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ミトロジア ~明日雨が晴れたなら歴史をやり直してみようか~  作者: ビタードール
一部】四章【伽藍洞な希望に終止符を】
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第2話【罪の国】

 セティアと別れたジャックは、ポム吉と一緒に罪の国『ハマルティア』に訪れていた。ジャック達が住んでる神界や天界が神秘的でメルヘンチックな世界観なら、この国は機械的で近未来的な世界観だ。それも、地面は砂地で気温も高く、日差しが強い。種族はとても多く、少し宇宙的なファッションが多い。


「なぜ罪の国なんだろうな。皆普通に生活してるように見える。下界の人間や新界の神々と変わらない」

「罪ってなに?」

「してはいけないことだ」

「じゃあ僕には関係ないね!」

「いや、お前は存在が罪だ」

「ちょんな!?」


 二人はそんなアホみたいな会話をしながら、この国の先にある目的地に目指す。


「きゃあーー!」


 少し遠くから悲鳴が聞こえた。同時に、建物の一つが激しく壊されて機械の頭と巨大動物の体に乗ったワニ男が現れた。ワニ男は巨大動物を操りながら次々と住民を八つ裂きしていく。


「あれも罪じゃない!?」

「そうだ。それも大罪だ」

「ジャック!」

「ああ。お仕置きしてやるぜ」


 皆が逃げる中、ジャックはドヤ顔を決めながら突っ立ている。それに気付いたワニ男は、ジャックの前までやって来て立ち止まった。


「お前逃げねのか?」

「こっちのセリフだ。今なら逃がしてやる。大人しく川に帰りやがれ」

「じゃあてめえは砂に帰りやがれぇ!!」


 ワニ男が巨大動物を操ってジャックに攻撃を仕掛けた。ジャックは「フンッ」と鼻で笑いながら、いつも飛ぶみたいに高くジャンプした。


「あれ?」


 だが、高くジャンプした後、そのまま落ちてしまい、ワニ男の攻撃を諸に食らう。


「かはっ!」

「ジャック!」

「マヌケか!?自分から飛び込んできやがってぜ!」


 ジャックは建物まで吹き飛び、頭から血を流して不思議そうに立ち上がった。


「なんだ?魔力が出ない?今飛べなかったぞ」

「ジャックの主人公補正が切れたんじゃない?」

「そんなデタラメな理由でたまるかっ」

「まだ元気じゃねえか!ぶっ殺してやるぜチビ助!!」

「ちっ」


 巨大動物の頭から放たれた光線がジャックを襲う。ジャックは慌てて羽根を広げ、空高く飛んで攻撃を避ける。


「羽根は使える。だが魔力が出ない!魔法も打てなきゃ魔法陣から神器も出せない!このままでは本来のパワーで戦えない!どうなってる俺の体!」

「ジャック神器だ!桃凛剣とうりんけんだ!桃凛剣なら革手袋から出る!魔力は関係ないよ!」

「そうか!神器!桃凛剣!」


 ジャックはポム吉の助言通り、革手袋から神器を出現させ、羽根をめいっぱい使って飛行する。そして、その飛行スピードでワニ男を翻弄し、神器で巨大動物ごとぶった切った。


「グワーッ!!!」

「ちっ。手間取らせやがって」

「ひゅー!流石主人公だよ!」


 ワニ男は、体が半分になって血を噴き出す。その血しぶきの中、ジャックは不機嫌に自分の体を見詰める。一方、ポム吉はただただはしゃいでいる。


「た、助けて……」

「い、生きてる?よく見れば他の奴も」


 ワニ男は半分になっても生きていた。それどころか、ワニ男が八つ裂きにした住民も体がバラバラになっても息があった。それを見て、ジャックは思わずまん丸い目を固めてしまう。


「あんた、もしかして異国の人かい?呪われた命じゃないのかい?」


 動揺するジャックにエイリアンのような老人が話しかけて来た。


「呪われた命?」

「やっぱり、迷い込んでしまったのか」

「詳しく教えてくれ」

「この国の住人は皆、神に魂を売ったんじゃよ」

「だからこいつらは死なないのか?」

「そう。永遠に死なない体……その代わり永遠に死ねない」


 老人はそう言って機械の腕を見せつける。


「失った体は戻らない。意識があるまま肉体が死ぬ恐怖……それが我々が背負った罪の代償」

「ここは罪の国と呼ばれてるらしいが、なぜ罪の国なんだ?」

「この国の住人が皆、大がつく程の悪党だからじゃ」

「……」

「外ではおとぎ話程度の話じゃが、善人も悪人も皆神によって支配されている。その者の罪の重さで住める場所が決まる。儂らはもうこの国から出れない」

「出たらどうなるんだ?」

「呪いに襲われる」

「その神ってのは、どんな奴なんだ」

「……言えない。それを口にすることは出来ない」

「それも呪いってやつか?」


 ジャックの質問に老人は静かに頷いた。ジャックはその老人の何とも言えない表情と周りから聞こえるうめき声を聞いて、ほんの僅か絶望を感じていた。見てはいけない闇を見た気分だった。


 * * *


「この先じゃ」


 ジャックはエイリアンの老人に案内され、国の奥へ続く道まで来ていた。


「本当に一生ここから出れないの?」

「刑務所と同じだ。心を入れ替えて生まれ変わることが出来たなら、もう一つ軽い罪の国へと行ける」

「ほんとに?」

「その言葉を信じ100年……儂はまだここに居る」

「諦めるなよ……絶対」

「随分残酷なことを言う」

「悪党なんだろ?残酷なのは苦手か?」

「フッ……どうじゃったかな。忘れてしまったよ」


 ジャックが冗談交じりに励まそうとするも、老人は逆に切なそうに瞳を何度も閉じた。それを見て、ジャックは口角が下がってしまい、老人の表情から背けるように前方の出口の方を見る。


「案内してくれて……ありがとう」

「ご武運を」


 * * *


 罪の国「ハマルティア」を抜けたジャックは、先程の疑問を確かめるように体に力を集中させる。


「クソッ。てっきりあの国が原因で魔力が出せないのかと思ったが、まだ出ない。国を抜けてから何時間も経ったはずなのに」

「気絶するまでは魔力で飛べてたのにね」

「……まさか?」


 ジャックは思い出した。アウトリュウスに首を掴まれ、妙な魔法陣から魔法が発動した時のことを。


「アウトリュウスの奴か!きっとそうだ!あの時あいつ俺に何かしやがった!だから俺を置き去りにしたんだ!」

「なりゅほど」

「ちっ。あいつを見つける理由がより明確で優先的になったぞ」

「その手がかりはこの国にあるかもね」

「だといいな」


 ジャックは羽根を広げて高い崖の上から街並みを見下ろした。機械的な建造物は罪の国と同じだが、その数は少なくて所々に固まっている。代わり、ほとんどの空間が森や崖と言った自然的なものだ。建造物も近未来的な感じではなく、少し和風を感じさせる創りだ。


「あんまり人が居なそうだね」

「だが生き物の気配はいっぱいだ」

「アウトリュウスも居るかな?」

「さぁ。でも、行くしかないだろ」

「だね!行こう!新たなる世界へ!」

「ああ、行こう」


 崖から見下ろす景色に浸っていたジャックは、どこか抜けていて静かだった。そして、そのまま崖から落っこちて、飛行機のように綺麗に空を舞った。ポム吉もそれにしがみついて希望に満ちた顔をしている。


「パトカー」

「確かに、腹減ったな」

「この世界にご飯はないの?」

「探そうか」


 自然に囲まれる街並みに舞い降り、街並みに見とれたまま周りを見渡す。やはり、あちらこちたに生き物が居て、その全てが見たことない種族だ。人型の種族やそうでない者、言葉が通じるかも分からない見た目の種族も居る。ジャックは初めて神や悪魔の世界に訪れた時のことを思い出し、何だか懐かしい気分でゆっくりと歩きだす。そして、真理の義眼で見たことない文字を解読しながらキョロキョロと建物を一つ一つ見ていく。


「居酒屋、バーか?」

「西部劇にありそうな店だね!」

「ああ。入るか」


 ジャックは少し警戒心を持ちながら、ゆっくりと西部劇に出てきそうな扉を開いた。それに気付いた客や店主は、ジャックを二度見三度見し、何事もなかったかのように酒や飯や会話を楽しむ。


「凄い見てたよ!僕が可愛すぎる熊だからかな?」

「多分俺が子供で見ない顔だからだ」

「どっちもだね!」


 ジャックは目線が気になりつつも、胸を張って歩いてカウンター席に座る。そして、メニュー表を真理の義眼で見て、ゆっくりと目を細める。


「坊や、何にする?」

「チャイケーキセット、子熊ランチセット、素敵なステーキセット、以上で」

「あいよ」


 ジャックは新鮮な気持ちとスカした表情で頬杖をついた。そして、荒くれ者だらけに見える客層を眺めながら、先に出された水を一杯飲む。


「なんだこの水……別にマズくないが、妙な味だ。後味がハーブのような苦み……それがスッキリしていて癖になりそうだ」

「ほんとだ!」


 やはり別の世界なのか?そんな疑問をまだ持ったまま、ジャックは運ばれてきた料理に目を輝かせ、ポム吉と横目を合わせる。


「見た目は悪くないな」

「いただきましゅ!」


 ごく普通の食事に見える。日本食から南米の食事に変わったくらいの変化だ。表情を変える程のものではない。紅茶にケーキ、クマさんの似顔絵が書かれた白色のオムライス、そしてジュージューと肉焼ける音がするステーキの山。二人は手を合わせ、フォークとナイフを手に取ってそれにかぶりつこうとした。


「このクソガキ!!」


 瞬間、近くからガラの悪い怒鳴った声と机を叩くような物音が聞こえてきた。


「ああ?」


 ジャックはてっきり自分が呼ばれたと思い、嫌な顔で振り返る。しかし、怒鳴った大男はジャックよりも幼い女の子の首根っこを掴み、周りの仲間と同じように怒りを露わにしている。そして、女の子を強くテーブルに叩きつける。


「おい、やめないか。相手は子供だぞ」


 そして、近くに居る客がその大男に恐る恐る注意する。周りの客も、大なり小なり大男達を見ている。


「勘違いするなよ。悪いのはこの訳の分からない小娘だ。こいつは俺達から金を盗んだ」


 大男はそう言い、女の子の懐から大金の入った財布を取り出した。


「だが子供のやったことだ。許してやれ」

「その考えは甘いぜ。このガキは痛い目みないと同じことを繰り返す。昔の俺がそうだったようにな」

「じゃあ保安官カウボーイに任せるんだな」

「それもそうだな」


 大男は少し考える素振りを見せる。だが、すぐに納得したかのように女の子の首根っこ掴み、ジャックの横まで来て、店主に金を渡した。


「まいど」

「あとワインくれ」

「あいよ」


 ジャックは目を合わせないよう紅茶を飲む。大男もジャックを一瞬だけチラッと見て、すぐに仲間と一緒にその場を立ち去ろうとする。


「許して!お腹が減ってたの!何でもするから許して!」

「何言ってるか分かんないガキだ」


 大男は耳が痛そうな顔で犬をしつけるかのように女の子を軽く叩く。


「痛い!お父さんにもぶたれたことなにのに!もう怒った!」


 大男と女の子がジャックの背後を通り過ぎ、出口の手前まで来た。瞬間、女の子は膨大な覇気で大男と近くの客を吹き飛ばし、背中から生やした白い羽根を広げた。


「うわ!」

「何だこいつ!?見たことない羽根だ!」

「言語も不明なら種族も不明ときたか!」

「あっかんベー!バイバーイ!」


 女の子はニヤッと笑って手を振り、羽根を広げたまま店を出て行った。大男達も慌てて女の子を追い掛ける。そんな中、ジャックは驚いたような表情で紅茶カップを落としてしまう。


「ま、魔力だ……あの子供魔力と天使の羽根を……」

「言語も神々の言葉だったよ!」

「今まで気が付かなかったがあの感じ……神と天使のハーフだ」

「つまり?」

「この世界に俺とアウトリュウス以外に来てる神が居る!」

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