を下ろした。
「皆に連絡した通り、先日シアの目に王家の紋章があるのを確認した。シア挨拶しなさい」
「はい---- シアといいます。宜しくお願いします」
私は緊張しながら席を立ち頭を下げる。
「シアの両親は未だ分かっていない。ここに皆を集めたのはシアの両親を探す為でもある。心当たりのあるものはいないか?」
胸の音を煩くしながらも顔を上げる。誰が自分の親なのか見る為、座る人達を喉をならしながらゆっくり見回した。
考えているのか皆無言のままひたすら時間が流れていく。シュウに声をかけられて一先ず腰を下ろし様子を見ていた。
「ジルベート、お聞きしてもいいかしら?」
「何だ? 聞いてみろ」
1人の女性が沈黙を破る。口を開いた女性はジルベート王の姉だとシュウが小声で教えてくれた。
「シアは何故、髪と瞳が金色ではないのかしら?」
「それは俺にも分からない。俺が思うにはシアの色はセシリア様に似ている。それを踏まえると両親は王族内の者、血が濃いから魔力も高く色が変化したと考えている」
「そう、つまり私達の中に両親がいるとジルベートは考えているのね」
「そうだ。その方が納得がいく」
「私も聞いていいかな?」
「ユダ。質問を聞こう」
「私達の中に両親がいるなら処罰とかは考えているのか? 近親婚は禁止されている筈だ。どうする気なんだい?」
「今回ばかりは目を瞑ろう。禁止した理由は魔力が高くなりすぎて命を縮めるからだ。シアは生きているのだし今後も続かないのならそれでいい」
「そっか、それで? シアは今までどこにいたんだい?」
「シアはタリジア王国の最北の街で育ったようだ。リバイアの兵士によって襲撃を受けた時、育ての親が殺され王都にある孤児院へ来たと聞いていている」
「分かったよ---- 辛い事を聞いてごめんね?」
「いえ---- 大丈夫です」
ジルベート王の弟であるユダ様はシュウと雰囲気が少し似ている。シュウに教えて貰ったのだがジルベート王には四人の兄妹と六人の従兄弟がいるようだ。二人は若いうちに亡くなってしまったようで、今日は八人のうち六人が集まってくれている。
「僕も質問していい?」
「いいだろう、質問を受けよう」
「シアの両親を示す物とかはないの?」
「示す物かはわからないが---- シア腕輪とネックレスは持ってきているか? 皆に見せてやって欲しい」
「分かりました。これです」
シュウに金の皿の様な物を差し出され、促されるまま腕輪とネックレスを上に置くと1人1人に見せるよう皿が回されていく。
「金色の腕輪は髪や瞳を変える魔導具だ。ネックレスは母親の形見のようだ。見覚えのある者はいないか?」
腕輪とネックレスを皆が確認していく中、目をつり上げた一人の女性が目を見開きネックレスを持ったまま動きを止めた。
「シアはいくつなのでしょう?」
自分で答えるべきか悩みジルベート王を見れば手で促される。自分の親かも知れない女性に緊張し手を握りながら口を開いた。
「---- 十四です」
「育ての親は?」
「マーサという女性に育てられました」
「そう----」
緊迫した空気が流れ出し皆女性に顔を向ける。私の胸が大きく音を立てて煩い。
------ この人が私の母親なの? 確かシュウがセレステア叔母様が同じような石のついたブレスレットを持っていたと言っていた筈。亡くなったと思っていたけど、生きていたの?
女性は静かにネックレスを皿の上へ優しく置き小さく息を吐くと、私を真っ直ぐに見つめて目を潤ませた。
「シア---- 貴女の母親はシンシアよ」
「シンシアだって?!」
ガタッと椅子を動かしながらユダ様が立ち上がった。
「ええ。ここにある物は私の妹であるシンシアの物に間違いありません。マーサはシンシアにいつも付き添っていた侍女。急にいなくなったと思えば子供を産んでいたなんて---- シア。私の考えが甘かったわ。探してあげられずごめんなさい」
「い、いえ---- あの、シンシア様---- 私の母は亡くなったんですよね?」
「ええ---- いなくなってから病で亡くなったとマーサから連絡を受けて遺体だけ引き取ったわ。シンシアが亡くなったのはサリーシャ王国だと思っていたけど違ったのね」
「セレステア。その様子だと父親は分からないのか?」
「------ 心当たりはありますが---- 確証はありません」
皆互いに顔を合わせて様子を伺っている。父親はこの中にいるんだろうか---- 名乗らないって事は私の事嫌なのかな----
「誰か言ってみてくれないか?」
「そうですね。---- シアの父親はレオンかと」
「レオン? どうしてレオンだと?」
「シンシアが亡くなった時、シンシアの部屋に入り片付けていると机の奥から手紙が出てきました」
「そうか---- レオンか---- シア申し訳ない。シアに両親を合わせる事は難しそうだ。二人とも亡くなってしまっている。今日出席が出来なかったレオンの弟に会えるよう手配しておく。何か知っているかもしれないからな」
「シア、本当にごめんなさい。シンシアの子に会えて嬉しいわ、顔を近くで見ても良いかしら?」
セレステア様はゆっくりと席を立ち私の元へと弱々しく歩いてくる。私の顔を間近で見たとたんセレステア様の目から涙が溢れ出し、口元を手で隠して体を震わせた。
「ああ、近くで見たら目や口元がそっくりなのね。シンシアの若い時のようだわ」
---- 私母親に似てるんだ。嬉しい気持ちと会いたかった気持ちで視界が歪んでしまう。
「シンシアも可哀想に。子を産んですぐ亡くなるなんて-- シア今まで苦労をかけましたね。ごめんなさい」
「いえ、マーサに育てて貰いましたし、幼なじみと一緒に王都まできたので大丈夫です」
「幼なじみ?」
「はい、ですからあまり気になさらないで下さい」
「そう。明日、何か予定はあるかしら? シンシアの形見をシアに渡したいわ。部屋も見せてあげたいし---- シンシアの部屋は片付けてはあるけどそのままにしているのよ」
------ 母親の事が分かるなら行きたい。絵があれば顔も見てみたいし、どんな人だったのか知りたい。
シュウへ確認するよう振り向くと、私を見て笑顔を向けてくれた。
「明日は予定を入れてないから、シア行こうか。セレステア様、僕も一緒に伺っていいですか?」
「ええ、是非来て頂戴。シアもシュバルトがいれば安心でしょうし」
その後お伺いする時間をシュウが話してくれて、一先ず落ち着くと皆で食事を取る事になった。食事中、父と母であるレオン様とシンシア様の話が時折出てきて、私は聞き逃さないよう静かに耳を傾ける。自分の両親の事を少しずつ知り何だか今までの不安が溶けていくようだ。
食事を終えると大人達だけで何やら話し合いをするようで、私や王女様、シュウといった子供達は部屋へと下がる。
湯浴みをしてベッドに横になるとマーサの事を思い出し、マーサが母の侍女だったと聞いて色々と今までの事が納得出来た。
---- マーサは母の侍女だったんだ。だから私を引き取って育ててくれたんだね。仕える人が亡くなったのに私を見捨てなかった人。マーサに会いたいな----
マーサへ感謝の気持ちを直接言えないのが悲しい。
マーサの言葉忘れないよ。私ちゃんと生きるから、見守っていてね。有難う----
ネックレスと金の腕輪を握り締めると涙が溢れる。震える体を丸くし、腕輪とネックレスを抱きしめるように胸に押し付けてこの日は眠りについた。
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