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雨はいつか止んで、優しさが世界を包む  作者: 佐田やすひ
第2章
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逃避3

なにせ400人近くが中央玄関から、蛇口からあふれ出す水のごとく流れ出すのだから、その混雑と言ったら、まるで養鶏場の鶏にでもなった気分だ。

ギュウギュウと人に揉まれながら、俺は今朝のことを思い出した。





ジリジリと蝉の声がうるさい。


7月21日、終業式の日、ガンガンと照りつける太陽の中、俺はいつもの通り学校に向かっていた。

ついこないだ始業式があったと思えば、いつの間にかもう夏休みだ。

あれから何があっただろう。

そういえば、受けたい企業の求人票が来てたっけ。

でももう、どうでもいいや。

もう正直、どこかに受かればそれでいいや、と、めんどくさくて投げやりになっていた。

先生たちは毎日のようにどこかの求人票を持って来ては、これがどうだのと説明した。

はっきり言って、どうでもよかった。

俺はこのまま、多分一生、そこらへんの石ころみたいな有象無象のままでいるんだろう。


さて、やっとのことで校門へとたどり着いた(吐き気がする)。

押し固まった有象無象どもの肉塊の中から何とか這い出し、学校の敷地から出た。

その時だった。

自分の足が何かを蹴り飛ばしたのを感じた。

見ると、それは押し合いへし合いでポケットから飛び出してしまったスマホだった。

とたんに汗は止み、俺は不覚にもその場に凍り付いてしまった。


この学校ではスマホの携帯が禁止されているのだ。


次の瞬間、俺は我を取り戻し、スマホに手を伸ばした。

すぐにスマホは拾い上げられた。

俺に、ではなく、生活指導の、あのゴリラに、だ。






反省文


何を反省すればいいんだろう。

校則を破ってスマホを持って来たこと?

そんなこと誰もがやってる。

じゃあ、見つかったお前が悪い。

うるさい。俺だって見つかりたくて見つかった訳じゃないさ。ただ、ちょっと油断しただけで・・・

こんな低レベルな話はやめよう。

何だと!?

今、大事なのは、自分の、自分だけの貴重な時間が他人に侵害されていることだ。

違う・・・俺はわるくない・・・

考えてもみろ。お前は他に、もっとやるべきことが、行くべき場所があるはずだ。

なんで俺だけ・・・なんでこんなところに閉じ込められてるんだ・・・

周りを見ろ。この部屋には何にもない。ここにお前を変えられるものは何もないんだ。

そうだ。みんなは俺に同情しているはずだ。哀れに思ってこの部屋の前にいるはずだ。


さあ、この部屋から飛び出せ。外にはお前の旅が待っている。




それは幻聴だったのかもしれない。

それとも、本当に誰かが扉の前でささやいたのか。

とにかくその声は、確かに俺を罵った。

「あいつ、この部屋ん中にいるんだって。どうやったら見つかるんだろうな。みんなうまくかくしてるのに。」

くくく、と小気味のよさそうな軽い笑い声をあげながら、その声は去っていった。

















「うわぁぁあああああああああぁああぁぁぁぁぁあぁぁっぁぁぁぁああ!!!」


俺は発狂した。

生活指導室から飛び出して(後ろから誰かが何かを喚きながら追いかけてくる。)、学校の前の駐輪場まで走り、自転車に飛び乗って逃げた。


なぜか爽快だった。













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