その23 モノづくりの人
「あ〜あ、私、モノづくりの人なのに…このプロジェクトはやっぱりなんか違う気がするわ」
中島マナの声だ。
僕は中島マナを見ない。
“モノづくりの人”?何だそりゃ。
どんな人だよ、それ。
確かにこの会社では、ソフトウエアというモノを作ってはいるけど、“モノづくりを仕事にしている人”が正しい言い方だろう?
あぁ……なるほどね。
そうやって、自分で境界線を引いているのか。
「ここまでしかしやりませんから」っていう保険みたいなものなのかな。
“モノづくりの人”なんていう滑稽なレッテルを自分自身に貼り付けて、”モノづくり以外は知りませんから”ってわけだ。
それ以外のことは全部人任せってわけだ。
「イギリスの数学者アラン・チューリングが1950年に提唱した思考実験ですよ、ご存じですよね」
コイツ、まだしゃべってやがる。
井上ヒロミの甲高い声が無性にウザイ。
僕は無視することにした。
川口ミノリが、井上ヒロミを怪訝な表情で見ている。
彼女も井上ヒロミがウザイんだ。
うん、やっぱり可愛いかも。
「生成AIの登場で、ほぼ無意味になってしまいましたよね、アレ。だって生成AIは、機械っぽくも人間っぽくも応答できますもんね」
「あ、そんなユニークな発想、ぼくだけかも」
そう言って井上ヒロミはクククッと笑ったけど、忙しく指でスマホをタップするスピードはそのままだ。
「そう言えば、アラン・チューリングはゲ…」
「あなた、いい加減にして下さいよ。皆の迷惑でしょう!」
橋下ジュンヤだ。
「あ、こりゃ失礼」
ふぅ〜ん、なるほどねぇ。
何だか久しぶりに、ムカついてきちゃったみたい。
井上ヒロミ……中島マナ……。
……潰しちゃおうかなーー




