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ミトロジア ~明日雨が晴れたなら歴史をやり直してみようか~  作者: ビタードール
0部】四章【伽藍洞な希望に終止符を】
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第0話【プロローグ】

 さて、新たな章と物語が始まろうとしている。

 そんな中、天界は脱獄囚達で溢れかえっていた。物語の初っ端から天界は大ピンチだ。


「ハッハッハッハッハリンス様の復活だー!」


 一人の脱獄囚がそう言って街を破壊し、巨大な鞭のように飛ばした髪の毛で住民や警官を撃ち殺していく。


「くそっ!最高神レベルじゃないと手が付けられん!」

「ダメだ!脱獄囚は他の場所にも居る!増援が来るとは思えない!」

「がはっ!」

「うっ!」

「ちくしょう!!相手はたった一人だってのに!俺達は無力だ!」


 警官を含めた戦闘員は、皆建物に隠れて怯えることしかできない。ハリンスと名乗る悪魔――そいつは、自身の髪の毛を変幻自在に操って建造物や電車や車を豆腐のように破壊する。


「やめてよ!!」


 そんな中、幼い少女が声を荒げ、ハリンスの背後に石を投げた。ハリンスはゆっくり振り返り、その少女をギロッと睨んで鼻で笑う。


「やめろって?随分張り切った言いようだ」

「これ以上は私が……私が許さないんだから!」


 少女は震えた声でそう言い、仁王立ちをして身構える。ハリンスはクスクスと笑い、2mある体を更に大きくさせた。


「このハリンスを許さないぃ?いいよ~別に~」

「下がるんだお嬢ちゃん!!」

「下がれ!そいつから離れろ!」


 戦闘員が少女を助けようとする動くが、ハリンスの髪がそれをいとも簡単に阻止する。


「新たな英雄の誕生だ!幼い英雄の誕生だ!!皆見てるかー!?」


 ハリンスはそう言っておどけ、一人で腹を抱えて笑う。だが、すぐに悪魔の表情を見せてニヤリと笑った。


「そして!ここがその英雄のお墓だ!!あの世へぶっ飛べクソガキィ!」


 自身の髪を剣に変え、その剣を少女に振るう。少女は涙目で、身構えたまま両目を瞑ってしまう。


「はぁ……クソッ!!」

「うっ……酷い……」


 剣が振るわれ、大きな振動が地面を走る。砂ぼこりが舞い、それを見ていた住民が余りの無力さに涙を流す。


「ッ……」

「あれって」


 しかし、砂煙が消えたと同時に、皆の表情が変わり出した。その表情は、絶望から次第に次第に希望へと変わる。


「なっ……んだと」

「もう大丈夫!僕達が来た!」


 ハリンスの攻撃は、一人の少年の剣によって受け止められていた。そして、その肩に乗る白い熊のぬいぐるみ――ポム吉がお腹に手を当てて偉そうにしている。


「英雄神だ!!英雄神ジャックが来てくれてた!」

「うおおおお!!」

「ははっ!やったー!」


 皆が歓声を上げ、ハリンスは力んだ様子で嫌そうな表情を浮かべる。


「教えてやる。ここはあんたのお墓だぜ」

「英雄神ジャック!マモン様の仇!!」


 ハリンスが剣を離し、更に魔力を高めて髪の毛を振るった。だが、ジャックはそれを大剣で受け止めて蹴りで遠くへ吹き飛ばした。


「あの世へぶっ飛べ、クソ野郎」

「うおおおお!!」


 歓声の中、ジャックは背後の少女に顔を向けた。


「名前は?」

「……セーラ」

「セーラ、君の勇敢な行動は皆を守った」


 少年――ジャックは真剣な顔でそう言い、ほんの僅か微笑みを零して自分の軍帽を泣きそうな少女――セーラに深く被せ、ポム吉を優しく受け渡す。


「これも頼むよ」


 ジャックはニッと微笑み、軍服のような服をマントのように広げて羽織る。そして、起き上がろうとしている悪魔を真理の義眼で睨み、魔王の羽根を大きく広げた。その羽根はハリンスの物より大きく、格の違いを見せつけるように逆立っている。


「もう一仕事だ」


 * * *


 カーマの死から四年。そして、アマノの死から八年経った。

 ジャックはクラスメイトのベルとセーレと共に学園を卒業したばかりだった。


「卒業おめでとう!」

「おめでとう」


 ベルもセーレも随分身長が伸び、顔付や身体つきが変わった。それだというのに、ジャックは10歳の少年の姿のままだ。ジャックにとって、それがとても悔しい。今だに子供扱いされるし、隙あらば頭を撫でられたり、抱っこされたりと、玩具のように遊ばれる。


「私達リベ先生と卒業パーティーだけど、ジャックも来るでしょ?」


 桜の木の下、ジャックはベルとセーレの高い目線を見上げ、何か思い出したかのように足を止める。


「ん~」

「まさか今日も依頼だとか言わないよね?」

「いや。流石に今日は断ったけど、最近サタン達に顔見せてないからさ」

「そういえば……」

「ちょっと顔だしてから行く。だから遅れて参加するよ」

「分かった」

「待ってるね」


 ジャックはそう言って桜靡く木の中を駆け抜け、いつも通り羽根を広げて宙を舞う。だが、空を飛んだ瞬間、瞳に激痛が走って木にぶつかった。


「いって……この痛み……まさか……」

「真理の義眼の危険信号だ!」


 懐から出てきたポム吉が食い気味にセリフを奪い、頭に乗って吞気に踊り出す。ジャックはそんなポム吉の首根っこを掴み、覗くように真理の義眼に映る未来を見通した。


「ほわっ!」

「これは!」


 ジャックが見た未来はとてつもない邪悪だった。服役中のはずのアウトリュウスが何かの魔法を使い、神界、天界、魔界、下界、全ての世界を手の中にしまい込み、それをガラス玉のようにして自分の横に飾っている。何が何だか分からなかった。


「どういうことだ?世界がガラス玉に……奴の魔法?あいつも先週の一件で脱獄していたのか?こ、これが本当だとして、どうやって回避すればいいんだ?」

「ジャックあれ!」


 空を見上げると、無限に広がる紫の光がゆっくりと世界を包むように広がった。それは世界から光を奪うように広がり、すぐに空全体を囲う。


「もう最悪の未来が来たのか!?」

「逃げるんだジャック!」

「でもどうやって!?」

「別の世界に逃げるんだ!」

「別って、魔界か?下界か?」

「違うよ!真理の義眼でアウトリュウスの居る世界を見るんだ!ジャックもそこに行くんだ!」

「そんなことできるのか?」

「急ぐんだ!」

「分かったよ!」


 皆の困惑の声があちらこちらから聞こえる。そんな中、ジャックはポム吉の助言通り再び真理の義眼を除き、アウトリュウスが居る位置を探る。


「居た!凄い遠くの世界だ!魔界や下界を見るのとは訳が違う!」

「そこに転移するんだ!」

「そんなことできるかよ!俺がアウトリュウスと親しい判定じゃないのは知ってるだろ?」

「あっちには僕が居るよ!」

「は?」

「いいからあっちに居る僕の元へ転移するんだ!もうこの世界が取り込まれる!」

「……」

「早く!」

「ちっ!コース.レゼン!」


 ポム吉のチンプンカンプンな発言に思考停止したジャックだが、すぐに呆れた顔のまま転移を唱えた。


 * * *


 波の音、温かい砂浜、冷たい海水。ジャックが転移した場所は海の綺麗な砂浜だった。


「……海?本当にここ、別の世界なのか?天界でも下界でも魔界でも神界でもないのか?俺の知らない世界?」


 ぶつぶつと呟きながら周りを見渡す。すると、そこには砂浜でラジオを聞きながらジュースを飲むサングラスを掛けたポム吉が居た。


「バカがバカンスしてる」

「照れちゃう!」


 それに反応し、肩に乗っていたポム吉がそのポム吉に手を上げて挨拶をする。バカンスポム吉は、それに気付き、サングラスを上に上げてこちらを見る。


「照れちゃう!」


 声も喋り方も同じだ。


「ポム吉が二人?どうなってるんだ?」

「照れちゃう!」

「照れちゃう!」


 ポム吉達が感動の再開をするかのように、「照れちゃう」と言いながら抱き合った。すると、二人は一人になって、いつものポム吉が一人になってしまう。


「え?どうなった?今互いに磁石のようにくっ付いて同化したように見えたが?」

「近付くと一人に戻っちゃうんだ!」


 ポム吉はそう言い、自身の頭を摘まんでもう一人のポム吉を摘まみ出す。まるで何でもありなカートゥーンアニメーションのようだ。そして、再び惹かれ合って一人に戻る。


「俺はお前のこと何にも知らないのかもな」

「僕も僕のこと全然知らないよ!たまに思い出すだけさ!」

「とにかく、俺はお前の馬鹿馬鹿しい設定のおかげで助かった訳だ」

「照れちゃう!」

「……で、もう一人のポム吉は何でこの世界に居たんだ?」

「分からないよ!」

「……まあいい。取り合えず、ここが本当に別の世界……異世界なのか確かめるのと、アウトリュウスを見つけ出して世界を戻させることが優先だ」

「優先吉!」

「行くぞ」

「おう!」


 訳の分からぬまま、少年と熊のぬいぐるみは歩み始めた。囚われた世界を取り戻す為、名も知らぬこの世界で、また新たな冒険と成長のドラマを描くのだ。

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