これ絶対押し付けたよね?
最近サブタイを考える方が難しいです。
宿に帰る途中鍛冶屋により余分のダガーを全て売り払った。
本数は29本あった。一本はホロが持っている。
鍛冶屋のドワーフのおっさんも「これだけありゃしばらく鉄はいらねえかもな」と満足そうな顔をしていた。
ダガーは入手するのが簡単なせいか一本あたり100ゼニしか貰えなかったが29本もあるのでそこそこな収入になった。
荷物が減って身軽になったので足早に宿に帰る。
『巨人の腰掛け』に到着した。
何度見ても変な名前だとタクヤは思い宿の中に入る。ホロも同じことを思ったのか「変わった名前ですね……」と呟いていた。
カウンターでは宿屋の主人ベリックが大きな台帳を広げ仕事をしていた。ベリックはタクヤに気づくと笑顔で出迎えてくれた。
「お帰りなさいませタクヤ様。本日からはお二人様ですか?」
「ああそうだ。急で悪いけど二人部屋にしてくれないかな?荷物は俺が運んでおく」
ベリックは台帳をペラペラめくり空き部屋を確認する。
「ふうむ……申し訳ありませんが本日空いている二人部屋はございません。明日には一部屋開くのですが本日のみ一人部屋でもよろしいでしょうか?」
ベリックは心底申し訳なさそうに聞いてくる。元々迷惑をかけているのはこっちだから何も不満はない。
「俺は問題ない、ホロはどうだ?嫌なら別の宿を探すしかないけど……」
「私は大丈夫です、タクヤ様と一緒ならどこでだって寝られます!」
「そ、そうか…?なら一人部屋で頼む。あ、今日の夕飯は日替わりメニューじゃなくて豪勢なものでいいかな?報酬は弾む」
ベリックは何も問題ないという感じで頷く。
「もちろん大丈夫でございます。ですが準備に時間がかかるのでお食事はお風呂の後でよろしいでしょうか?」
「オーケー任せる、金は2000ゼニあればいいか?」
タクヤは先ほどのダガーを売却して得た金をカウンターの上に置く。
「わかりました、では料理が出来上がるまでごゆるりとおまちください」
ベリックはそれだけ言うと部屋の鍵をタクヤに渡し奥に引っ込んでいった。
部屋の鍵を開け鎧を脱いで椅子に座ってくつろぐ。ホロはどうしたらいいのかわからないのか立ったままタクヤを見ていた。
タクヤが「先にくつろいでいいぞ〜」と言うと喜色満面の顔を浮かべベッドにダイブし羽毛の感触を味わうと泣きながら「こんな気持ちのいいベッド初めてですぅ〜」と感想を言った。
「少し休憩したら風呂行きなよー」と言いながら部屋に置かれているブドウのジュースをコップに注いで飲むタクヤ。
「お風呂……ですか?」
「ん?入ったことないか?気持ちいいぞ。宿の人に入り方教えてもらえば大丈夫だ」
「は、はい!頑張ります」
何を頑張るんだかと少し吹き出したタクヤは立ち上がり先に部屋を出て言った。
「先に風呂入ってくる。風呂は宿の入り口を入って右にあるからな」
それだけ言うとタクヤはさっさと行ってしまった。
「あっ……」と少し寂しそうな声をだして独り言を呟くホロ。
「私なんかがいて本当にいいのかな……タクヤ様に見捨てられたら嫌だなぁ……」
ホロは実は不安だった。ホロは戦闘や家事などもこなせるがここは宿で家事をやる必要もないし戦闘も正直ついていける気がしないのだ。今できることといえば精々情事くらいのものだ。
タクヤに抱かれるならいいと思ってはいるがどうしても不安な心は晴れない。
タクヤはもちろんホロを全力で鍛え上げるつもりだが何も聞かされていないホロが不安に思うのも無理はない。
そうやって悩んでいるうちにタクヤが戻ってきた。
「風呂最高〜」と覇気を感じさせないダメオヤジのようなことを言いながらソファに座って今度はミルクを飲み始めた。
「まだ風呂入ってなかったのか?場所わからなかったかな、連れてってやるよ」
タクヤはホロの手を引き少し強引に歩きだした。
ホロは急に手を握られてドキッとしながらもそのまま引っ張られて風呂に入らされた。
その後は宮廷料理のようなご馳走を食べて涙を流すホロと生温かい目で見るタクヤがいた。
夕飯を食べて眠くなってきた二人はさっさとベッドに入った。
「あ〜ホロさん?狭く……ないよな?」
「は!はいぃ大丈夫ですぅー!ど、どんとこいです!!」
ホロはガクガク緊張し夜の営みがくるのを待っていたが逆に年齢=彼女いない歴のタクヤは女の子と一緒のベッドに入っている?!やばいよやばいよー!とか全く別のことを考えており夜の営みなどという考えすら浮かんでいなかった。
それから一時間たち眠気に負けてタクヤは先に寝てしまった。疲れているのかグウグウとイビキを立てて爆睡するタクヤの隣でホロは涙目で「魅力ないのかなあ……」と呟いていた。
朝になり目を覚ましたタクヤは寝間着をさっと着替え顔を洗うために洗面所に行くとすでに準備を終えたホロがソファに座って待っていた。
「あ、おはようございますタクヤ様!」
「ああおはよう、今日から俺の相棒になれるように訓練してもらうけど大丈夫か?ゴブリンとかスライムとか相手にしてもらうつもりだけど」
「はい!大丈夫です、さすがにダガーだけでは厳しいですが……」
「それなら心配ない、朝食を食べたら鍛冶屋によって装備を整えてから恵みの森に行くから」
「わかりました。よろしくお願いします」
「ああ、頑張ろう」
その後運ばれてきた朝食を食べ終えて早速鍛冶屋に向かう。
宿から出る前にベリックから昨日の報酬を貰った。 ゴブリン十匹の1000ゼニ、ザンクで10000ゼニ合わせて11000ゼニ貰った。
中々の
早朝から街は活気に満ち溢れておりまだ露店などは準備をしているが行き交う人の多さにめまいを起こしそうになるのをこらえ足早に目的地に向かった。
鍛冶屋は朝から忙しそうにハンマーの重々しい音が響いていた。
タクヤは現場の人には声をかけずにカウンターにいたドワーフのおばさんに声をかけた。
「連れの装備を整えたい、これから依頼を受けに行くからすぐに装備したい」
「あいよ、構わないよ。連れってのは後ろの狼ちゃんだね?」
狼ちゃんと呼ばれてホロは少し恥ずかしそうに前に出る。
タクヤは優しくホロの背中を押し大丈夫とでも言うように笑顔で頷いた。
「あらあら可愛らしい狼ちゃんね、値段の方を気にしなければ結構いい装備あるけどどうするかね?」
金なら余裕があるしまあ大丈夫か、とりあえず武器だけは一個だけにしてもらうか。
「10000ゼニくらいあったら大丈夫か?」
「そうだね〜……まだそんなに強い魔物と戦わないなら余裕があるね、リザードマン程度だったら大丈夫だね」
「それなら問題ない、頼む」
おばさんは任せておけと言うように大きく頷いてホロを奥に連れて行く。
数十分後……おばさんとホロが奥から出てきた。
ホロは恥ずかしそうにモジモジしながらも笑顔を向けてきた。
「へえ……似合ってるじゃないかホロ!武器はジャマダハルか?防具は急所を分厚い金属で覆って他は基本的に革素材でできてるのか、いい感じだおばさん」
レザー装備の革素材を使いその上から鉄の防具はをつけているらしい。
籠手、胴、足のみ金属で覆われている。胸は腹部分より装甲が厚くなんとなく強調されてるような気がする。武器のジャマダハルには何か魔法的な効果でもあるのか小さな文字がたくさん掘られている。
「ふふん!いい感じだろ?鉄の部分はクレイモアの一撃だった受け止められるほど強固な物を使ってる、その分重さもあるけど獣人なら重さに引っ張られることもないと思うよ。兜は本人の希望でつけてないよ。感覚が狂うみたい」
10000ゼニでこれならいいもんだな、これならすぐにでも訓練に行ける。
「驚くのはまだあるよ!ホロちゃんやってみな!」
おばさんがでかい声で言うとホロは両手に持ったジャマダハルに魔力を込めながらキンッと軽く打ち付けた。するとジャマダハルが光へと変化し光は形を変えクレイモアに変化した。
タクヤが思わず「おおっ!」武器の変化とホロが意外にも魔力を扱えることに感心しているとホロは嬉しそうに、おばさんはなぜか偉そうに胸を張って説明を始めた。
「これは昔とある魔人の武器を作った際お礼として受け取った物なんだけどね、名前は『災厄』って言うらしいんだけど使い方がわからないただの箱だったんだけどホロちゃんが触ったら武器になっちゃってねぇ……これの力はわからないけどとりあえず武器になるらしいからあげようと思ってね」
「おいちょっと待て、結構不穏な名前だったぞ。もっと普通の武器はないのか?」
「ないことはないんだけどどれもホロちゃんはしっくり来ないらしいんだよ、同じ形をした武器も使いづらいみたいでさ」
それ絶対呪われてるじゃねえか!と内心で文句を言いながらホロに聞いた。
「あ〜ホロどうする?そいつ使いたいか?」
「え、えっと…はい。これが一番使いやすいです。これならタクヤ様のお役に立てると思います!」
「う……でもなあ〜」
キラキラした瞳でそう言われ返品しろとも言えないタクヤが困っているとおばさんは苦笑しながら言った。
「まあまあこれのお代はいらないからさ、やばそうだと思ったらすぐに捨てるなりうちに持ってくるなりしてくれていいから使うだけ使ってみたらどうだい?あ、お釣りの2000ゼニね」
タダと言われタクヤは渋々引き下がった。
「は〜わかったよ、でもホロ!やばいと思ったらすぐに手放すようにな!」
「はい!任せてください!」
ホロは欲しい武器が手に入って嬉しそうに尻尾を振りながら元気に返事をした。
『ほう…災厄の箱ではないか。珍しいものを手に入れたな眷族よ』
お釣りを受け取っていると急にシンラが話しかけてきて驚きお釣りを落としそうになった。
(いきなり話しかけるなって…ビビるだろ)
さすがに普段通りの声で話すわけにもいかないので小声で返事をするタクヤ。
『あれに選ばれるとはやはりあの白狼は特殊なようだ。手放すには惜しい駒だぞ眷族よ』
(あれにはどんな効果があるんだ?その言い方からして知ってるんだろ?)
『我も詳しいことは知らんが使い方次第では聖剣にも魔剣にもなる代物とだけ言っておこう。せいぜい小娘の躾を忘れないことだ』
(へいへいご忠告どうも、それじゃあそろそろ依頼行くからな)
『お前の目的を忘れるなよ?我の国の封印を解けるのは今現在お前のみだ』
ボーッとシンラと会話しているとホロがジーッとタクヤの顔を凝視していた。
「た、タクヤ様大丈夫ですか?目を開けたまま寝ているような感じでしたが……」
「いや大丈夫だ、さて装備も整ったし早速行くか。ありがとなおばさん」
「あ、ありがとうございます…」
「うんうん、なんかあったらいつでもおいでなさいな!」
タクヤは軽く手を振りホロは深々とお辞儀をしてその場を後にした。
ギルドに向かう途中ダガーのことを思い出したタクヤはホロに尋ねた。
「そういえばゴブリンのダガー売らなくてよかったのか?パンドラあるならいらないんじゃないか?」
ホロは腰にさしてあるダガーを握りながら言った。
「そう、ですよね…でもこれは初めて人から貰った大切な物なのであまり売りたくないんです。あ!お金がないのであればもちろん売ります!」
「金には困ってないから平気だ、ありがとな」
物を大切にしてくれる子でよかったと安心するが武器としては心許ないがパンドラがあれば大丈夫かと納得するタクヤ。
ギルドに入ると相変わらず酒とタバコの匂いが充満していた。ホロも少し顔をしかめていた。
「「「「かんぱーい!!!」」」」
ガチャガチャンッ!とジョッキをぶつけ合う音が聞こえる。夜に依頼が終わり祝っているのだろう彼らの周りだけは煙たい雰囲気も和らいで見える。
彼らが騒いでいるおかげでタクヤ達が入ってきたことに気づいた者はあまりいないのか値踏みするような視線が突き刺さることはなかった。ただ一人を除いては……。
「ようニイちゃん!朝からそんなべっぴん引き連れてデートか〜?いいご身分じゃねえかええ?」
タクヤの前に筋骨隆々の世紀末な装備を着た大男が立ちふさがり朝から酒を飲みながら因縁をつけてきた。相当酔っているらしくひどく酒臭い。
ホロは無表情だがタクヤの後ろに隠れてしまった。
「なんか用か?これから依頼を受けようと思ってるんだが」
舐められたら調子に乗らせるだけだと思いタクヤも強気に言い返すが男を余計イラつかせてしまった。
「ああ?!てめえザンクを潰した程度で調子に乗ってんじゃねえぞ!!俺様はB級冒険者のボアラ様だぞ!ちったあ先輩に敬意ってもんを払いやがれ!」
急にボアラという男が大声を出したせいでさっきまでお祝いをしていた冒険者達や周りの冒険者がこちらを見ていた。
B級と聞いてタクヤはなんとなく鑑定を使ってみた。
『ボアラ・人間。Lv43、生粋の脳筋。』
鑑定がいつの間にか参加していることと生粋の脳筋という説明でタクヤは思わず吹き出してしまった。
「……てめえいい度胸してんじゃねえか。ぶっ殺してやるよ」
ボアラはぐいーっと酒を一気飲みしジョッキを放り投げると背中の大剣を抜いた。見兼ねた受付嬢が止めに入る。朝のせいか一人しか受付にいなかったようですでに涙目だ。
「ちょ、ちょっとボアラさん?!ダメですよ!冒険者同士の殺し合いは禁止です!今すぐ武器を収めてください」
「うるせえてめえもぶった斬るぞ!邪魔すんじゃねえ!」
ボアラは激昂し受付嬢を殴ろうと拳を振り抜く。
受付嬢に拳が当たる直前に男の動きが止まる。
「はあ…いい加減にしろよ酔っ払い。こんな可愛い人を殴ろうとするな」
タクヤがボアラの手首を掴み手を止めていた。
恐怖で腰を抜かしていた受付嬢は「可愛い人」と言われたのが嬉しかったのか少し顔を赤くしていた。
ボアラは手を振りほどこうとしているが微動だにしない。怒りから焦燥の表情になってきたボアラはタクヤを思い切り殴る。
タクヤはわざと頭を殴られる。もちろん覇竜の兜を被っているタクヤにダメージはないのだがボアラはニヤリと笑うがすぐに表情を引きつらせた。
「先に殴ってきたのはお前だよな?これで酔いを覚ますんだな」
タクヤは『竜の威圧』と『竜力』を発動させる。
ボアラの顔がいよいよ恐怖に染まり「ま、待ってくrごはあ!!!」
タクヤに顔面を殴られ机や椅子を巻き込みながら壁まで激突しボアラは気絶してしまった。多分死んでいないだろう。
周囲から「おお〜」だとか「やるなーニイちゃん」などと声をかけられるが特に気にすることもなくタクヤはそのままホロを連れてカウンターに向かう。
すでに先ほどの受付嬢がスタンバッており切り替えの早さに感心するタクヤにお礼を言ってきた。
「さっきはありがとうございます!!ボアラさんも普段は悪い人じゃないと思うのですが最近失敗続きでナーバスになってたんだと思います…どうか許してあげてくれませんか?」
悪い人じゃないね……こういうのって信用できないの俺だけ?
「ああ許すよ、今日はホロの練習のためにD級の依頼を受けたい。ゴブリンより強い魔物がいい」
「はい!それだと〜恵みの森でオーク五匹の討伐依頼があります。一匹だけリーダー格のオークがいるようなので注意が必要ですが受けてみますか?」
タクヤはホロをチラッと見るとホロは力強く頷いてくれた。
「じゃあそれで頼む、報酬はいくらだ?」
「報酬は銀貨三枚、3000ゼニです!今から出発しますか?」
「ああ今すぐいくよ、また案内して欲しいんだけどいいか?」
「はい大丈夫です!それではいってらっしゃいませ!」
タクヤは頷いて案内人の元に向かう。
「またあなたですか、朝からご苦労様です」
「よう!B級冒険者を殴り倒すなんて大したもんじゃねえか!カカカ!」
わざわざC級に推薦してくれた案内人がいた。騒ぎを見ていたようで愉快そうに笑っていた。
「今日もよろしくお願いします、C級にはなりましたがまだまだ地理に不慣れなので」
「あいよ、早速いくかい?」
「よろしくお願いします」
タクヤとホロは馬車に乗り込み早速恵みの森に出かけた。
「ボアラさんボアラさん起きられますかー?あいつら行っちゃいますよー」
ペシペシとボアラの頬を叩く盗賊のような身なりの細身の男の他に三人の男がボアラの周りにいた。
「ぐっ……ああセンチか。あいつらどこ行きやがった?」
「へい、恵みの森にオークを狩りに行ったみたいです。どうしやすか?あ、回復薬どうぞ」
ボアラは回復薬をがぶ飲みし一息つくと四人に言った。
「やられっぱなしじゃ腹の虫が治んねえ…あのガキぶっ殺して獣人の方は犯しまくって奴隷商に売り払ってやる。お前らいくぞ!」
「「「「おう!!」」」」
災厄……覇竜シンラが暴れていた頃から存在した特殊な武具、シンラ自身も能力は知らないが今のところジャマダハルとクレイモアに変化することができるが……




