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ミトロジア ~未来の魔王を拾いました~  作者: ビタードール
0部】3章『マリーゴールドにキスを望む』
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第43話【覚醒】

 カーマの魂は沈み込んで、もう二度と復活することはなっただろう。罪悪感に押しつぶされて、内側から朽ちるように死んでいた。


「立ち上がりなさい」


 蹲り、鼻水と涙でぐしゃぐしゃになりながら泣いている。そんなカーマを見下ろし、声を掛ける者が居る。


「俺に構わないでくれ……。もう……俺は生きていけない……」

「そんな。生きているじゃないか」


 その声は聞いたことのある声だった。だが、その口調と雰囲気は少しも知らない。声の主は、そのままカーマの横に座り、その頭を優しく撫で下ろす。


「触るな……ぬぐっ……もうダメだ。誰よりも正しくありたかった……アマノが目指した存在になりたかった……んぐっ、うっ………はぁ」

「……」

「でもダメだった!!俺は結局犯罪者の孫で、その血を引いてる。ッンうッ……愛した人、皆傷つけた……一番自分をさらけ出せたのがクズのアウトリュウスだった!!結局俺もそっち側なんだ!ほっとけば赤ん坊すら殺すクズ野郎なんだぁ!!」

「……」


 声の主は、カーマの苦しみを聞いてその手を止めた。そして、タバコを取り出してそれを深く吐き出して風に黄昏る。


「ッ……」


 だが、すぐに思い出したかのようにカーマの頭を再び撫で下ろす。


「そんなことない……とは言ってやれないけど、そんな君でもいいんじゃないか」

「ッ……」

「家族は?」

「……いない。皆、死んだ」

「血の繋がりだけが家族ではないよ」

「……そう呼んでくれた人はいる」

「幸せなことだ」

「……」

「この先、君がどれだけ罪を犯しても、そう呼んでくれる人はきっと君の帰りを待っている」

「……」

「私だったらそうする。だから、転んでも立ち上がるんだ。これからどれだけ転んでも、どれだけ罪を起こしても、立ち上がるんだ」

「……」

「男の子だろ?いつまでもメソメソしちゃダメだよ」


 その声はふわふわしていて、沈んだ心が少しづつ浮いてくるようだった。カーマはそれにしがみつくように、声の主にしがみついてゆっくりと座り込んむ。


「酷い顔……君も吸うかい?」


 やっと顔を見た。声の主はアマノだった。だが、その雰囲気はカーマの知ってるアマノじゃない。それでも、起き上がったばかりのカーマはそれに寄り添い、タバコを一つ受け取って火を貰う。

 目の前の景色は、いつも見てる海だった。


「アマノ……だよね?」

「……そうだよ。私はアマノよ」

「じゃあ、これは幻覚……俺の夢なんだね」

「そういう訳じゃないんだけどね」

「別にいいよ」

「どうするの?本当に立ち直れない?」

「……どうしたらいい?」

「ジャックを……守ったら?友達でしょ?」

「けど、俺はあいつに……」

「……行きなさい」

「もう少しここに居たい」

「ダメよ。行くのよ」


 アマノは急にカーマを突き放すように、ゆっくり立ち上がって太陽を背にしてカーマを見下ろした。そして、タバコの煙を吐き出してカーマに手を差し伸べる。


「何でだよ……何で……」

「私はもう居ないのよ。貴方に残ってるものって、何?」

「……俺を愛してくれる人だ」

「さぁ、立って。立つのよ」


 カーマはアマノの手を取り、立ち上がる。アマノはそのまま手を引っ張り、カーマを強く抱き締める。


「恥ずかしいよ」

「お別れね」


 その後のことは何も覚えていない。それどころか、その記憶すら徐々に薄れていくようだった。


 * 


 マモンは前見た時と何かが変わったカーマを見て、警戒するように両目を治癒魔法で元に戻した。


(ジャックと一緒に居たガキか……この大嵐はこいつの影響か?一体何があったんじゃ?)


 マモンはタバコを捨て、視線を大きく横に外して蹴りを入れる。だが、カーマはその蹴りを受け止め、マモンを大きく吹き飛ばす。おかげで、マモンの足がカーマに持ってかれる。


「早い。それにこのパワー……どう見ても儂に対抗できる力を身につけてる……本当に何があった?」


 ムクッと起き上がるマモンは、グルっと三個の目玉を回して血を舐める。カーマはまだ表情を変えず、静かに立ってこちらを見てるだけだ。


「カーマ?」

「怪我人の手当てを……俺があいつを連れて離れる」

「……」

「頼みます」


 カーマが動き出した。雷に包まれたまま電光石火の如く走り、宙を舞ってマモンに攻撃を仕掛ける。


「バカめ!」


 二重に防御魔法を展開するマモン。しかし、カーマは雲になってバリアを通り抜け、マモンの首を掴んで地面に引きずる。


「ウェザー.サン!」


 更に、マモンの顔を燃やしながら新界への扉を開いて、その中に入って場所を移動する。おかげで、サタンやクルーニャは一時的にマモンの脅威から逃れてた。


「どうなってるの!」

「あれがカーマ……見た目もだけど、雰囲気がいつもの感じじゃなかった」

「と、とにかく怪我人の手当てを……」


 セーレやリベが怪我人の手当てに回る中、ベルだけは飛んで行ったカーマを眺めて一人違う表情を浮かべる。


「私、カーマの元行く」

「え?どこに行くって?」


 ベルもカーマを追うように新界への扉を開いて消えてしまう。それを見て、セーレもリベも困惑する。


 * 


 カーマがマモンを連れて来た場所は、海に囲まれた捨てられた地がある場所だ。マモンは防御魔法でカーマを振り払い、焼けた顔をを治癒魔法で治して第三の目をグルっと回す。


「貴様、何があった?」

「……何の話だ」

「とぼけるな。前より数段強くなっている」

「さぁ」

「神や悪魔は記憶や感情によって稀に覚醒するとうが、それなのか?」

「……」


 カーマの魔力は以前と大きく変わっていた。透明感のある霧のような白が体から溢れ出ている。それも煙のように静かで、海のように穏やかな魔力だ。それでいて底知れぬものだった。

 顔つきも体つきも変わっているようにすら見える。少年から青年へと成長したように感じる。


「まあいい。さほど興味はない」

「俺もだ」

「防御術式……展開」

「ウェザー.サン」


 マモンが再び防御を展開する。マモンを中心に広がるバリアは、探知機でもある絶対的な領域だ。更に、カーマの巨大で真っ赤な太陽を警戒し、赤、青、黄のバリアを展開した。放たれた太陽は、自動防御の緑バリアを破壊して黄色のバリアに当たる。しかし、黄色の効果は反射だ。太陽はバリアに反射され、カーマの元へ跳ね返ってくる。


「ヌフッ……いい武器だ。だが防御はどうじゃ?」

「要らないな。防御なんて」


 跳ね返った太陽は、カーマの手元でゆっくりと動き、そのままカーマの手で操られて、再びマモンの元へ飛んでくる。


「同じことよ!!」


 しかし、動きが先程と違う。一直線の攻撃ではなく、マモンの防御を避けて横から放たれる。しかし、流石大悪魔。マモンは第三の目でそれを追い、その方向にもう一つ黄色のバリアを張る。だが、カーマはそれに合わせて再び太陽を放つ。


「このガキ!」


 二つの太陽はマモンを翻弄し、その周りで小バエのように動き回る。


「しゃらくさい!!」


 痺れを切らせたマモンは、赤のバリアでそれを吸収して身を防ぐ。しかし、その赤のバリアから雲が通り抜け、その雲がカーマに変身して目の前に来た。


「囮じゃったか」


 マモンは素早くカーマの顔面に肘鉄砲をする。しかし、その顔が雲になって肘が取り込まれ、再び具現化して腕を変な方向へ折り曲げられる。


「ヌアッ!!」

「ウェザー.サン!」

「くっ!」


 諸に太陽を食らったマモンは、腕を斬り落として上空へ避難する。


「どういうことじゃ?あの魔力の乱れ……透過状態はゼウスと違い相当魔力を消費する。圧倒的な魔力量でその弱点を補っているのか?やはりあいつ……覚醒したんじゃ。それも類もない程の究極の覚醒を!」


 マモンは腕を治そうと腕に触れようとするが、すぐに何かを気にしたように傷口を髪の毛で縛って我慢する。そして、カーマから目を離さずに海の上に着地する。


「これ以上魔力を無駄には出来ぬ……体力も削りたくない……奴が生きているか分からんが、イチかバチかじゃ」


 マモンは海に触れて魔力を練り、揺れる海の上に魔法陣を出現させる。


「召喚魔法!ミネルヴァン!」


 海が大きく揺れて蒸気を発する。その煙から現れた魔物はまさにモンスターだ。見た目はフクロウにそっくりだが、そのギョロギョロの目は五個もあり、それがバラバラの位置についている。更には、羽根は六つあって、それが重なるように生えている。耳なのか角なのか分からない三つの触覚はとても荒く、嘴は目が隠れる程大きく鋭い。フクロウの化け物だ。


「生きておったな。儂の醜くかわゆい召喚獣!ヌハッハ!!」


 マモンはその召喚獣ミネルヴァンに乗り、物凄いスピードでカーマの周りを飛び回る。そして、中距離から小さな防御魔法を弾丸のように飛ばし、カーマを少しづつ追い込む。


「なんて軌道力と飛行力……追い掛けようも攻撃し返されるかどうか……」

「防御魔法……回転!」

「くっ!」


 カーマが二つの防御魔法に挟まれた。更に、その防御魔法からは超音波のような音が流れていてカーマに魔法を打たせまいとしている。


「透過の弱点は音じゃ!今まともに魔力を練れぬじゃろ!」

「くそっ!」

「とどめじゃミネルヴァン!奴を食らえ!」


 ミネルヴァンが身動きの取れないカーマに突っ込んだ。しかし、ミネルヴァンは横から飛んできた白いドラゴンに突進され、近くの地に撃墜する。


「もう大丈夫!なぜって?僕が来た!」


 ドラゴンの頭には同化してるポム吉が居る。更に、防御魔法を破壊してカーマをドラゴンの上に乗っける。カーマは優しく微笑み、ポム吉をひと撫でする。


「照れちゃう!」

「何でここに?ジャックは?」

「ジャックは今治療班によって治療を受けてる!ジャックに頼まれて代わりに来たヒーローが僕なんだよね!」

「なるほど。いいタイミングだ」


 ドラゴンに乗るカーマとポム吉は、殺気に気付いて背後を振り向く。そこには、悔しそうにするマモンとミネルヴァンが飛んでおり、同じ体制同じ形で向き合っている。


「カーマとかいったな?もう地獄行きは取り消せぬぞ」

「取り消すつもりはない。だが、先に行くのはお前だ……マモン」


 フクロウの化け物とポム吉のドラゴン、大悪魔マモンと覚醒カーマが再びぶつかり合う。

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