第544話.彼女はあげない
「ここです」
「へぇ、立派な建物だこと」
彩芽さんを引き連れ自宅に帰還する。
エントランスを抜けて自室のある階に上がると鍵を使って玄関扉を開けた。
「ただいまー」
「お邪魔します」
リビングの奥にいる蒼に聞こえるようにそう言うと、忙しなさそうにパタパタと足音を立てながら蒼がやってきた。
「お帰り。それと、いらっしゃいませ〜」
やってきた蒼の服装は当たり前だが自宅なので私服である。クリーム色のニットのセーターに、紺色のタイトなジーンズだ。急に外に出る用事が出来ても、このまま出てなんら問題ないおしゃれ装備一式だ。そして服の前にはエプロンを付けているためか、同時に新妻感も満載となる。
「おぉ、これがさっき写真で見た鏡坂くんの彼女さんかぁ。写真より実物の方が可愛いや」
「あ、ありがとうございます。あ、どうぞ上がってください」
蒼はどうぞどうぞとジェスチャーで促す。俺も彩芽さんが上がったのを見届けてから、後を着いていく形で奥に進んだ。
リビングに入ってソファに座るように促す。俺は普通の椅子に腰掛けて蒼と彩芽さんとのやり取りを眺めることにする。
「あ、どうも、バイト先で鏡坂くんの先輩やらしてもらってる薄原彩芽です」
「あ、ご丁寧にどうも。空宮蒼です」
「蒼ちゃんね。うん、さっきも言ったけどやっぱり可愛い」
まじまじと眺められて蒼は恥ずかしいのか少し照れ照れとしている。ふむ、女の人に見つめられただけであれだけ照れてしまうのかうちの彼女さんは。……しょうがない、ちょっと嫉妬しちゃったから今日の夜は意地悪コースだ。
「ふーむ、私の彼女にしたいくらい可愛いよ。うん、びっくりするくらい可愛い。鏡坂くんには勿体ない」
「え、ちょっと?蒼の事は譲りませんからね?」
「ダメなの?」
「ダメに決まってるでしょ。俺の彼女なんだから」
「と、鏡坂くんは申しておりますが、蒼ちゃんはどう思いますか?」
急なフリに蒼はえ?えっ?と焦ったように俺と彩芽さんの顔を交互に見合せる。
な、なぜ焦るの、と思うがここは信じるしかない。
「わ、私は刻の彼氏なのでっ、譲られるつもりはありません!」
「ちぇ〜、さすがに勝てないかぁ」
彩芽さんは残念そうに笑いながら俺と蒼の顔を見た。
「うん、でもやっぱり幼馴染だからなんだろうね。お互いがお互いをよく知ってるから、その分信頼感のつながりっていうのかな、それが感じられて私の付け入る隙が正直見つけれないよ」
懲りたように彩芽さんはうんうんと頷く。
「まぁ、付け入る隙以前に蒼が彩芽さんに行くのがありえないですけどね」
「死体蹴りは、良くないぞっ」
「し、死体?……まぁなんでもいいや。そうだ、彩芽さんもついでなんで晩ご飯食べますか?ハンバーグなんですけど」
蒼からのその申し出に彩芽さんは目を光らせる。
「いいのかい?私の分まで」
「はい。連絡来てから一応多めに作ったので」
「じゃあお言葉に甘えようかな」
という事で彩芽さんとの晩ご飯まで今日は経験する一日となる。
第544話終わりましたね。彩芽さんは決してね、レズではありませんのでご了承ください。ただ彼女にしてもいいくらい蒼が可愛いという話です。
さてと次回は、9日です。お楽しみに!
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