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 拝啓。

 既に死んだか捕まっている組織のみなさまへ。私は攻撃で死んだと思ったのですが、現在目の前に知らないお兄さんがいます。正直ホラーなので助けて下さい。



 多分場所は病院だろうな。私はあの攻撃で死にきれなかったのか。それとも転生?ってやつなのか。動いていいのか分からない為に体の状態を確認できずにいる。点滴が刺さっているのは確実。それ以外にも何本か線が刺さっている気がしなくもない。あちこちが痛むので外部も内部も傷ついているのだろうな。

 そしてなによりこの人誰だ。本当に。思わずじーっと見ていると視線が合ってニコっと笑った。うん。知らない顔だ。


「あの…此処は何処で貴方は誰ですか?私しっかりと悪人な自覚あったので正直次目覚めたとしても牢獄かと思ってたのですが。」


「此処は正義の味方用の病院で俺は一応お前の身元引受人だな。お前は悪人ではあるが流石に瀕死の人間を投獄する程この国は終わってないぞ。」


 質問をしたらちゃんと答えてくれた。中々理解しずらい部分もあるが。


「何故お兄さんが私の身元引受人に…?ていうか正義の味方用の病院って私一番入っちゃダメでしょ。私ここ1回襲撃しようとしましたよ。」


「それはまぁ色々手を回して。とりあえずお前が起きたって伝えてくるな。」


 次はあまり教えてくれなかった。お兄さんは部屋を出て行った。

 出ていく前に。


「あ、それと俺の名前、久遠っていうからな。呼び捨てでもなんでもいいがお兄さんはやめてくれ。一応俺の方が2歳上らしいけど。」


 と言っていた。何故年齢を把握されている?お兄さん──もとい久遠さんは私の身元引受人で正義の味方用の病院に悪の組織の幹部を入院させられるほどには顔が効く?らしい。誰も居なくなった病室で遠い目をした。

 他の子は無事かな。私がこれならもしかしたら生きてるかも。多分ボスは無理かな。あー、こないだの仕事の借り返せてない。


 色々考えていたらお医者さんと看護師さんがバタバタと入ってきて検査をされた。そこら辺普通の一般人よりも傷の治りが早いお陰で早期退院できるらしい。よかった。病院にはいい思い出がない。後ろで久遠さんが笑っているのが見えた。何がしたいんだろうか。あの人は。

 一通りの検査が終わり、面会時間も終わったらしく部屋には誰もいなくなった。病院に運ばれる時か、持っていたものは全て没収されたらしくすごく暇だった。寝るしかやることがない。

 病院での入院生活は悪の組織にいた時よりもずっと穏やかで何も無い。会いに来るのは久遠さんだけで質問した事には返してくれる事とくれない事があった。

 例えば。


 Q,私の仲間は無事ですか?

 A,言えないなぁ。もし悪の組織を再結成されても困るからね。


 Q,私これからどうなるんですか?

 A,情状酌量の余地ありになったから。俺が引き取るよ。そのまま普通に生活かな?勿論組織に戻るとか言い出したらまた別だけどね。


 Q,なんで私の個人情報知ってるんですか?

 A,黙秘で。まぁ大体は知ってるよ。


 つまるところ私は久遠さんの元で暮らすらしい?他の仲間は単純に知りたかったのだがそれも教えてくれなかった。久遠さんのことも少し分かった。歳は19。一人暮らしく面倒見が良さそうだった。正義の味方達となんの関係があるかは分からない。ただ絶対に関係がある。何故私を引き取るのかは本当に分からない。

 警戒すべき人間であることはわかっているが、どうにも本気で心配されているようでなんとも歯がゆい。お兄さんと呼ばれたくないと言っていたがまさに理想の兄さんだろう。


「久遠。」


「なに?」


「暇です。」


「そっか。漫画とか読む?それか勉強する?」


「出来れば漫画で。面白めなやつを所望します。」


「はいはい。そういえばなんだけどさ。お前名前は?」


「イモターリス…。こっちではないのですね、多分。聞きたいのは。」


「そうだね。一応調べた中でそれらしいものもあったけど直接聞きたいと思って。」


「…皐月、と言います。苗字は知りません。皐月というのも本当の名前かと言われれば分かりません。」


「皐月ね。よろしくな。」


 久遠が笑った。最近この人とお医者さんしか見ていない。正直他の景色が見たい。ぽすっと音を立ててベットに横になる。退屈だ。

 久遠が色々外について話をしてくれるようになった。流石に仲間のことは教えてくれないが、こんな物が流行ってるだの。普通のJKが好きなものを教えてくれる。それは新鮮で少し楽しかった。



 ───あれから何週間後か。私は退院の許可を得た。服は久遠が買ってくれたらしいものを身につける。

 おかしいな。私は今まで悪の組織で幹部をしていたはず。それまでは比較的忙しくこの国を滅ぼさんと動いていたはずなのに今は退屈で仕方ない。

 久しぶりの外は真っ暗だった。流石に白昼堂々と歩かせる訳にも行かないのか退院は夜になった。大きめの白シャツに黒のミニスカート。シンプルながら動きやすい。空気が冷たくて心地よい。久遠が車を出してくれてそれで久遠の家に行くらしい。うん。おかしい。


「あの久遠。」


「なに?」


「久遠は何故私を引き取るのですか?利点など無いでしょう。仮にも悪の組織の幹部。恨まれている自覚もあります。私は貴方と会った記憶がありません。余計に、貴方が私に構う理由などないと思うのですが?」


「そうだね。俺に利点はないよ。皐月に記憶が無くても俺にはお前との大事な記憶があるんだ。勿論、お前が悪の組織で幹部やってる時のな。口調が全然違くて大人しいから別人かと思ったけど。」


「悪人っぽい方が良いと言われてああいう風にしていました。お望みならば演じますよ?」


「やめてくれ。一応引き取る理由に監視もあるんだ。お前がもう一度悪人にならないかって。それにお前も疲れるだろう。」


「久遠は正義の味方ですか?私の記憶にはありませんが、あの病院を利用できる辺り確実にそうだと思うのですが。」


「…あー、それに関してはちょっと待て。知られたいような知られたくないような気がするから。」


 運転しながら久遠が苦笑した。

 初めて見た。

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