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午後のキツイ日差しが少し和らいだ頃、獣人騎士団の執務室で、私はヴェイル殿下と向き合って座っていた。その距離は、お互いの膝が付くほど近い。
少し気まずい私を他所に、ヴェイル殿下は、真っ直ぐにその視線をこちらへ向けて来た。
まるで私の様子を、具に観察するかのように。
これから私は毎日2回、ヴェイル殿下から直接魔力を分けてもらう。
どうやら私の体には、ヴェイル殿下の魔力がピッタリと合うらしく、このまま魔力を定着させられる可能性があるらしい。そうなれば、魔力無しの私の体にも自然と魔力を生み出す力が生まれるのだとか。
そうなれば私も、普通の女の子のように生きられる日が来るのだろうか。
誰にも迷惑をかけずに生きられる日が。
私は、この希望が形になることを願って、心地良い魔力に身を委ねた。
「大丈夫か、ステラ?」
「はい。体がポカポカして、手足がとても軽いです。残念ながら、それ以外に変化は感じられませんが...。」
「そうか。それはあまり気負い過ぎずに、ゆっくり試していこう。しかし、体調が少しでも変化したら、すぐに言うんだぞ。」
「はい。あ、あの殿下!ありがとうございます。私の治療に、ご協力頂いて。」
「気にするな。それより、何か不足している物はないか?部屋もあのまま客室を使っていても良かったんだが...。」
「い、いえ、あんな素敵なお部屋、私にはもったいないです!今借りているお部屋でも、十分過ぎるぐらいで...。」
サウザリンドの王宮で療養することが決まり、早速、私の部屋をどうするか相談された。
もうすぐサージェントの使節団は、定例首脳会議を終え、帰国することになるので、私達が使っていた離宮は閉鎖されてしまうのだ。
ゼイン先生は、所持している貴重な薬品の保護のため、王宮に部屋を借りることにしたらしい。
私も、客間を使っていいと言われたけど、さすがに、あんな豪華な部屋で過ごすのは無理だ。
だから、私が借りたのは、王宮に勤める侍女達の寮。王宮の裏にある使用人寮は、普段ヴェイル殿下がいる騎士団棟にも近く、とても都合が良かった。
私も、騎士団で働くことになったしね。
ヴェイル殿下に、迷惑をかけている分頑張らないと。
療養と言っても、体調面に問題のない私は、魔力を貰う時以外に、特にする事がない。そこで、私はヴェイル殿下の補佐として、騎士団で働かせてもらうことにしたのだ。
「色々とご配慮頂き、ありがとうございます。これからよろしくお願いします、団長。」
私は、今後の決意を込めて、ゆっくりとヴェイル殿下に頭を下げた。




