その11 色イロ
「あの…井上さん」
声を発したのは、川口ミノリだ。
四人の女性メンバーのうちの一人。
「はい?」
井上ヒロミは、相変わらず口をモグモグしながら川口ミノリを見た。
「あの、どういうことなんでしょうか。その…生産性の定義について」
井上ヒロミは食べ物を咀嚼し終わるのを待って言った。
「うーん、どうでしょう、飲み食いしながら議論してみませんか?」
秦さんは顔を上げる。
微笑んでいるようだ。
井上ヒロミは、前菜を平らげ、麦茶を飲んだ。
僕は思った。
へぇ〜、前菜からちゃんと食べるんだ。
僕は好きな物から食べるけどね。
川口ミノリが言う。
「議論って…わたし全然ピンと来ていないから、何から話していいかわからないんですけど」
「まず、秦さんが言った”前振り”から振り返ってみたら?」
中島マナだ。
二人目の女性メンバー。
秦さんは更にニコニコしている。
「”前振り”って?」
「はぁ? だから、それが何かを考えるんでしょ。ここで秦さんが言ったこと思い出してみなさいよ」
お? いきなりバチバチですか?
「ここのメンバー間に序列は無いフラットな組織。それと、秦さんは、ご自身をファシリテイターとして位置付けている、ということです」
橋本ジュンヤだ。
二番目の男性メンバー。
僕の中で、モノクロだった彼らに、少しずつ色がついていく。
秦さんは、ずっとニコニコしてその様子を見ている。
井上ヒロミは、オレンジジュースのサーバーの前に立っている。
川口ミノリは眉間に皺を寄せていて、中島マナは野菜料理を口にほうばっている。
橋本ジュンヤは川口ミノリを見ていた。
そして僕は…あの信号機のことを考えていたんだ。




