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ショートショート連載 僕とAIと信号機と  作者: あみれん


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14/26

その14 ブーメラン

「秦さんがこの場で仰った”生産性”の定義ですが、それは”情報伝達の効率性”と等しいのです」


川口ミノリが言葉を挟む。


「それって…」


僕は構わず続ける。


「組織に階層があれば、情報は階層を経由します。メンバーからリーダーへ、リーダーからマネージャーへ。逆方向も同じです。そこには必ず時間が発生します」


「三角形をイメージして下さい。頂点Aをマネージャー、底辺を結ぶ二点のB、Cを我々のようなただのメンバーとします。もうお分かりですよね。情報伝達ルートが幾何学の問題に置き換えられます」


「まあ、ここまでは気付いた方もいらっしゃるでしょう」


僕が中島マナを見ると、彼女は僕から視線を外した。

その横で、川口ミノリが頷いている。

他のメンバーは無反応だ。

秦さんは、相変わらずニコニコ。


「いくら効率的な情報伝達ルートを確保しても、それを効率的に運用しなければ意味がありません」


「つまり、メンバー間の情報格差を無くす、これがチーム全体の生産性を上げる本丸です」


「得た情報を自身の既得権益のように隠匿してはならないのです。必ずメンバー全員に共有する必要があります。こればかりは、システムや制度で制御しきれません。我々自身の姿勢にかかっているのです」


「チームワークとは、仲良しクラブではありません。一軍、二軍や、派閥、同調圧力もあってはなりません。このプロジェクトで唯一、特権的なメンバーは、秦さんだけです」


「秦さんは、このプロジェクトの全責任を負う立場にあります。だから、我々は秦さんの特権を許容できるのです」


「このプロジェクトメンバーのファシリテイターは秦さんだけです。後は、効率的なシステムと運用がファシリテイトしていくのです」


僕はもう一度、中島マナを見た。

彼女はどこか遠くを見ていた。


僕は思った。

ここで彼女に「ちょっと、聞いてます?!」と言ったら面白いかなぁ。

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