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雨はいつか止んで、優しさが世界を包む  作者: 佐田やすひ
第3章
32/34

事故

東西に伸びる線路は、北に涼みに行こうとしていた俺たちには邪魔なものでしかなかった。

「これくらいなら大丈夫だよね・・・?」

片桐がゆっくりとアクセルを踏み、車は線路へ前進する。

前輪が線路に乗っかり、車体が上がった。

・・・と思ったらいきなり車体はガリガリという嫌な音とともに沈み、急いで片桐はブレーキを踏み込むことになった。

車の底が線路に擦れているのだ。

「横着するから・・・」

俺がつい愚痴を漏らすと、樹が「ンなこと言ってもしょうがないだろ、今更。」とフォローする。

「千夏の横着なのは元からなんだぞ。」

なんと自分で自分のフォローを台無しにしやがった。

「千夏ー、バックバックー。」

片桐が溜息まじりに、「それより一旦車消した方が早いでしょ。」

た、確かに・・・

「あ、本当だ!」!?

俺の全身に言いようのない悪寒が走る。

「待て樹!このまま消すな!」

・・・という警告が俺の喉から出る前に車は消え、三人仲良く線路の上に尻もちをつく羽目になった。

「痛ったー!」

「えっ?あっ、そっか!」

「・・・このアホ・・・」

「プァン・・・」

「おい樹!普通降りてから車消すだろ!!アホ!」

「はは、めんごめんご。」

「お前っ・・・この前もチャリで2ケツしてた時に先に降りただろ!お前が前なのに!」

「ふふ、笑かすなよ・・・」

「プァン」

「おまっ、ちょっ、こっち来い。」

「ねぇ、二人ともやばいよ。」

「そのサル顔が腹立つんだよ!!!」

「プァーーーン!!!」

「ああ゛!?」


俺たちの目前には、電車が迫っていた。














「いやー、1メートルもなかったねぇ。よく避けたねー」

運転席から、電車の運転手が「ハハハ!」と軽く笑いながら言う。


「いやー、50センチもありませんしたよ。」

樹がジェットコースターにでも乗った後のように興奮しながら、座席から言う。


「私なんて10センチもなかったわよ。」

対して片桐はお化け屋敷に入った後みたいだ。


「ははっ俺なんて3メートルは飛びましたよ。」

俺は熊に襲われた後みたいだ。

このアメリカンな運転手が、骨折するかしないかくらいのスピードギリギリで俺を跳ね飛ばしてくれたため、無事俺は利き手をぶら下げることになった。

「いい腕してますね、運転手さん。」

尻の痛みも手伝い、俺の不機嫌は絶好調を迎えていた。

「バスコ=ダ=ガマでいーよ。」

「はぁ・・・?」

「エッ?ホラッあの大こーかい時代ノ」

「ああ、ギャグだったんですか。はは、面白い面白い、そのまま海に還ってください。」

「ハハハ!ジョークだよ!アメリカンジョークだよ!ハハハ!・・・・・おかしーな・・・にっぽんじんにはウケルってきーてたのに・・・」

「で?ほんとの名前は?もっとおもしろいんですよね。」

「エ?・・・ジョニー=デップ・・・?」


・・・


「はは!おもしろいおもしろいー!この状況でおもしろくないこと言える精神がおもしろーい!」

「・・・スンマセン・・・・・・・けーてき鳴らしたのに・・・」

「じ、ジョニーさんは何してたんですか?線路なんか引いて!」

ギスギスした雰囲気が耐えられなかったのであろう片桐がなんとか切り出す。

「アア!ワタシは線路をひーて街と街をつないでたんです!」

「わぁ!すごく面白そうなこと考えるんですね!」

「ギャグセンスとは大違いだ・・・」

「・・・や、ほんとに素敵です!・・・ちなみになんで線路を引こうと思ったんですか?」

「オトコノロマン!」

「でたでたそう言うこと言う奴・・・ほんとにかっこいいとか思ってんのかなー」

「あ、今ってどれくらい線路引けたんですか?」

「ハハ!実は引き始めたはいーんだけど、どの方向に街があるか分からないから、困ってたところなんですよ!」

「俺たちに出会わなかったらどうするつもりだったんだ・・・砂漠で干からびろ・・・」

「こ、ここからちょうど西の方向に街があります!あ、それと、途中に家が一軒だけ立ってるから、そこにも線路を引いてあげてください。」

「エー?!一軒だけ立ってるんですか?!」

「いいから轢け!」

「な、何をですかー?」


こうして、マイさんたちの家に線路を引くことが決まった以外特に意義のない会話が続き、気がつけばジョニーの街についていた。


「おい寝んな樹、起きろ。」


「おかしーな・・・にっぽんじんはツッコミがじょーずだときーていたのに・・・私の名前にツッコんでくれない。」

間に合った。余裕。

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