再会はお祝いの夕食会で
「お嬢様、夕食時にこのドレスをと奥様からの申し出がありました」
「伯母様から? なんて素敵なドレスなの。でもお夕食だけなのに少し派手ではないかしら」
薄紫色のドレスを見ながらいつもとは違う侍女達の様子に疑問を投げかけ、口数が少ない彼女達の態度に不安な表情でドレスに袖を通していると、近くにいた侍女が私を安心させる為にそっと教えてくれる。
入隊のお祝いを計画し、みんなで準備していたと。
私の事をみんなでお祝いしてくれる気持ちが嬉しくて、周りにいる侍女達にありがとうと言うと、そっと教えてくれた侍女に、内緒だったのにとみんなで言った。
「教えてくれてありがとう。内緒だったら今こうしてみんなにありがとうを言えなかったわ」
私からのお礼に嬉しそうに侍女達は微笑む。
「内緒にしていたことがばれてしまったけれど、私達も今こうしてお嬢様に言えます。お嬢様、おめでとうございます」
「みんな、ありがとう」
「頑張って下さい」
「時々は帰ってきて下さいね」
侍女達は口々に思ったことを私に伝え、手は休めることなく準備をしてくれる。髪を綺麗に結い上げると、いってらっしゃいませと言って部屋から見送ってくれた。
「おめでとう、リリア」
ダイニングへと向かう扉を開けた瞬間、お祝いの言葉がたくさん私に降ってきた。その中には会いたかった両親の姿もあり嬉しさが溢れ涙となって頬を伝う。
「お父様、お母様」
「リリア、頑張りましたね」
優しい微笑みで言われ両手を広げて私を迎えてくれる母に抱きついた。
「会いたかったです」
「とても元気そうで安心しました。私の娘は騎士になるのですね」
「はい……はい」
涙が母のドレスを濡らしていく。
落ち着くまで頭を撫でながら慈愛に満ちた顔をしていた母は、まるで女神のようだったと後から父ののろけ話を聞くことになってしまうけれど。
「ありがとうございます、カーラ伯母様」
「みんなで祝いたくて計画したんだが迷惑だったかな?」
「迷惑だなんて思いません。とても嬉しいです」
「今日はご馳走だ。さあ、いこうか」
みんなでおしゃべりしながらテーブルへと向かい席につこうとすると一席だけ空いている席に目がとまる。
「伯母様、この席は? どなたか来られるのですか?」
「そろそろ来る頃だと思うが……」
伯母様が話し終わる前に私の名前を呼びながら部屋へ入って来る者がいた。
「リリー」
「ふぐっ」
部屋へ入って来るなり私の元へ駆け寄り、抱きしめられたせいか変な声が出て、しばらくは唖然としてしまう。
「会いたかったよ、リリー」
「はぁ……ジェイド、目の前の母よりリリアか」
「許せ、母上。久しぶりのリリアとの再会に嬉しくなってしまった」
そう言ってにやりと笑う顔は、どこか懐かしい面影を纏い私の記憶の中を走り、思い出した顔に向けて名前を呼んでいた。
「ジェイ? ジェイなの?」
「そうだよ、リリア。久しぶり、とても会いたかったよ」
弾ける笑顔をずっと私に向けるジェイことジェイド・ハウエル。
カーラ伯母様の息子でこの国で指折りの剣豪でもあり、最近サラニト国の王宮騎士団の団長に就任した。幼い頃に遊んでくれた男の子は、茶色の髪にハウエル公爵と同じ金色の瞳で優しい笑顔を崩さず、ずっとリリアに話しかけた。
「良かったよぉ、リリーが元気になって。具合が悪い所はない? ご飯はちゃんと食べてる? 綺麗になったね、リリー。あっそれと入隊おめでとう」
「ありがとう。とりあえず落ち着いてジェイ」
「ジェイド、これから祝いの夕食会だからゆっくり食事をしながらでも話しなさい」
「おっと、嬉しすぎて止まらなかったよ。ごめんね、リリー」
少しシュンとしたジェイドは、私をエスコートして席へと座らせてくれた。
賑やかな食事会はあっという間に過ぎていった。
改めてカーラ伯母様に感謝の言葉を言うとワイングラスを掲げて「リリア、おめでとう」と満面の笑みを向けてくれた。
これから女王専属の近衛隊に入り、きつい訓練もあるかもしれない。でも今の満面の笑顔を思い出すだけできっと乗り越えていける。
(だってあんな嬉しそうな顔は、私にはとても光栄なことだもの)
師匠から貰ったたくさんの思いは、騎士としての決心を強くさせた。




