第4話【生活の始まり】
ジャックとローズの引き取り手――ローガン。
彼は、戦士団の大隊長という役職についてる凄い人だった。だが、ジャックとローズは後ろめたそうにしたまま無言でローガンについていく。
「やっぱあのアクセサリーは保安官のだったか。もし俺じゃなかったら冤罪だったぞ」
「だから保安官が俺達をつけていたのか。も、もしかしてその恨みを晴らしに来たのか?」
「いや、すぐそう言う考えをするような曲がった根性を叩き直そうと思ってな」
「あんた戦士団の隊長さんだって?どう見てもゴロツキにしか見えなかったぞ」
「その失礼な態度も教育しないとな」
ジャックとローズは顔を引きつってお互いに目を合わせる。そんな中、ポム吉はローガンの肩の上に乗ってもう仲良しになっている。
「着いたぞ。これが俺の家だ」
「流石大隊長さん。凄い立派だ」
「家のデザインはイマイチね」
「広い敷地最高!」
街から少し離れた場所にあるその家は、家というには余りにも奇妙なデザインだ。家の前にはプールのような池があり、その先に数段階段があって家がある。その家も、奥の山と繋がっていて遺跡のようにな見た目だ。
「改めて……俺はローガン。盗人ジャックに盗人ローズ……今日からお前達の親って訳だ」
「「……」」
「俺のことはパパと呼べ!」
「筋肉おやじ」
「禿げおじさん」
「了解大隊長!」
当然のように、ジャックもローズもポム吉も誰一人パパと呼ばない。
「言葉は通じるのに、話は通じないときたか……。教えることが多そうだ」
参ったように、ローガンは自分のツルツルの頭に手を当てる。
* * *
そして始まる。ローガンとのスローライフ。
「グースカ、スヤスヤ」
「ムニャムニャ……ZZZ」
「ポムポム……キチキチ……」
朝五時。三人はまだ寝てる。
「起きろ!朝だぞ!」
勢いよくカーテンを開け、腹から出る太い声と大きな鐘の音。ローガンによって、三人は強引に起こされる。
「早すぎ」
「ほわ~」
「朝食の準備だ!働かざる者食うべからず!ほれ!ジャックは食器を出し、ローズは盛り付け!」
「僕は?」
「貴様にやる飯はない!」
「そんな!?」
朝から朝食の準備をするジャックは、眠そうにしながらも食器を並べて食卓の準備をする。
「よし!飯を食ったらランニングだ!日光浴びて目を覚ますぞ!」
「朝は何にもしないをするって決めてるのに」
30分のランキングを終えたジャックとローズは、もう眠そうじゃない。ローガンに比べて汗もかいていないが、顔や表情に覇気がない。
「なかなかやるな!生んでくれた親に感謝しやがれ!」
「……」
「次はアイスバスだ!」
ローガンは蛇口を捻り、巨大ホースから氷を放ってそれを家の池に満杯に入れる。
「おい。まさか入れっていうのか?」
「私絶対嫌!」
「そうか!ならこうだ!」
ローガンに蹴り飛ばされ、池に落ちるジャックとローズ。
「冷たっ!」
「ひゃあ!うひゃ!」
「早く出ないと!!」
「死ぬ!」
慌てて池から出ようとする二人だが、飛び込んできたローガンによって肩を掴まれて強制的に池に沈められる。
「バカ!!」
「まだだ!数の数え方を教えてやる!」
一分間のアイスバスが終わると、ようやくジャックとローズは開放された。
「よーし。そろそろ出発の時間だ。身支度して出かける準備をするんだ!」
家を出たのは8時。ローガンと歩いて街に出て、気持ちのよい太陽と風を浴びる。
「今日からこの子をよろしくお願いいたします!」
「あらあら、可愛い子」
ローズに預けられたのは、こっちの世界でいう幼稚園のような場所だ。種族は違えど、他の年が近い子供も居て、子持ちの親にとって必要な施設なのだろう。
「俺は?」
「寺子屋だな」
「学校みたいなとこか?」
ジャックが連れてこられた場所は、想像通りの場所だ。ジャックの見た目くらいの年の子供が沢山居て、何かを学ぶような場所だ。
「俺、こう見えて成人してるんだけど」
「なんだと?今何歳だ?」
「18」
「ギリセーフだ。取り合えず、今日はここで過ごせ。仕事をしたいなら、週末に仕事探しに付き合ってやる」
「分かったよ」
ジャックは寺子屋と呼ばれる学校に行き、ローガンは戦士団の仕事へと出かけた。
* * *
12日間が経った。どうやら、この世界は一日25時間で一週間が12日間らしい。ジャックやローズは時差ボケで、この世界の時間に慣れるのに時間が掛かった。
「ジャック。お前本当に18なんだな?」
「疑ってるのか?」
「そういう種族なのか?」
「いや、俺は特別だ。色々あって体の成長が止まったんだ」
「本当に親の種族が分からないのか?」
「まぁ。分かんないかな」
「そうか」
「そんなことより、俺仕事したいんだけど」
「ほ~。盗みより働くことが素晴らしいことに気付いたか?」
「そんなとこ。あんたと同じ戦士団に入りたいんだ」
「それは訓練が必要だ。戦士団に入るには最低でも一年居る」
「じゃあ保安官で」
「そっちはもっと大変だ。勉強がいる」
「……じゃあニートで」
「それはダメだ。ポム吉と同じだぞ」
「確かにそれは嫌だな」
仕事募集のチラシをローガンと一緒に眺めるジャックは、頭を悩ませたまま腕を組む。
「お前、盗みはするのに正義感は強いんだな」
「別にそう言う訳じゃない。ただ俺は戦うのが得意だから、戦士団や保安官がいいかな~って」
「ははは!お前強いのか!」
「こう見えてね」
「いいだろう。実力を測ってやる」
「望むとこ」
ローガンとジャックは、木刀を持って家の庭に出た。そして、ローズとポム吉の審判の中、軽い試合を開始する。
「手加減なしだぞ」
「お前もな」
「では!ローガン対ジャック!開始!」
先に動いたのはジャックだ。地面を蹴り、自慢のスピードで突進する。
「はやっ!」
ローガンは反射的に木刀を横に振るう。その太刀筋はとても美しくて速いが、ジャックは読んでいたかのようにしゃがみ、そのまま蹴りで足を崩す。
「な!」
態勢を崩したローガンは、そのまま地面に背中を落とした。同時に、片手で木刀を振るってジャックの木刀を弾き返す。しかし、ジャックはその手を蹴って、ローガンから木刀を落とさせる。
「来たぜ」
ニヤッと笑うジャックは、そのまま美しく洗礼された動きで剣技を見せる。しかし、ローガンは態勢を崩したままそれを全て避け、ジャックの木刀を真剣白刃取りする。
「嘘!」
「凄い!」
これには、ローズもポム吉も驚きだ。
(まじか……抜けない……)
鬼の力を持つジャックでも、木刀を引っこ抜くことが出来なかった。それは、ローガンの浮き出る血管と膨れ上がった筋肉がそうさせているのだろうが、ジャックの想定を上回る事態だ。
「ちっ」
引き抜くことを諦めたジャックは、その場で木刀をへし折り、手元に残った持ちてをフワッと上空に投げる。それに気を取られた一瞬、ローガンの目の前からジャックが姿を消した。
「消えた!?」
周りを見渡すローガン。だが、すぐに背後の気配と首元に走る殺気を感じて両手を挙げる。
「やるな……俺の負けだ」
「フンッ」
ローガンの背後に捕まるジャックは、ローガンが落とした木刀を首元に当てていた。ローガンは冷や汗と笑みを零し、ジャックもホッとしたように帽子を深く被る。
「勝者!ジャック!」
ジャックの勝ちだ。
「あんた本当に人間か?テクニックもそうだが、凄いパワーだな」
「俺の片腕は機械だからな。本来の二倍のパワーを出せる代物だ。ちょっとずるかな」
「たかが二倍だろ?すげーよ。やっぱ戦士ってだけある」
「驚いたのはこっちの方だ。まだ18なのに、凄い戦闘能力だな」
「貰った力だ。俺自身は大したことない」
「それでも、今その力を扱ってるのはジャック……お前だ」
「……」
ジャックは照れたように帽子を深く被り、腕を組んでフッと鼻で笑った。
「この実力ならいずれ英雄王を超えれるかもな」
「英雄王?」
「ん?知らないのか?この世界の英雄と言ったら真っ先に思いつく英雄の王様だぞ?」
「強いの?」
「強いどころか最強だ。もう何千何万年と世界を守り続けているエルフとヒューマンのハーフだ」
「そんな長い間……確かヒューマンの寿命は200年程度だろ?そんなに長く生きれるのはエルフの血のおかげ?」
「そうだな。おかげでこの世界は悪党共に支配されない」
「ふ~ん」
「ジャック。お前は成長が止まってるってことは、寿命で死ぬことはないんだろ?」
「まあ」
「ならきっとお前が将来の英雄王だ。戦士団への入団、このローガンが推薦しておこう」
「ほんとか!」
「ああ。お前の実力ならすぐに昇進できるだろ。その見た目だから、尖った性格さえ直せば皆から可愛がってもらえるぞ」
「俺はガキじゃない。可愛がって貰わなくて結構」
「ははは!ガキじゃなくても可愛がってもらいたいもんだ!歳を取れば尚更」
「……そうか」
その後、ジャックはすぐにローガンの推薦で戦士団に入団することが出来た。そして、数日後には「若き戦士の誕生」という話題でいっぱいになった。
* * *
「ヒャッハー!」
「捕まえれるものならやってみろ!戦士団!」
街を機械動物で破壊する荒くれもの達。それを追い掛けるのは、ローガン率いる戦士団だ。ローガンの後ろには五人の部下がおり、皆が機械動物の馬に乗って追いかけている。
「やばいぜ兄貴!あいつらの乗ってるのは研究所から盗んだ最新動物だ!」
「分かってる!これ以上の被害を許すな!挟み撃ちだ!」
ローガンはそう言うも、やはり敵との距離は一行に縮まらない。しかし、上空に大きな影と突風が現れ、それが荒くれもの達を追い抜かす。
「なんだこいつ!」
荒くれもの達の前に現れたのは、大きな白いドラゴンだ。そして、その頭には一人の変わった服をした少年が居る。
「撃ち殺せ!」
機械動物から発射された光線がドラゴンと少年を襲う。しかし、少年は皮手袋から出した武器でそれを反射させ、逆に荒くれものの機械動の足元を吹き飛ばす。そして、素早く羽根を広げた少年は、見事な戦闘能力で一瞬にして三人の荒くれものを倒した。
「おおー!!!すげー!」
「凄いぞ小さなヒーロー!」
少年に向けて民衆が歓声と喝采を上げた。そして、そこにたどり着いたローガンチームも誇らしげに少年を見る。
「どうだ?俺一人のチーム作る気になったか?」
少年――ジャックは帽子の影からから顔を見せ、自信満々の表情を見せた。




