リスタート
「ほんっとにすみませんでしタァ!」
朝の光が差し込む玄関で、俺たち3人は深々と頭を下げていた。
首は曲げず腰から一直線に斜め60度の角度で敬礼した俺たちは、横から見ればまさに折れたマッチのようだっただろう。
しっかりと閉じたまぶたの裏に、昨日の俺たちが映る。
おい!調子に乗るな俺!ばかやめろ!なにが「もう一杯」だ!
酒を持ってくるな樹!しかも乾杯までするな!ああ、もうそのサル顔を殴りたい。
やめろ片桐!お前は酒を飲むな!あ、俺が飲ましたんだった・・・え?コミュ障?
酔いはとっくに醒めたので、昨日のことが鮮明に思い出せてしまう。
ああ、時間を巻き戻してぇ・・・
チラリと片桐の方を見る。
意外なことに片桐も俺の方を見ていたため目が合い、急いで視線を移す。
あの不祥事のあと、そのまま眠ってしまった片桐の処理に俺たちが困っていたところを、またしてもマイさんたちに助けてもらったのだ。
「ほんとに・・・助けてもらっておいてこんな・・・」
「まだ気にしてたのカ。」
「え?」
あまりに意外な返事にびっくりして、思わず顔をあげると同時に素っ頓狂な声が喉から漏れる。
「そんなことよリ、気をつけてネ。外はいい人ばかりじゃないじゃないかラ。」
そんなことじゃないよ。
俺はただ申し訳なくて・・・
「いや、でも・・・」
「ン?なニ?」
まるで俺がおかしなことを言ったように、まっすぐな目でマイさんは俺を見つめている。
「いや・・・その、ありがとうございました・・・」
「ハハ、ダイナくんは最後まで水臭いネ。」
「ちょっとマイさん、その名前なんで知ってるんです?」
横で樹がニヤニヤしている。
「お前まさか・・・」
「え?菊池くんの名前ってダイナって読むの?」
しまった、と思った頃にはもう遅く、片桐がものすごく珍しそうに俺の方を見る。
「じゃあ俺たち行きます!あざした!おい、行くぞウルトラマン。」
そう言って樹は思いっきり昨日直したドアを開けて外に走り出した。
開け放たれたドアから溢れ出す朝日が眩しくて、俺たちは目を細めた。
車が動き出し、お見送りのマイさんたちが小さくなっていく。
突然マイさんが叫んだ。
「忘れ物はないカー?!」
俺は笑いながら車から身を乗り出し、
「あるわけないですよ、こんな世界なんだから!」
「・・・最後まで親切な人たちだったな。」
マイさんたちの家がすっかり見えなくなってから、俺はポツリと呟いた。
「うーん・・・」
樹は気のない返事をする。
「どしたの?」
「なあ千夏、もうちょっとスピード出そうぜ。」
「嫌。」
「えー?なんで。」
「なんで私が運転変わってるのか分かってる?」
「千夏も運転したかったんだろ?」
「はぁ?」
「あ!」
思わず出てしまった短い叫びに驚いた二人が俺を見る。
「なに?」
「線路だ・・・」
前方には、地平線の向こうまで延々と続く一本の線路が、大きく腕を広げるように立ちはだかっていた。
はい、週一更新遅れました。




