伯母様からの手紙
光の眩しさに目を細め、朝日に輝く湖面を見ながら美しい景色に出会えたことに生きている喜びを感じると、時も忘れ見とれてしまう。
「お嬢様、そろそろ戻りましょう」
「そうね、今日は久しぶりに湖まで来ることができたし、喉が渇いてきたから戻ったらお茶にしましょう」
体力が回復してきた近頃、乗馬をしながら朝の散歩をするのが日課になっていた。
「よしよし、いい子ね。戻ったらお水をあげるからね。お家まで頑張って駆けてね」
乗っている馬の首を撫でながら話しかけると返事をするように首を振ってくれる。
軽く駆け、清々しい空気を思う存分吸ってから館へも戻って行くと、遠くに私を笑顔にしてくれる人が手を振っているのが見えた。
「お父様」
「リリー、乗馬なんてして大丈夫なのか?」
「ええ、体力がついて乗馬も出来るようになったの。お医者様も無理をしないならとおっしゃってくれたわ」
「そうか」
心配顔で娘の顔色を見るのが癖になってしまったのか元気な姿を前にしてもどこか不安げだ。
「お父様、一緒にお茶にしましょう。すぐに着替えてまいります」
「そうしよう。庭が見える部屋で待っているよ」
急いで馬を馬房に連れて行き、久しぶりに会えた父とのお茶の時間に何を話そうかと考えていると私の気持ちが鼻歌へと零れていた。
「お母様に会えなくて残念です」
「どうしても断れない婦人会の会合があってな、とても会いたがっていたよ」
少しうつむく娘に優しく話す父も、母と一緒に来ることが出来なかったのが残念だったのか寂しそうに見える。
「お兄様は元気ですか?」
「ああ、元気だよ。私の仕事をほとんど覚えて私が王都を離れても大丈夫なくらいよくやってくれるようになったよ。そろそろ家督を譲ってもいいのかもしれないな」
「お兄様、頼もしい!」
家族みんなが元気に過ごしている近況を聞いていると、元気を貰えているような気がして自分ももう少し体力をつけて頑張らないとと思う。
「お父様、しばらくはこちらでゆっくり過ごされるのでしょ?」
「そうしよう。ゆっくり休んで行こう。ここに来た一番の理由は、リリーが心配だったからなんだが思った以上に元気になっていて驚いたよ」
「まだまだ元気になっていくわ」
「長旅も大丈夫そうかな……」
「えっ?」
「実はリリーに手紙が来ていたんだ。隣国サラニトに住む私の姉のカーラからなんだが……」
「カーラ伯母様から?」
父から手紙を渡されるとすぐに読むように促された。
「お父様、私、行きたいわ」
「そう言うと思ったよ」
カーラ伯母様からの手紙には気分転換も兼ねて隣国へ来ないかということだった。
ずっと会えなかったから私に会いたいと書いてあった。
「久しぶりにお会いしたい」
「会いに行ってきなさい。乗馬も出来るくらいまで元気になったから大丈夫だろう」
「ありがとう、お父様。準備ができ次第向かおうかしら。でもお父様とゆっくり過ごしてからにするわ。お父様を独り占めね。うふふ」
目の前のお父様も「私もリリーを独り占めだ」と言って優しく微笑んだ。
お父様と一緒に乗馬したり、サラニト国の地図を広げ、おしゃべりしたりと楽しい時間を過ごしていると、お母様も来てくれて少し寂しかった夕食も美味しくたくさん食べられることが出来た。元気になった姿を見た両親は、安心したようにカーラ伯母様の家へ送り出してくれた。
「リリア、久しぶりだね。凄く会いたかったよ。頑張ったね」
馬車から降りるとカーラ伯母様に抱きしめられ、心配していたのが解り涙ぐんでしまう。
「いろいろあったけれど頑張りました。久しぶりにカーラ伯母様に会えてうれしいです」
「私もうれしいよ。リリアとたくさんやりたい事があるから長めに滞在してほしい」
「お言葉に甘えてもいいのですか? 私もたくさんお話したいです」
私の意志を聞き微笑みで返事をされ、体調を気づかわれながら入り口へ向かうと遅れて来たカーラ伯母様の夫のハウエル公爵が笑顔で迎えてくれた。
サラニト国へ来てから毎日楽しく過ごしていると、時が早く過ぎていって辛かった日から離れていき、思い出として残っている記憶が少し色あせているように感じた。




