18. --学園二年目-- 始まり
あの夜会から三ヶ月が経ち、私達は無事に二年生へと進学出来た。
新たな教室に足を踏み入れれば、同級だった人達ばかりで、ホッとしながら席に腰を下ろす。
一学年の成績から、クラスが再編成されると聞いて緊張していたが、どうやら大丈夫そうだ。
夜会後、殿下は王太子になるべく直ぐに帰城した為、あれ以来お会いしていない。
オスカー殿下は王位継承権を放棄し、一代限りの爵位を貰うようだ。
元々、側妃のお子であるオスカー殿下は、王太子である事に悩まれてたようで、王位継承権を放棄する事に躊躇いはなく、リリア嬢と知り合った事で踏ん切りがついたのだと、語っていたらしい。
殿下は帰城してから、オスカー殿下に嘆いた側妃様を慰めてるだとか、想いを告げたカレン様と会いたいから、私達に会う時間がないとか----- セバスから殿下の様子を聞いて、元気にしている事だけは私にも分かった。
いつも様に、教室の後ろでマリやカイと静かに座っていると、初めて見る貴族の女の子が、教室の扉を開けて入ってきた。
新しい教室に、他にも知らない人はいたので、特に気にしてはいなかったが、その女の子は私を見つけると、机の前で立ちどまり、じっと顔を見てくる。
「ふーん、貴女も光属性よね。あまりいい気にならない事ね」
私は何なのかよく分からず、首を横に傾げれば、女の子は鼻を小さく鳴らして、違う席に歩いて行った。
「あい、シア。あれがSクラスにいた、光属性の男爵令嬢だ。あまり、関わらないようにしろよ」
「ああ、あの子が噂になっていた子ね、一体今のは何なの?」
カイとマリの話を聞けば、どうやら以前噂になっていた子のようだ。
---- 確か、途中から来たんだっけ? 何だか嫌な人だった。気をつけなくちゃ。
そう思いながら、いつも通りに授業を受け、昼を過ぎると騎士課のクラスへ向かう。剣を振る事にも慣れ、動くスピードも付いてきた。
テリーからは絡まれなくなり、私を野営で囲った他の三人は、何やら変な笑みを私に向けてきたが、何もないまま、平穏な日々が続いていく。
安心して、学園生活を過ごしていたら、ある日校舎を一人で歩いている時に、横からいきなり突き飛ばされた。
急に体が傾き、お尻を床に打ち付け鈍い痛みを感じつつも、辺りを見回すが誰もいない。不思議に思いながらも、その日は気にせずいたのだが、違う日には騎士課に向かう途中で、頭から水をかけられた。
「おい、シア大丈夫か?」
カイは私を心配して声をかけた後、タオルで頭を拭いてくれる。
---- なんなの? 誰?
それから、毎日の様に嫌がらせを受ける様になり、誰から嫌がらせを、されているのかも全く分からず、苛立つよりも、怖さの方が強く感じた。
私の様子を心配したカイとマリは、犯人が見つからなかった為に、セバスへ相談し始めた。セバスに相談して二日後、騎士課の訓練前に伝言を受け取った私達は、いつもの様に殿下のサロンへと向かう。
久しぶりにサロンの中へ入ると、セバスと殿下がいつもの配置で、ソファに座っていた。
「やあ、カイにシア。夜会の時は有難う」
久しぶりに会う殿下は、いつも通りの笑みを浮かべて、私達に片手を上げている。
「久しぶりですね、お元気そうでなによりです。カレン様もお元気ですか?」
「カレンも元気にしてるよ。僕がカレンを泣かせると思うかい?」
私の問いに答えながら、殿下はソファの背に体を預けた。相変わらずの殿下の様子に、何だか嬉しくなる。
カイと殿下が話していると、マリが到着したので、私達もソファに腰を下ろす。
「セバスから、シアが嫌がらせを受けてるって聞いてさ、色々と調べたんだよね。そしたら面白い事が分かったんだよねー」
愉快顔で、殿下が詳しく説明し出した。
私への嫌がらせの犯人は、男爵令嬢であるミリヤ嬢で、そのミリヤ嬢を手伝っているのが、テリーの仲間である三人だそうだ。
テリーを慕うミリヤ嬢が、野営演習で私がテリーを助けたと、三人から聞いたようで、テリーが私への嫌がらせを辞めた代わりに、ミリヤ嬢が動いたという。
---- それであんな顔してきたのね。ミリヤ嬢が、テリーを慕っているから、私に嫌がらせをしてくるだなんて--- どうすればいいの?
悶々と考えていると、セバスから声を掛けられた。
「とりあえず、殿下の影が調べてくれたから、証拠があるわけじゃない。シア、耐えてくれるか?」
私がセバスの問いに頷くと、殿下が口を開き始めた。
「ほんっと、子供みたいな奴らだよねー。しかも僕のお気に入り達を悩ますなんてさ、後悔すれば良いんだよ」
悪巧み顔をする殿下は、何やら考えがあるようで、何も手立てがない自分に、悔しくなりながらも任せる事にした。
三日後、相変わらず嫌がらせは続いていたが、今日は今の所ないなと、マリとカイと話していた時、急にミリヤ嬢が私を睨みつつ目の前に現れた。
「貴女、孤児であるのに、王太子であるシュバルト殿下のサロンに行ったようね。本当、汚いドブネズミだ事。光属性だからって、勘違いしてるのかしら? 嫌ね臭い女って、本当不愉快だわ」
パァン! と音と同時に、頬に痛みが走る。
「シア!」
マリが私を庇うように、私の肩から上を抱きしめたので、視界が一気に暗くなった。
「すみませんが、教えて頂けますか? 何故シアを叩くのです? 何かシアが貴女にしましたか?」
「あら、存在が邪魔なだけよ? 貴方達も同じ孤児なら私に話しかけない事ね? 同じ教室にいるだけで吐き気がするわ」
カイの問いに、ミリヤ嬢は気怠い声で答えている。
私を抱く、マリは少し体を震わせながら、強く私を抱きしめ直した。
---- 何なの、一体。私が何したのよ、なんで? 何で叩かれなきゃいけないの?
頭の中が、怒りと疑問でぐちゃぐちゃになる。
唇を噛みしめながら、泣かないよう堪えていると、またミリヤ嬢が話始めた。
「それか、学園を貴方達が去れば良いのよね。退学届を私が出してあげましょう。明日から来なくて良くてよ?」
私は怒りが沸騰し、マリの腕を剥がすと勢いよく立ち上がる。視界は少し歪んでいたが、ミリヤ嬢を真っ直ぐ睨みながら、震える口をどうにか開いた。
「私達が孤児で何が悪いの? 貴女こそ何なのよ! 貴族だからって、何でもして良い訳じゃないわ!」
声を張り上げながら、ミリヤ嬢への怒りと共に言葉を吐き出す。息が荒くなりながらも気にせず、下ろした両手で拳を作って、強く握りしめた。
「何?! 私にそんな口を聞いて、これだから孤児は嫌いなのよ!」
私とミリヤ嬢が、対峙しながら睨み合っていると、聞き慣れた殿下の声が耳に届いた。
「ねー、何だか楽しそうだね。僕も入れてくれるかな?」
殿下の声がする方へ目を動かすと、殿下とセバスの姿を見つけた。セバスの表情は怒っていたが、殿下はいつもの愉快顔で、口元は笑いを堪えている。
「あら、シュバルト殿下ご機嫌よう。何故こちらの教室に?」
「楽しそうな声が聞こえたからね。何してたの? 僕も仲間に入れてくれないかな?」
「シュバルト殿下が、混ざる程の面白さではないですわ」
「ふーん、そうなんだ。じゃあこの子借りて良い? 面白くないなら、連れて行っていいよね?」
「え、えぇ---- 大丈夫ですわ」
ミリヤ嬢は殿下の問いに答えながらも、私を睨みつけた。私もミリヤ嬢を睨みつけたまま、拳に力が入る。
「じゃあ行こうか。カイやマリ、君達も一緒に行こう」
殿下の言葉を聞いたマリは、すぐ様私の手首を掴み歩き出す。私は、カイとマリに挟まれながら、殿下とセバスの後ろに続いて教室から出た。
教室から出ると、マリは私の叩かれた頬が気になるのか、顔に手を添えて確かめてくる。カイもマリと同様に私の頬を見て、小さく何かを呟いた。
「とりあえず僕のサロンに行こう、頬もそこで冷やせば良い」
痛む頬よりも、握りしめた掌に痛みを感じながら、殿下のサロンへと皆で向かった。
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