22.家族
朝目が覚めると、見知らぬ天井が目に移り慌てて起き上がる。
部屋を見渡せば、城にいる事に直ぐに気づき息を吐いた。
「シア様。おはようございます。よく眠れましたか? 準備をお手伝いさせて頂きますね」
昨日シュウから紹介して貰った侍女さんは、私に丁寧な態度で接してくれる。
シュウから申し訳ないと思わないようにと、釘を刺されたのもあって侍女さんに身を委ねながら準備をしていく。
顔を洗うのも、服を着るのも全てしてくれて、人に手伝って貰うなんて、マーサの時以来だ。
自分で出来るけど、任せないと駄目なんだよね。侍女さんの仕事がなくなるし、私もそう接しないといけない。
マリは将来侍女になるから、マリと近くにいたいしお願いしたいけど、マリはなんて言うかな。身の回りの世話を頼むなんて私から言いにくいし----
今考えてもしょうがいよね。とりあえず自分に集中しないと。
早くマリに会って色々と話したいな。学園にはいつ戻れるんだろう----
「シア様。準備が出来ました。とても素敵ですわ」
目の前の鏡を見ると、見慣れない自分の姿があった。
昨日の夜、シュウから元の色で生活するよう言われ、今の自分は茶色ではなく白金の色。
白金の髪をゆるく纏めて、青のドレスを着た自分に見慣れず戸惑ってしまう。
お化粧をほんのりとした自分の顔を、まじまじと見ているとシュウが私を呼びに来た。
「シア似合うよ。元の姿の方がいいね」
「有難う。大丈夫かな? 似合ってるかどうか分からなくて」
「大丈夫だよ。朝食を食べに行こうか、母様と妹がシアに会いたがっているよ?」
「そうなんだ---- うん、ご挨拶したいし、私頑張るね」
シュウは満足そうに笑って、私を連れて食事室へと歩いていく。
緊張して足が震えてしまい、履き慣れないヒールの靴が嫌になる。絨毯の上を歩くのに時間がかかり、シュウに支えて貰いながらどうにかたどり着いた。
シュウに続き食事室へ入ると、入学式で見た王妃様が奥に座っていて、王妃様の横にはシュウと似た顔の可愛らしい王女様もいる。
私は二人の前にシュウと共に行くと、侍女さんに引かれた椅子へ腰を下ろした。
「貴女がシアですね。私はジェーナ。陛下から話は聞かせて頂きました。辛かったでしょう? 私達は貴女を歓迎するわ」
「私、第一王女のサーナよ。宜しくお願い致しますわねお姉様」
「サーナったら。いきなりそんな事を言ってはシアが驚いてしまうわよ」
「あら母様。私お姉様が欲しかったの。お兄様しかいなくてつまらなかったわ。シアお姉様、私と仲良くして下さいね」
嬉しい---- 受け入れて貰えるか不安だったけど、王妃様も王女様も私を歓迎してくれてる。
しかもお姉様なんて初めて言われて、心が浮き立つ。
でも本当にこんな優しい言葉を貰って大丈夫なんだろうか---- シュウに言われてるけど、やっぱり私何かって思ってしまう。
どうしよう-- 変わると決めたけど素直に喜んでいいのかな?
「シア。二人はシアの事を本当に歓迎してるから、変な事は考えないように。母様、サーナ、シアは両親が分からない自分を否定しがちなんだ。自信が持てるまでは、シアも変な表情をすると思うから付き合ってあげて」
「そうなのですね。シア、安心なさい。貴女は王族の血筋、私達とは家族ですわ。親が誰であろうと、瞳の紋章は誤魔化せないものです。これからは私を母親だと思って甘えて良いのですよ?」
「私も! お姉様には妹だと思って頂きたいわ!」
二人の言葉に涙が溢れる。優しい言葉に心が溶かされていくようで、涙が止められない。
王妃様は椅子から立ち上がると、泣く私を慰めるかの様に優しく抱きしめてくれた。
柔らかい温もりに喉が痛くなり、小さな嗚咽を漏らしてしまう。長い時間抱きしめられた後、気付けば王女様も座ったまま涙を流していた。
温かな気持ちになり、私は久しぶりに自然と心から笑顔になる。
シュウを見れば、私の笑顔に驚いたのか目を見開いたまま動かない。何か変な顔をしたかなと、顔に両手を添えると王妃様の声が聞こえた。
「落ち着きましたか? 朝食を食べながら色々とお話ししましょう。シア、貴女の事を教えて下さいな」
「有難う御座います。二人の言葉が嬉しくて---- 私もお二人の事が知りたいです。聞かせて頂けますか?」
「お姉様がそうおっしゃるならいくらでも話しますわ! ね、母様?」
「えぇ、時間が足りなくなりそうね。シュウ、朝食の後は何か予定があるのかしら?」
「そうなると思って午後までは空けてるよ。母様シアと話してあげて」
「良かったわ。朝食を食べたら私の部屋へ行きましょうか。サーナもいらっしゃい。今日はお勉強をお休みしてもいいわ」
「本当!! 私お姉様にお菓子を用意するわ! お茶会にしましょう!」
朝食を食べた後、王妃様の部屋にシュウも来て今までの事を話した。
私の言葉を聞き漏らさないように、王妃様と王女様は静かに聞きながら時々頷いてくれる。
久しぶりに流れる穏やかな空気に、私は時間を忘れて家族である三人と会話を楽しんだ。
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