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シアの赤い空  作者: 光政
16/35

16.-夜会まで--

「今日は皆にお願いしたい事があって、集まってもらったんだ」


 セバス経由で、殿下から集まって欲しいと言われた私とカイは、授業を終えると寮には戻らずに殿下専用サロンへそのまま行く事にした。


 殿下と交流してるのがバレないよう、サロンの正面入り口ではなく、いつも使用人が使う裏の入り口から建物の中に入り早足で部屋へと向かう。


 扉を開けて入室すると、マリは既に座っていて殿下と何やら難しい顔で話している。カイと私もいつのも場所に座って、殿下とマリの会話が終わるのを静かに待った。


 マリとの会話に満足したのか、殿下は私達を見て微笑むと先程の言葉を口にしたのだった。



「お願い--- ですか?」


 殿下は好奇心旺盛で、お願いを口にする時はいつも碌な事がない。夏休みには私達が住んでいた孤児院に一緒に来たし、街で屋台の食べ物が食べたいと言われ、お忍びに連れて行かれたりした。

 その度に私達は冷や汗を流しながら、楽しむよりもハラハラとさせられている。


 シアはそう思いながら問いに言葉を返したが、いつものような目を輝かせる殿下の顔ではなく、どこか真剣な表情をされた。


「そう、お願い。夜会があるだろう? その夜会で君達にある事を頼みたいんだ」


 殿下が詳しく説明し始める。

 殿下のお兄様である王太子のオスカー殿下が、子爵令嬢のリリア様を夜会でエスコートすると言いだしたらしく、婚約者である公爵令嬢のカレン様が殿下に相談したそうだ。


 子爵令嬢であるリリア様は侍女課の二年生で、先程マリと話していたのは、侍女課でリリア様とオスカー殿下がどう噂されているのか聞いていたらしい。

 リリア様は子爵家の三女で、普通に嫁ぐのが金銭的に難しい事から侍女課に入った様で、オスカー殿下と二人でいる姿が先月からしばしば生徒達に見られ始めた。


 夜会は毎年学年末に行われていて、生徒達は全員参加が義務付けられているが、騎士課や侍女課の各学年の成績優秀者は夜会の運営や警備を担当する事となっている。


 カイとマリと私は、その成績優秀者に入っていたので、各々与えられた役割をしながら夜会に参加する事となっていた。


 ------- 全然知らなかった。マリには私の話ばかりしてたし、先月は野営演習があったからクラスの周りの子達の話を聞く余裕もなかった----


 演習が終わり学園での訓練に戻ったが、テリー達からは絡まれなくなり、目さえ合う事がない。それに--- バルトさんとも会えないままだ。

 お礼をバルトさんに言えたにも関わらず、バルトさんへの想いが募り、会いたい気持ちだけが膨らんでいく。

 寮に帰ると、私の顔に痣があるのに気づいたマリは、野営演習で何があったのかしつこく聞いてきたけど、テリー達の事は言えても、バルトさんの事は助けてくれたとしか言えなかった。

 バルトさんへの想いがどういった想いなのか、自分でもよく分からず、本来の髪と瞳の色を見られたかも確認出来ていない為、どうしてもまた会いたいと思う。


---- それにしてもなんでだろう?

 殿下は何故そこまで子爵令嬢のリリア様が気になるのか、全く分からない訳じゃないけど、私達は何を殿下に頼まれるのだろうか?


 少しだけ緊張しながら、殿下の言葉を待っているとセバスが口を開いた。


「殿下のお願いは、夜会で何かあった時に、公爵令嬢であるカレン様を会場の外へと連れ出して欲しいそうだ。殿下は立場上、直接動くのが難しい事もある。カイとシアは、会場の警備に就く筈だから動きやすいだろう? マリは会場で給仕係だろうから、何か起きても近くに行きやすいし、俺も殿下から離れて動けるからな。貴族に頼むと派閥の関係があるから、関係のない俺達にお願いしたいんだ」


「話は分かったけど、何か起きたりするのかしら?」


 マリの言葉に私も頷く。セバスから聞く話は理解出来るけど、殿下は何が起きると考えているのか、カレン様を会場から連れ出して欲しい理由が分からない。


「まだ分からないけど、僕の勘は良く当たるんだ。だから準備だけでも皆にしていて欲しい。」


 殿下からそう言われ、腑に落ちないままセバスから何か起きた時の各々の動きや、連れ出した後に向かう場所を教えられ何度も確認させられる。


 夜会まであと一週間しかない為、夜会前日まで授業が終わる度に殿下のサロンへと足を運び、セバスと共にカレン様を連れ出す為の作戦を何度も練り直す事となった。なぜ練り直したかと言うと、私達の配置場所やマリの役割に変更があったからだ。


 夜会に近づくに連れ、殿下の表情はいつもの様な表情ではなくなり、緊張してるのか顔を強張せながら、何かを狙う様な目つきになっていく。殿下を見ていると何だか少し怖くなり、夜会への不安が増していった。


 騎士課では、上の学年の成績優秀者である先輩方と、夜会会場内の各々の配置場所と役割を確認し、覚える事が多すぎて少しだけ頭を抱えてしまったが、女性の先輩もいた為少しだけ安堵する。


 部屋では、マリから侍女課での噂話を教えてもらい、リリア様がどんな人なのか聞いた。


「リリア様は凄く大人しくて、笑顔が素敵な方なんだけど普段はあまり目立たないのよ。だから最初に噂を聞いた時は直ぐにどの人か分からなかったのよね。周りの子達は何だか小説のような二人の関係に騒いでいて、密かに応援してるのよ。婚約者であるカレン様は表情が冷たいらしくて、爵位も高いから皆近寄り難いみたい。だから余計にリリア様を皆応援してしまうみたいなのよね」


 マリから話しを聞いて、通り過ぎた時に少しだけ拝見したカレン様の姿を思い浮かべる。金に近い茶色の真っ直ぐな髪を風で靡かせていて、凛とした佇まいと表情は、確かに冷たそうではあるがとても綺麗な人だ。それに比べ、マリや殿下から聞くリリア様は、目立たず柔らかなイメージなので、正反対な二人だなと思った。


 一体何が起こるんだろう。

分からないまま、準備だけが着々と進み、ついに夜会当日の朝を迎えた。



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