第543話.彼女さんと仲良く
バイト先の映画館があるブルメールから歩いて少し離れた頃、彩芽さんが俺に話しかけてきた。
「鏡坂くんはさ、来年大学一回生なんだよね」
「そうですね」
「どこの大学に進学するのか聞いてもいい?」
「構いませんけど」
そう言ってどこのなんという大学に進学するのかを伝える。
「私立の文系かぁ。確かに、文系っぽいよね」
「褒め言葉として捉えても?」
「うん、褒め言葉」
「そうですか」
本当にそれ褒め言葉?と思わないでもないが、そこは気にしないことにする。気にしたら負けだし、何より悲しくなるからな。
「それで彩芽さんはどんな大学に通ってるんですか?」
「私?私は美大だよ」
「美大ですか」
「そう、美大。映画の作り方とかそんなところを学んでるよ」
「映画ですか」
「そ、映画。昔から好きだからさ、だからバイト先もあそこなわけだし」
納得するしかない理由を彩芽さんから聞かされる。
確かに彩芽さんが美大のキャンパス内で歩いていても全く違和感は無いし、というかむしろそういった環境にいるべき人のような気さえする。
「今も簡単な短編映画を撮ってるんだよ」
「短編映画ですか。どんな内容なんです?」
「シンプルな恋愛ものだよ。本当は高校とかを舞台にしたかったけど、撮影場所がないからさ、大学生の恋愛ものにシフトチェンジしたり色々してる」
話を聞く感じ、やはり映画というのは一朝一夕にできるものではないのだなと思う。けれど、それでもこの人ならかなりの大作を作りあげそうだなとも思ってしまうのだ。まだたったの数回しか話したことの無い間柄だが。
「まぁ、私の話は正直どうでもいいや。それよりも鏡坂くんはなんで高校生なのにバイト始めたの?」
「理由ですか」
話してもいいものか、と思わないでもないが、彩芽さんは高校の関係者では無いので話しても問題は無いかと判断することにする。
「俺、実家には住んでないんですよ」
「一人暮らし?」
「いや、彼女と同棲です」
「か、彼女と同棲?高校生で?」
「まぁ、それには色々理由があるんですけど、それはまたの機会に。まぁ、親元を離れて暮らしてるので、仕送りに頼りすぎないようにしようという話に彼女となり、こうしてバイトを始めたわけです」
「なるほどねぇ」
ふーん、と言いながら彩芽さんはこちらをまじまじと眺めてくる。なんだか照れちゃう!なんてふざけつつなぜここまで見られているのか、その理由は分からない。
「彼女さん、可愛い?」
「可愛いですけど」
「写真ある?」
「あ、ありますけど……見ます?」
「見る」
俺はスマホの中にある写真フォルダの中から、この前の文化祭で撮った写真を見せることにした。
「このポニーテールの子です」
「わ、めっちゃ可愛い」
「ですよね。俺もそう思います」
「この子との出会いは?」
「元々幼馴染だったんでそこからですね」
「……こんな美少女と幼馴染って、きみすごい豪運の持ち主だね。正直女の私も羨ましいよ」
感嘆の声を漏らしながら、彩芽さんはしばらくの間食い入るようにして俺のスマホを眺める。
「私に彼女さん紹介してくれない?」
「え?なんでですか」
「仲良くなりたいからさ。こんな可愛い子、他人のままで放っておけないよ。仲良くならなきゃ損損」
なんだかいつもよりもテンションが高いように映るのは気のせいではないはず。
俺はどうしたものかと思いつつ、ひとまず家にいる蒼に連絡していいか聞くことにした。
メッセージを送るとものの1分もせずに返信があり、どうせなら一緒に連れて帰っておいでとのこと。うちの彼女さん、心広すぎませんかねと思いながらその事について彩芽さんに話す。
「で、どうします?」
「もちろん今から行くよ」
即決即答をしてもらい、そのまま俺は彩芽さんを案内することとなった。
なんだか今日1日は変なことがよく起きる。
第543話終わりましたね。彩芽さんはどうやら可愛い女の子に目がないタイプの女の子のようですね。女の子同士のスキンシップも見ていていいものがあります。これが百合でしょうか。
さてと次回は、7日です。お楽しみに!
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