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ミトロジア ~未来の魔王を拾いました~  作者: ビタードール
0部】3章『マリーゴールドにキスを望む』
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第44話【マモン対カーマ】

 二つの勢力がぶつかり合う。フクロウの化け物ミネルヴァンにの乗るマモンと白いポムラゴンに乗るカーマだ。二つのぶつかり合いは、下の海を大きく揺るがす程だ。


「ウェザー.クラウン!ウェザー.サン!ウェザー.サンダー!」

「ちっ!防御術式、強化!」


 一見互角に見える戦いだが、よく見ればマモンが追い詰められている。片腕のない状態での戦い、魔力と体力の限界、どう考えても不利だ。


「クソッ。このままじゃ儂は負ける。長時間戦いすぎた……それにあの小童は覚醒したばかり。言わばアドレナリンドバドバの一番強い時じゃ。覚醒後はしばらく限界を知らずに戦えるとも言う……奴はまだまだ余裕じゃろう」


 マモンは焦りの中で復活したばかりのことを思い出していた。アウトリュウスの魔法で再び現代に蘇り、周りの風景を見た時のことを。そう、その時に居た見覚えのある女を思い出していた。


「そう言えば……」

「ッ?」


 カーマもそのマモンの表情の変化に気が付いた。その表情もあり、カーマの直感が決着を忙す。畳みかけるように魔法を放ち、マモンとの距離をできるだけ縮める。だが、マモンは決して反撃せず、防御に徹底して海の中へ召喚獣と共に潜る。


「何!?」

「海の中に逃げられるよ!」

「そういえば、この地には沈んだ都市がある。奴はその中に身を隠すつもりだ!」

「追い掛けよう!」

「行けるのか?」

「大丈夫。僕最強だから」

「そうか」


 カーマはアホすぎるポム吉に呆れた態度を取り、ポム吉に身を任せてドラゴンと共に海の中のマモンを追い掛ける。しかし、海の中にあるマモンの切り離された腕がカーマの顔を掴み、ドラゴンから引きはがす。


「がはっ!」

「カーマ!」


 独りでに動くマモンの手を燃やそうとするカーマだが、その手から出たバリアがそれを防ぎ、そのバリアが目に刺さって出欠する。更に、その手は巨大魚の口に向かっており、カーマは今にも食われそうだ。


「やばいよ!」


 ポム吉の助けは間に合わなかった。カーマはマモンの手から放たれた風に吹き飛ばされ、巨大魚に食われた。慌てて巨大魚を攻撃するドラゴンだが、周りに泳いでいる巨大ピラニアの大群に体を食い散らかされる。


「ほわああ!!」

「ウェザー.サンダー!」


 しかし、雷と共に巨大魚から出てきたカーマがピラニアの大群を蹴散らし、復活するポム吉を拾って泳ぐ。その片腕からは血が出ており、その血を追って凶暴なサメや巨悪な深海魚が追いかけてくる。


「マモンの狙いはこれか?海の化け物達の餌にしよって魂胆だ」

「よし!ならばこっちも魚になるんだ!」

「どうやって?」

「変身!」


 ポム吉はカーマの足を掴んで変身する。すると、カーマの足が人魚のような姿になり、泳ぎに特化した姿になる。ポム吉も自身の足をヒレに変えて、カーマの隣をスイスイと泳ぐ。


「お前凄いな」

「出来ると思えば何でもできるよ!」

「よし。これなら魚に追いつかれない」

「照れちゃう!」

「マモンの魔力を感じるあの沈んだ都市に行くぞ!」

「おー!!!」


 二人は魚になった気持ちで目の前にある海の中の街並みに向かう。


 * 


「召喚魔法!カスララ.リラ!」


 数分前、海に潜ったばかりのマモンは海の都市の中で召喚魔法を唱えていた。自分を中心に魔法領域を使用し、海水が入らずに無事に呼吸できる空間だ。


「……やはり、私を呼んでくれると思ってました。マモン様」


 召喚魔法でこの場に転移したのは、手錠を付けられたままのカスララだ。何だか疲れた顔と複雑な表情でマモンのことを見ている。


「手当を頼む。手を治せ」


 マモンはそう言い、魔法領域外から飛んできた手をキャッチし、自分の傷口にくっ付けてカスララに命じる。しかし、カスララはすぐには治さず、少し寂しそうにマモンを見ている。


「早くしろ。貴様の融合魔法ならすぐ治せれるはずだ。治癒魔法のようにさほど魔力も必要ないだろ」

「一つ聞きたいのです。本当に私じゃダメなのですか?」

「今は急いでいる。早くしないか」

「……大事なことです。私とひっそり穏やかな生活ではダメなのですか?」

「まだ言うか」


 マモンはピキッと血管に血を上らせ、物凄い殺気でカスララを睨み上げる。しかし、カスララは怯まずに唾を飲み込んでマモンの小さな体を見下ろして両肩に手を置いた。


「最初はお辛いでしょう……けど、貴方は穏やかな平和主義者です。理想の平和の為に争うくらいなら、妥協した平和を受け入れる方が幸せになれると思うんです……」

「殺されたいか」

「どうかお願いです。一度でいい……数年でいいので……私との平和を試してみてください。お願いします」


 カスララは涙を流し、自分の気持ちを本気で伝える。今にもブちぎれそうなマモンだが、すぐに気が変わったようにため息をし、カスララの肩に手を置いた。


「分かった。試してみよう。だから顔を上げ、儂の手を治せ」


 嘘のように優しく微笑むマモン。それに対し、カスララは疑うように顔を上げて希望に満ちた表情を浮かべた。


「ッ!本当ですか!?」

「本当じゃ。だから早くしてくれ……儂も痛いものは痛いのじゃ」

「はい!!」


 カスララは少女のように喜び、すぐにマモンの手を融合して治す。それを確認したマモンは、泣いているカスララを強く抱き締めて微笑みを続けた。


「マモン様!?」

「すまないのぉ。まさかお前がここまで儂のことを想ってくれていたとは思わんかった。長い間……心配かけた」

「……ッ。いいのですよ。分かってくれれば……」


 カスララは頬を赤くして純粋に微笑む。そして、マモンに甘えるようにその背中をギュッと抱き締めた。


(ずっと……こうしたかった。見てるかベルゼブブ……私はお前に勝ったんだ)


 カスララは色んな感情が渦巻く中、真っ先に優越感に浸った。だが……


「もう心配はかけぬ……永久保証じゃ」


 妙な感覚に苛まれた。一気に力が抜け、頭がクラクラして体が寒くなる。


「え?」


 良く見れば、カスララの体がマモンに吸収されていた。マモンの小さな体にカスララの細い体が徐々に食われているのだ。それを見て、カスララは顔を引きつってマモンのことを見上げた。


「な、なぜ?」

「長い間ご苦労。言ったろう?もう心配は要らぬと」

「ああ、そうだったのですね。私を召喚したのは魔力と体力を補給する為だったのですね」

「そうじゃが……お前もこれで良かったろ?」

「……ええ。嬉しいです……でも……それ以上に悔しいのです」


 カスララは涙を流したまま静かに吸収された。全てを吸収したマモンは、背を曲げてストレッチをして天井を見上げる。そして、第三の目を大きく開いて治った傷や戻った体力に喜びを感じ、四つになった羽根を大きく広げてニヤッと笑う。


「ヌフフッ。いいタイミングじゃな……小童」


 複雑な海中都市の中、マモンは待っていたように見上げる。そこに居るのは、今到着したばかりのカーマとポム吉だ。カーマは体力と魔力が戻ったマモンを見て、歯を強くかみ合わせて怒りを思い出す。


「自分の部下すらも利用するか!このクズ野郎!!」

「勝つ為の手段じゃ。そう見苦しく激怒するな」

「天気魔法!ウェザー.サン!」


 マモンは背後から取り出した剣で太陽を受け止めた。更に、その剣に太陽を纏い、剣を太陽の武器にする。


「何!!」

「融合魔法だ!剣と太陽を融合させて新たな武器にしたんだ!」

「クソッ!あの女の魔法か!」

「ゆくぞ!」


 バリアを踏み台にして飛んだマモンは、先程とは違って近距離で攻めてきた。炎の剣を振り回し、海の中の水すらも簡単に切り裂く。マーメイド姿でそれを避けるカーマだが、マモンはそのスピードに付いてくる。それどころか、たちまちカーマを圧倒し、放たれた魔法を防御魔法で受け止める。


「なっ!」

「雷のバリアになった!バリアとカーマの魔法を融合させたんだ!」


 マモンは手に入れたばかりの融合魔法を最高最適なタイミングで使用する。


「クソッ!無敵かあいつ!」

「雲だ!ゼウスの使う透過を使って攻撃するんだ!あれならバリアを無視して攻撃できる!」

「言われなくても!ウェザー.クラウン」


 カーマは雲を巨大な拳にしてバリアの上からマモンを叩き割る。しかし、その雲はバリアを通り抜け、全く動かなくなってしまう。


「クソッ!融合魔法は透過の天敵だったか!バリアと雲が融合された!」

「そんな!強すぎる!強すぎるよあいつ!」


 カーマが通用する武器はなくなったように見える。普通の攻撃も反射や融合で交わされ、唯一の頼みである透過能力のある雲も融合魔法でいなされる。


「儂の勝ちじゃな」


 カーマの武器が全てマモンによって完封された。更に、マーメイド姿のカーマは動きが鈍くなっており、次第に動けなくなっていた。


「何だ?重いぞ?体が重い!」

「まさかこれは!」

「バカクマは気付いたようだな」


 マモンはニヤニヤと笑い、動きの鈍いカーマをじわじわとなぶり殺しにしていく。血を吐くカーマは、その血が浮上しないで、その場に留まったのを見て気が付いた。


「まさか!海水と俺の体を融合させたのか!」

「そうじゃマヌケ!水は儂に常に触れている!もう逃れられぬぞ!」

「脅威!大したことないと思っていた融合魔法!環境によっては脅威だったのか!」


 動きの鈍いポム吉は、いつもように暴れることも出来ず、ただプルプルと震えて殴られるカーマを見ている。


「もう終いにしようぞ!防御魔法と融合した太陽で焼き殺してやる!」


 赤のバリアはメラメラと燃えており、それがカーマを押しつぶそうとしている。今の状態では逃げることも出来ず、ただ太陽のバリアに挟まれてしまう。


「もう一度言おう!儂の、勝ちじゃ!」


 太陽のバリアに挟まれたカーマは、一瞬にして皮膚が焼けて白い髪がチリチリの焦げ頭になった。更に、その燃えた体から腕が燃え千切れ、神経が燃える感覚に苛まれる。それだというのに、まだ太陽は消えそうにない。


「うあああああ!!」

「カーマ!!」

「ヌフフフッ!フハハハハハ!!」


 焼け焦げた体は真っ黒になり、それがゆっくりと浮上する。ポム吉は融合魔法から逃れるように白い魚に変身し、その魚と同化してカーマを追い掛ける。


「死んじゃダメだカーマ!」

「いいや!死ぬんじゃ!今ここでな!」


 焦るポム吉と違い、マモンはウキウキでポム吉を追い抜かし、真っ黒になったカーマを剣で真っ二つに切り裂く。胴体が真っ二つになったカーマは、息をしないまま海の上に浮かんだ。


「カーマ!」

「ヌハハハ!!」

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