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ショートショート連載 僕とAIと信号機と  作者: あみれん


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22/26

その22 予定調和

「私ね、AIを予定調和の世界に引きずり込んで、AIに誘導尋問することができるんです」


忙しくスマホを叩きながら、井上ヒロミが甲高い声を上げた。


誰に話しかけているんだろう……

僕に……?

独り言……か?


「そうすると、どうなると思います?」


僕は右隣りの井上ヒロミを見た。


「あの、僕に話しかけてます?」


「とも言えますね。で、どうなると思います?」


「自分の思った通りのレスをAIに返させることができる……じゃないでしょうか」


「半分正解です」


予定調和に誘導尋問……

他の半分は何だ?


……いや、待てよ。

僕に考えさせている時点で、もう井上ヒロミのペースじゃないか。

僕を出し抜くつもりか?


「コレ、単純な話なんですよ。例えば……」


井上ヒロミは、僕を見ていない。


「AIに、『これから私を不愉快にするようなことを一切言わないように』と伝えるとします。すると、どうなると思いますか?」


「AIは、ユーザーが不愉快になるようなレスを避けるようになる……ですかね」


「それも半分ですね」


「正確には違うんですよ。不愉快なことを言わないAIになるんじゃないんです」

「あなたが、不愉快になる情報に出会えない世界になるんです」

「この違い、分かります?」


僕は少し不愉快になって答えた。


「それ、AI自身に聞けば分かることでしょう?」


井上ヒロミは、僕の言葉など聞こえなかったかのように続けた。


「そういうふうに設計されているんですよ、現在の生成AIは。そこに少なくない金をかけているんです」


また金の話か、ま、いいけど。


「例えば日本語。日本語は他言語に比べて様々な…なんて言うか、Politeness Levelsを持つ言語ですよね。生成AIにそれら…つまり、Politeness Levels を使い熟させる場合、当然、その対応にかかるコストは少なくありません。その点、英語は楽ですよね」


「あ、チューリング・テストをご存知ですよね」


井上ヒロミの、スマホをタップする指は止まっていない。

僕の指は止まっていた……

……なんだろう……この人…この感じ……

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