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ミトロジア ~明日雨が晴れたなら歴史をやり直してみようか~  作者: ビタードール
一部】四章【伽藍洞な希望に終止符を】
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第1話【新たな世界】

 ジャックのかつてのクラスメイトで、強欲の魔神マモンの実の孫アウトリュウス。その悪魔は、あろうことか世界そのものを盗んだ。神界、天界、魔界、下界、ジャックが行き来する全ての世界をガラス玉のようにして盗んでしまったのだ。それをいち早く知ったのは、真理の義眼を持つジャックだけだった。


「くそっ……いつまで続くんだ」


 そして、名前の知らない遠い遠いまた別の次元にある異世界。ジャックはこの世界のことを何も知らず、ポム吉と共に永遠に続く砂地を飛んで進んでいた。


「どうなってるんだ。真理の義眼でこの世界を見ようとしても、発動しない。未来予知すらできない」

「それは真理の義眼が新しい環境にまだ適合してないからだよ!あと数日は使えないと思うよ!」

「何だよそのふざけた設定……。他の生命体や資源があるかも分からないし……さっさとアウトリュウスを見つけないと」


 真理の義眼が使えない状況で、ジャックは進み続けた。もう先程居た海は見えなくなっており、捨てられた地が所々見えるだけだ。そんな砂地の上で、一人静かに歩く何者かが居る。


「誰か居るよ!」

「ほんとだ」

「あっ!」


 ジャックとポム吉がその何者かに気付いた時、フードを被ったその者は体をよろめかせてその場にバタリと倒れた。


「この広い砂地だ。きっと遭難者だろう」

「助けに行こう!」

「ああ。情報も欲しいしな」


 ジャックはゆっくりと飛行し、静かに砂地に足を付けてその何者かに近寄った。


「大丈夫か?」

「……」


 体に触れ、声を掛ける。だが、反応はない。


「おい。しっかりしろ」


 ジャックがその何者かの体を揺すり、体を起こそうとうつ伏せになってる体をひっくり返した。


「ッ!」


 瞬間、その何者かはジャックの首を掴み、物凄い力で首を絞めた。


「ジャック!!」

「がはっ!」

「この!ポムパンチ!」


 すぐにポム吉が攻撃を仕掛けるが、当然のように遠くへ殴り飛ばされる。更に、ジャックは高く持ち上げられ、素早く抜かれた手刀で胸を貫かれた。


(魔力が練れない)


 ジャックは魔力が練れなくなり、二人を中心に緑の魔法陣が現れる。そして、ジャックの蹴りが何者かのフードを捲った。


「四年ぶりだね」

「き、貴様は……」

「そう、君の親愛なる愛人、アウトリュウス。寂しかったろ?」


 フードから素顔を見せたのは、ジャックがこの世界で探し求めていた大悪魔アウトリュウスその人だった。少し大人びた顔付になっており、いつものように飄々とした表情でニヤッと微笑みを混ぜた表情を浮かべる。


「くっ……」

「ひゃはっ!新たな世界へようこそ!」


 魔法陣が膨大な光を放って二人を包んだ。そして、その光はジャックを縛り、その強力な力が体を蝕んでいく。その光が最大限輝いた時、魔法陣が一瞬にして消えてジャックは気を失ったようにその場に倒れた。


 * * *


 体がまだ痺れている。そんな中、ジャックはゆっくりと目を覚ました。横目で横を向き、まだ状況がつかめていないような顔を浮かべる。


「はっ!」


 だが、すぐに思い出したかのように革手袋から神器を出現させ、警戒した様子で武器を構えてあちこちを見渡す。だが、そこは先程いた砂地でもなければ、アウトリュウスの姿もない。


「目覚めたようね」


 そんな中、焚火の様子を見る女性が座ったまま薄い微笑みを見せた。その女性は、普通の人間のように見える。そこには、ポム吉も居て、女性の手伝いをしている。


「あんた誰?」

「失礼な子……お礼が先じゃないかなぁ?」


 女性は微笑みを少しだけ崩し、目線を垂らせて傾げた。


「助けてくれたの?アウトリュウスは?」

「アウトリュウス?他にも仲間が居るの?」

「……」

「貴方は一人で倒れていたわよ」

「そう。ありがとう。助けてくれてありがとう」

「フフッ……どういたしまして」


 女性が笑ったのを見て、ジャックは反射的に目線を逸らす。そして、そのまま周りを見渡した。そこは、心地よい外の空気が入ってくる洞窟のようで、大きな入口からは陽光と岩山が見える。先程よりも涼しく、もう砂地は見えない。


「俺どこで倒れてた?」

「砂地よ」

「ここはそこから大分離れてるように見えるけど……」

「街に連れて行こうと思ったの。貴方目を覚まさないから」

「どれくらい寝てた?」

「丸一日は寝てたんじゃないかなぁ?」

「あんたは何であんな広い砂地に居たの?」

「海を目指して歩いていたからね」

「そう」

「貴方名前は?」

「ジャック」

「よろしくジャック」


 女性は近寄ってきて、少し強引に手を取ってジャックと握手した。


「あんたの名前は?」

「……」

「……ッ?」

「セテェア」


 女性――セテェアは、しばらく遠い場所を見てるような目を向け、すぐに思い出したかのように名前を名乗った。その時、ジャックはようやくセテェアの姿形に目を向けた。


「よ、よろしくセテェア」


 表面の闇に溶け込む黒髪とキラキラと輝く紫のインナーカラーをした色白の美少女。プルっとしたピンクの唇、水晶玉のような濃い紫の瞳、お人形のような癖になる表情、それはなぜか脳裏にアマノを思い浮かばさせる。


「……」

「どうかしたの?」

「え!いや、何でも……」


 訳も分からず見とれていたジャックは、慌てて手を振り払って帽子を深く被った。それを不思議そうに見るセテェアは、目を細めて少し懐かしそうに泣きそうな笑みを見せる。


「ジャック達は海のある方から来たんでしょ?」

「え?そうだけど、何で知ってるの?」

「あの照れてるクマちゃんが言ってたよ」


 両手を背後で組むセテェアは、背後に視線をずらしてニヤニヤと笑う。すると、焚火に木を詰めていたポム吉が反応し、「照れちゃう照れちゃう」言いながらこっちにちょこまかとやって来た。そして、「ペチャ!」と言いながらセテェアの胸にしがみつく。


「ペチャペチャ!凄いよ!アマノ以来の逸材!過去最高のペチャパイだよ!」

「確かポムちゃんだっけ?かわいいお友達だね」


 セテェアはペチャペチャされて尚、嫌な顔一つせずに微笑んでいる。そんなセテェアとポム吉を見て、ジャックは嫌そうに片目を細めた。


「そいつは焚火に入れて使うんだ」

「そうなの?」

「ああ」

「ふ~ん」


 ポム吉は焚火に入れられた。


「ほわ~」

「本当にあってる?」

「あってる。それより、俺を街に連れてくつもりだったって言ってたよね?良ければ案内してくれない?」

「いいわよ。すぐ近くだし」

「ありがとう」


 * * *


 ジャックは肩に乗るポム吉にコソコソと耳打ちした。


(何で俺の言葉が通じるんだ?別の世界の住人だろ?)

(真理の義眼のおかげなんだよね!)

(何て都合のいい能力)


 ジャックは呆れたように瞳を触り、真理の義眼がほんの少しだけ使えるようになってることに安心する。


「眠ったおかげか、真理の義眼が使えるようになってきたな」

「何か言った?」

「いや、何でも」

「そう」

「……」

「見えてきたよ」


 セテェアがそう言った瞬間、二人の目の前に動物達の大群が通った。だが、その動物はジャックがよく知る人間界や新界の肉と毛皮の生き物ではなく、機械的な生き物だった。その妙な生き物に目を取られたのもつかの間、目の前に広がる景色を見て唖然とした。


「しゅごい!!」

「機械的だな」


 今まで広大な砂漠が続いていたのに、目の前にあるのは機械的で近未来的な街並みだった。砂の地の上に光り輝く捌くに溶け込むような色をした巨大な建物が聳え立っている。その建物は、近くに生えてるヤシのような木が小さく見える程大きい。


「他の人も居るよ!」

「流石にお前みたいな熊は居ないようだが、やっぱり本当に違う世界なのか?」


 近くに居る人々は、ファッションも見た目のジャックの知らない種族だ。一見人に見える種族や獣的な種族、肉体が空けて骨が見えてる種族、空を飛ぶ精霊のような種族、沢山の種族が居る。そして、そのほとんどの肉体の一部が機械でできていたり、体ほとんどが機械になっている。


「やっぱり、貴方は別の世界から来たのね」


 唖然とするジャックを横目で見下ろすセテェアがボソッと言った。


「ッ……その言い方、随分慣れてるようだな」

「ええ。この世界には神と呼ばれる存在が一つだけあるの。きっと彼の仕業だわ」

「神?」

「気を付けてねジャック。私には見えるわ……貴方の未来が」

「へ~、一体どんな未来?」

「悲劇」


 小馬鹿にするようなジャックに対し、セテェアは真剣で心配そうな顔のまま言った。その時、ジャックの瞳はセテェアの紫の瞳に吸い込まれたかのように動けなかった。


「……気を付けるよ」

「ええ。得にここ、罪の国『ハマルティア』には」

「罪の国?」

「言ったでしょ。神と呼ばれる存在……この世界は彼によって創造されてる」

「詳しく教えて」

「それは出来ない」

「なぜ?」


 セテェアはまた遠くを見てるような澄んだ目をした。ジャックの質問に答えず、瞳を閉じて肩までかかった髪を靡かせる。そして、少しだけかがんでジャックに顔を近づけた。そこには、魔性の何かを感じる。


「この国を抜けた先により豊かな大国があるわ。そこまで死なずに行くのよ」

「セテェアは?一緒に来ないの?」

「言ったでしょ?海の方へ行かないと」

「何で?」

「何でもよ」

「友達になれそうだったのに。残念だよ」


 ジャックは一瞬悲しそうに下を向き、すぐに苦笑いを返す。それを見て、セテェアも釣られたように苦笑いをする。


「もし助けが必要になったら海に来て。私はそこで待ってるわ」

「帰る時に挨拶しに行くよ」

「……行きなさい」

「うん」


 ジャックは会ったばかりのセテェアに時間以上の思い入れを抱いてた。それは、セテェアにアマノに近いものを感じたからだろう。

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