その20 The Prompting Game of Thrones?
「ちょっと提案があります」
それまで無言でサムアップばかりしていた秦さんだ。
皆が一斉に秦さんに視線を集中させた。
「そのゲーム、我が社のAIを使いましょう。同一AI・個別セッション・共有記憶あり、という設定にして、AIにゲームの判定者になってもらいます」
「あのぉ…」
川口ミノリだ。
秦さんはニッコリと川口ミノリに視線を向けた。
「あの、すみません、私、意味がよくわかっていません。私達…、いえ、私は何をすれば良いのでしょうか」
変な意味じゃなくて、僕は川口ミノリに好意を感じ初めていた。
分からないことを素直に聞く、そしてポイントを外さずに、的確に理解している。
人のマウントばかり取りたがる誰かさんとは大違いだ。
秦さんはゆっくり話し出した。
「全員に同じAIと会話していただきます。ただし、一人ひとり個別のセッションです。他の人とのやり取りは見えません」
「ただしAIだけは、全員との会話を記憶しています」
川口ミノリは、まだ飲み込めていないような表情をしている。
分からないことを隠そうとしない。
へぇ〜、案外、可愛いかも。
「まず川口さんは、ご自身の考えと、その根拠だけをAIへ伝えて下さい」
「その後は、何も話さないで下さい」
「皆さんはAIとの対話だけで、川口さんの結論と根拠を突き止めていただきます」
「制限時間は……そうだな、15分にしましょう。最終的に、そのAIが皆さんのプロンプティング・スキルを評価します。レビュー付きで」
「これから私がAIに共有セッションを立ち上げます。そして、AIにジャッジとしての役割を伝えます。例えば、AIは正解を保持します。ただし、正解を直接開示しないよう指示します」
「もし、正解を提示しろ、なんていうカンニング行為をしたら、即時に失格になりますよ」
川口ミノリの表情も変わってきた。
うん、可愛いかも。
「なお」
全員が顔を上げる。
「AIは、皆さんのすべての質問も評価します」
一瞬、場の空気が止まった。
「答えだけではありませんよ」
「AIとの対話そのものが、採点対象です」
その時だった。
秦さんの笑顔だけは、変わらなかった。
でも、目だけは笑っていなかったんだ。




