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2-3

「団長か...。」



あれ?

騎士ではない私が、団長と呼ぶのはおかしかったかしら?


目の前でヴェイル殿下が、苦虫を噛み潰したような何とも言えない表情をしている。




コンコン


変な空気になった私達の元へ、ノックの音が届いた。



「失礼します、団長。経理部から申請書が届きました。ご確認を。」

ニルセン様が大量の書類を抱えて、執務室に入ってきた。目が合った彼は、なぜか嬉しそうに笑っている。



「バレリー様は、今日からでしたか。そのバッジ、よくお似合いです。これからよろしくお願いしますね。」


「あ、ありがとうございます、ニルセン様。こちらこそ、よろしくお願いします。」




サウザリンド王宮の使用人は、上級と下級に分かれていて、上級使用人には、服装の規定がなかった。そのため、所属が分かるバッジを着ける決まりがある。

私は、ブラウスの胸元に、ヴェイル殿下直属を表す黒の獅子に金のリボンが付いたバッジを着けていた。



「ゴホン、そ、その通りだな。貴女は、金色がよく似合う、...と思う。ああ、ニルセン、俺は少し出てくるから、ステラに色々教えてやってくれ!くれぐれも無理はさせるなよ!」

ヴェイル殿下は、慌てて立ち上がると、私の頭を撫でてから、執務室を出て行った。



私の頭を撫でる癖が、殿下にも移ったのかしら?

恥ずかしいから少し困る...。


私は、赤い顔を隠すために、頭を下に傾けた。




「バレリー様が本格的に騎士団で働くのは、終幕の夜会が終わってからでしたね?」


「はい。今は、アデライード様のお側と、獣人騎士団を行き来することになります。ご迷惑をおかけします。」




もうすぐ行われる終幕の夜会を経て、今回の首脳会議は終了となる。その後、順次、各国の使節団が帰路に就くのだ。


主人が帰国するまでの間、私は、主人の侍女とヴェイル殿下の補佐を兼任しなければならない。

忙しいけど、頑張らないと。


そう言えば、今回の終幕の夜会は、例年に比べて豪華になるらしい。竜を倒した騎士達を大々的に讃えるのだとか。

一時帰国からこちらに戻ってきた主人の荷物の中にも、夜会用にそれはそれは美しいドレスが入っていた。普段から男装で過ごしている主人を着飾れる機会はあまりない。

今からとても楽しみ。




「夜会には参加されるのですか?」


「私が、ですか?」


「はい。団長は、夜会に参加しますから、バレリー様もその日一日、騎士団の仕事はないはずです。」


「私は...、その、侍女の仕事もありますし、参加しないかと。」


「そうですか...。」


何だか少し空気が重くなってしまった。

私は、話題をガラリと変える。



「ニルセン様、私のことは、呼び捨てでお呼び下さい。臨時ですが、ニルセン様の部下になるわけですし。」


「うーん、この呼び方の方が、後々いい気がするのですが...。では、「バレリーさん」で、どうでしょう?「ステラさん」だと、団長が怒りそうなので。」


「団長が、怒る?」

ニルセン様の言葉に、私は首を傾げる。

ニルセン様は、そんな私を笑顔で見ていた。



「フフ、そうです、バレリーさん!この際、団長の事、名前で呼んでみませんか?」


「え!?」


「そちらの方がいいと思いますよ?」



それは、騎士団のルールなのかしら?

さっき、私が「団長」と呼んだら、殿下も変な反応だったし...。



私は、ヴェイル殿下が戻ってくるまで、悶々としながら考え続けた。





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