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病弱令嬢、騎士になって深愛になる  作者: 才守 優璃


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伯母様に会いに

 初めてケンカした。

 妃教育において関係性を崩すような感情は、表に出してはならないと教えられていたから、常に冷静さを失わないようにしてケンカは一度もしたことはなかった。


「こんなに嫌な気分が続くなんて……朝から隊長にも呼ばれるし……」

「リリー、おはよう」

「おはよう、ジェイ」

「今日は珍しく訓練場には来なかったね」

「……今日はちょっと調子が悪くて休んだわ」

「なんか元気ないね、どうしたの?」

「隊長に呼ばれて、任務を途中で放棄したことを注意されたところよ。でも、何だか優しかったのよね。しかも、午前中は部屋で反省するように言われたわ」

「そんな顔、していたらね」

「えっ顔?」

「泣いたのかな? 目が腫れているよ」


 咄嗟に両手で目を触って見る。


「だから午前中は部屋で反省か……隊長には気をつかわれてしまった。申し訳ない気持ちでいっぱいだわ」

「何かあったの? 話聞こうか?」

「大丈夫よ、仕事頑張ってね」


 こんな顔をあまり人前で見せたくはないと足早に去ろうとすると


「リリー、明後日は休みだよね? たまには家に帰らない?」

「ジェイと一緒に? 式典前で仕事を休めないでしょ?」

「明後日は休むから一緒に帰ろう? 約束だからね」

「えっ、ちょっとまって、ジェイ」


 手をひらひらさせながら去って行くジェイの背中を見つめ、カーラ伯母様の顔を思い浮かべると少しほっとして肩の力が抜けていく。


(私、たるんでいるわ。しっかりしないと)


 午後の任務をこなし夕食時に早朝出来なかった練習をやった。いつもは訓練場に行っていたけれど、しばらくは会いたくはないレイモンドを避けようと、この日から場所を変え、いつでも陛下を守れるように、剣の鍛錬を続けている。何のために騎士になったんだと自問自答しながら、彼が私に向けるありえない言動や行動の真意の答えが解らない今は、会いたくはなかった。

 きっと会ったら、また感情的になってしまいそうだったから。



▽▽▽




 久しぶりに会えるカーラ伯母様に、どんな訓練をして貰おうかと考えながらも、目の前のジェイが楽しそうに話す姿をどこか安心した気持ちになって聞いている。


「ありがとう、ジェイ」

「えっ今の話にお礼?」

「ううん、家に帰ろうと誘ってくれて」

「急に誘ってごめんね。でも、近頃のリリーを見ていると息抜きが必要なんだろうなと思ってね。あと母上が凄く心配しているから元気な顔を見せてあげたいとも思っていたしね」

「心配させてしまったわね」

「元気なリリーを見せてあげて。あれっどうやら待ちきれなかったみたいだよ」


 馬車が邸宅へ向かうアプローチ付近から屋敷の入り口を見ると、カーラ伯母様が立っているのが見える。


「伯母様……帰ってきて良かった。誘ってくれなかったら、しばらくは忙しくて会えなかったもの」

「母上に会うだけじゃないけどね」

「何か用事があったのね」


 私の問いに優しく微笑んだジェイは、大事な事がねと言ってカーラ伯母様を見ていた。




「さっきの伯母様のハグは苦しかったです」

「あははは、リリーは変な声が出ていたよ。ふぐぐって。あははは」

「たまに加減を忘れる時があるんだよ、カーラは。私も絞め殺されそうになったことはある」


 困った様な顔をしたハウエル公爵を見て、私も笑っていると少ししょんぼりして、すまなかったと伯母様は誤った。


「二人とも明日の朝に戻るのか?」

「んーそうだな。夕食は久しぶりにみんなでとりたいけれど、今日中に戻ってやることがあるんだ」

「ジェイ、私は明日の朝に戻るわ。伯母様と剣の練習をたくさんしたい」

「解った。一人で戻るのは寂しいけど、しょうがないか」


 寂しそうにお茶をすすり、ゆっくりしてくるといいよと気遣ってくれる。

 夕食までの時間はゆっくり過ごそうと、カーラ伯母様に新しく買った書籍を見せてもらい、お茶を飲みながらおしゃべりして過ごした。

 さっきハウエル公爵に呼ばれたジェイは、大事な話があるからと言われ、見たことのない表情をしていたのが少し気になっていたけれど、伯母様に聞くのは違うと思い、頭の片隅においてお茶の時間を楽しんだ。



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