猛省(レイモンド視点)
「はあ……」
「またため息ですか? なかなかワーバンの足どりがつかめなくて落ち込むのは解りますが、さっきからため息が多過ぎると思うのですが」
「ため息ばかりで不甲斐ないな」
「そうですね、まったくこんなに情けない姿は初めてですね」
マーカスにどれだけ言われてもただ素直に聞き入れてしまうのは、弱気な自分に自信がなくて言い返せないからなのか。
「数日後には、夜会がはじまります。どこにワーバンが現れるか解らないので毎夜参加されますか?」
「ああ……」
夜会の事など考えていなかった私は、軽い返事をし、上の空になっている姿をマーカスに見られため息をつかれた。
「まったく、夜会の事など考えていないようですね。何に落ち込んでいるのです? 任務の事ではなさそうですね」
「……聞かれていたんだ」
「聞かれていた?」
「ローウェルト嬢に対する不満を本人にな」
「最悪じゃないですか、本人から聞いたんですよね。彼女……大丈夫でしたか?」
「泣いていた」
マーカスは、彼女の様子を想像したのか私の目の前でしょんぼりとしている
「あの時から王宮にあまり来なくなりましたね。それからしばらくして体調を崩されていると……私達のせいですね。謝罪しなければ」
「誤ったよ、泣いていたから抱きしめた。でも、突き飛ばされた」
「拒絶されたのですね」
「……そうだな」
マーカスの一言が最後のとどめのように心に刺さり、大きなため息がでた。
「諦めて他の方に譲ったらどうですか? 騎士団長なんか積極的なアプローチされていますし、二人で朝帰りしたという噂まであるんですよ。勝ち目ないじゃないですか」
「譲りたくはない!」
悔しさなのか怒りなのか解らない感情で思わず手元の書類を握り潰していた。
「閣下の気持ちを話すべきです。思った事を全部、そして今までのダメな所もです。それで砕け散ったら……慰めますよ」
「そうだな、この気持ちを伝えよう。まずは私から逃げ回っている彼女を捕まえないと話も出来ない」
避けられているのですねと言ったマーカスは、哀れんだ顔を向けつつも応援していますと笑顔を見せる。
何を今さらと思われたっていい、私はどうしても彼女の事を好きな気持ちを諦められない。
ふられたら彼女の思い出の一部になってしまうのか。
どうか、思い出にしないでくれ。
祈るように心の中で呟き、はかどらなかった仕事を片付け始めた。




