覇竜の眷族と白狼娘ホロ
なんかものすごく長なってしまいました…。
ザンクが正面から真っ直ぐタクヤに向かって突進する。ほぼノーモーションでマックススピードになったザンクはでタクヤを叩き切ろうと右脚を薙ぎ払う
さっきは見えなかったけど今では少し遅いな、斬れる…!
タクヤはザンクの右脚を狙い疾風斬りで迎え撃つ。
目に見えないほどの速度で甲冑を着込んだ人と三メートルはある魔物がぶつかり合う。
ガゴンッ!!!とまるで大砲の弾がぶつかり合うような音が響き周りの木々が揺れる。
ギリギリと火花を散らしながら鍔迫り合いをする一人と一匹はまるで神話の再現のようだ。
「ッオラァ!!!」
鍔迫り合いを制したのはタクヤだ。
ザンクの右脚にビキビキとヒビが入っていき砕け散った。
「ギギャアァァァァァァ!!!!!」
右脚が粉砕され血が噴出する。
ザンクは絶叫を上げながら後退する。
空気すら切り裂くような金切り声を上げる化け物ザンクに素早く接近するタクヤ。もはやその目は新人冒険者ではなく獲物を捉えた竜の目をしているようだ。
高速でザンクの眼前に接近し神羅を振り下ろす。
約二メートルはある刀はザンクを両断し刃と化した衝撃は後ろの岩までもを両断してしまった。
ザンクの体はグチャリと音を立てながら左右に分かれる。
「……終わったか、死ぬかと思った……あっ!あの子は?!」
タクヤは兜を脱ぎ捨て馬車の方に走り中を確認すると先ほどの獣耳の美少女が倒れていた。
一瞬死んだのかと思い血の気が引いたが少女の周りに血液はないのを確認してホッと息を吐き安堵した。
少女のそばに座り頬をペチペチと軽く叩いた。
「大丈夫か?終わったよ…?」
少女は「うぅん……」とうめくが返事をしない。
『魔力に当てられて気絶しているようだな、ほっとけば目を覚ます』
「うわっ?!シンラか…急に声かけないでくれ、驚くだろ」
『ぬ?貴様がまどろっこしいから我が教えてやったのだろうが、感謝して欲しいくらいだがそれより今日はここで野宿したらどうだ?もうじき日も落ちる』
そう言われ空を見てみると暗くはないが残りのゴブリンを倒して拠点まで帰るのは厳しいだろう。壊れてはいるが馬車もあるし先の戦闘で木々がバラバラになっており薪に困ることもなさそうだ。
「そうだな、まだ明るいうちに野宿の準備をしておくよ」
さっさと終わらせようとタクヤは早速野宿の準備を始めた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夜になり薪に火をつけて少女を寝かせ馬車の中にあった粗末な毛布を少女にかけておく。
少女はまだ目を覚まさない。
食料に関してはさすが恵みの森と言うべきか、近くを歩いただけで木の実や果物なら見つかった。少量だが干し肉もある。
野宿の準備をしている時に新しいスキルの使い方も理解しておいた。
タクヤは先に食事を済ませ少女が目覚めるのを待ちながら神羅を鞘から抜き観察していた。
ちなみに果実の芯の甘い匂いにつられて昆虫型の魔物がくる危険性もあるので芯は全て燃やしている。干し肉の包みも同様だ。
ザンクと正面から鍔迫り合いをするなんて今思うと馬鹿げてる……あんな奴と打ち合ったら普通刀なんてへし折れるに決まってる。だけどこいつはヒビどころか刃こぼれ一つない。聞きたいことあるのにシンラは何も言わないし……。
シンラはタクヤが野宿の準備を始めると『久しぶりに会話したから眠い、あとはなんとかしておけ』と言って眠ってしまった。
今日使えるようになったスキルの再確認する。
使えるようになったのは鎧の着脱方法とスキルの覇竜の瞳と竜力の使い方だ。
鎧に関しては着てたら脱いだりしているイメージを頭の中ですれば現実でも同じことが起こっている。鎧を着ていると身体能力が上がることもわかった。
覇竜の瞳は単純に凄まじく目が良くなるだけだ。ただしどれだけ遠くても小さくても見える上に洞窟のような完全な暗闇でも見通せる。魔物に使ったら筋肉のわずかな動きすら見え筋繊維の細かい動きまで見えるようだった。
竜力はザンクの時も使っていた怪力だ。全身の筋力を竜並みにする単純なスキルだがタクヤの見た目は変化しなかったが木に実ってる果実を木を揺すって落とすことくらいのことは簡単にできた。
その気になれば木を引き抜くこともできるかもしれない。
タクヤはもう一つ新たなスキルを覚えた。その名は”竜の威圧”である。
食料を両手に抱えている時に戦闘を避けるために魔物に向けて殺気を出しているうちに覚えたものだ。これは威圧感と魔力を放出するだけだが弱い魔物や獣は逃げるので無駄な戦闘を避けるのに丁度いい。
装備とスキルの確認が終わり神羅を鞘に戻すと「う〜ん……」と可愛い声が聞こえ少女が目を開けた。
少女は体を起こしタクヤを見つめる、が何も言わないので少し困惑しこちらから話しかけることにした。
「ようやく目が覚めたか、もう安全だぞ」
そう言うと少女は「安全……?」と繰り返し気が抜けたのか「終わった、やっと終わったよ〜……ひっく、ひっく……」と目から大粒の涙を流した。
こういうときどうすりゃいいのかな……女の子と絡んだことないから対処法がわからん。とりあえず頭撫でとこ。
タクヤは少女に近づきソッと頭を撫でてあげた。
少女は最初はビクリとしたが徐々に身を委ねるようになった。少女が落ち着くまで頭を撫で続けた。
しばらく泣いたあと落ち着いたのか少女のお腹がク〜っと可愛らしい音を立てたのでなかった干し肉と果実を与えながら会話を始めた。
「まずは自己紹介から始めるか、俺はタクヤ。つい最近冒険者を始めたばかりだ。よろしくな」
「た、助けてくれてありがとうございます…冒険者になったばかりであの魔物に勝てるなんて凄いです…失礼ですが私には名前がありません。奴隷はご主人様に名前をつけてもらうものだから今までの名前など捨てろと言われてたのでずっと四番と呼ばれてきました」
名前までないのは予想外だったが奴隷なのはなんとなく予想通りだ。
「なるほど、オークションあたりに運ばれる途中でザンクに襲われたってところか…辛かったな」
その言葉を聞いて少女は不思議そうにタクヤを見つめたあとクスリと笑った。
「奴隷の私に同情してくれるんですね……優しい人ですね。今までのご主人様はみんな私を玩具としてしか見てくれなかったので嬉しいです」
耳をピコピコ動かし尻尾も揺れているのを見る限り本当に嬉しいのだろう。
玩具か……殺されることはなかっただろうけど俺よりは辛い人生を送ってきたんだろうな。とりあえず今後の方針について聞いとくか。
「聞きたくないけど一応聞いとく、これから君はどうする?運んでいたやつは多分死んだぞ。ザンクから簡単に逃げ切れるとは思えない」
少女はうーんと時々タクヤをチラチラ見ながら考え出した。
「すまないが明日仕事の続きをやる。そのあと街に戻るからそれまでゆっくり考えてくれ。まだ疲れてるだろうし今夜は休んでくれ。見張りは俺がやるよ」
「あ!いえ大丈夫ですよ!見張り程度なら私でもできますしタクヤ様こそ戦って疲れてると思うのでお休みください」
「そ、そうか?なら休ませてもらうか。無理はしないようにな!何かあったら叫んでくれ」
それだけを言うとタクヤは神羅を抱き枕のように抱えて心配そうに地面に横になった。
朝になり太陽の日差しを浴びてタクヤはだるそうに体を起こした。
「ふあぁ〜……あ〜やっぱ地面だと寝にくいな〜」
一応周囲をキョロキョロと見渡すと少女がいないことに気づきタクヤは一瞬で目を覚ました。
あれ?あれ?どこいった……?!まさか魔物か!?いや待て落ち着け……覇竜の瞳で見つければいい。
タクヤは覇竜の瞳を使い周囲を観察すると少女を発見した。森の中なので全身は見えないが頭だけは確認することができた。
風体を使って文字通り風のように走り少女との距離を詰めて行く。やがて森を抜けると大きく綺麗な水の川が広がっていた。
「おい!どこだ?!大丈夫か!!」
川に少女が一人しかいない状況など冷静に考えればわかることなのだがタクヤはかなり焦っており一糸纏わぬ少女が川で水浴びをしているなんて全く考えついてもいなかった。
少女と目が合うとタクヤは「あっ…」と素っ頓狂な声をあげ驚くほど綺麗な肌、大きすぎず小さすぎない胸。細い腰に健康的な肢体を見て呆然と立ち尽くしてしまった。
「あ、あのータクヤ様……そんなに見つめられるとは、恥ずかしいです……」
少女は両手で胸と下を隠し顔をリンゴのように赤くしながらしゃがんでしまった。
「……え?あ、ごめん!!!」
そう言ってタクヤも顔を真っ赤にし体を180度回転させ目もつぶってしまった。
気まずい沈黙が流れタクヤは心臓が破裂しさんばかりにバクバクと脈打っていた。
すぐにでもここを離れたいが今のタクヤがそんな冷静になれるはずもなく覇竜の瞳を使って周囲をキョロキョロして気を紛らわせていた。
すぐ近くにゴブリンを一匹発見した。
そういえば武器渡してなかったな…またザンクみたいなやつが出たら守れるかわからないしゴブリンのダガーだけでも渡しておくか。ついでに素手の威力も試してみよう。
タクヤは風体を使い高速でゴブリンに接近し頭を右手で殴りつけた。
距離があったのもあるが風よりも早く近づいてくる物体にまともに反応できずに無防備な眉間に拳が「メキャッ」とめり込んで断末魔の叫びすらあげることなく即死した哀れなゴブリンが一匹出来上がった。
「ここまで威力あるのか……吹っ飛ばすくらいの気持ちで殴ったけど拳が埋まっちまった」
タクヤがゴブリンを引き抜こうと手をブンブン振っていると背後から人の歩いてくる気配がした。
気配の主はもちろん白狼少女だ。奴隷の服を着ているから水浴びを済ませたのだろう。少女はタクヤを見て一瞬だけ引き攣った笑顔をして控え目に、言葉を選びながら言った。
「ええと……実は虎人の方ですか?そんなことができるのは虎人くらいしか知らないのですが……」
「ああいや…この防具の能力で力が強化されてるんだよ、人間の腕力でできるわけないだろ。それより武器持ってなかったよな?正直心許ないけどゴブリンのダガー渡したくよ、あといい加減名前がいるよな?呼びにくい、あと今は君は奴隷じゃないから名前は自由に考えな」
タクヤはダガーを渡しながらそう提案した。
少女はダガーの感触を確かめるようにニギニギしながら考えた。
「………ええと、ではホロと呼んでほしいです…」
「ホロか、いい名前だな。じゃあ残りのゴブリン倒して街に帰ろう」
「…は、はい!頑張ります!」
ホロの気合の入った返事を聞き満足して残り四体のゴブリンを探すために歩き出した。
七、八分歩き続けたがなかなか目的のゴブリンたちは姿を見せない。
まだ覇竜の瞳を長時間使えないから徒歩で探すしかないのだが殴り殺された同胞を他のゴブリンが遠くで見たいのかはわからないがゴブリンだけ遭遇しないのだ。
イライラしながら索敵をしているとホロが口を開いた。
「ダガーに少しだけゴブリンの匂いがついています。全てのゴブリンが同じ匂いをしているわけではありませんが似たような匂いを感じるので追跡を任せてもらえないでしょうか……?」
彼女もゴブリンにイライラしていたのか割とはっきりとした口調で提案した。
タクヤは彼女の変化に驚きながら提案に賛成した。
「なるほど、嗅覚か……獣人ならではの発想だな。じゃあ頼む」
ホロは笑顔で頷くとスンスンと匂いを嗅ぎ周囲を観察しながら歩き出した。
しばらく歩くとホロが歩みを止めタクヤも手で制止した。そして前方を指差して指を4本立てた。
どうやらこの先にゴブリンが四匹いることを示しているらしい。
「俺が突っ込んで全滅させてくるからホロは待機しててくれ」
小声でそれだけ言うとタクヤは風体を使い音もなく駆け出して行く。駆け出した直後に風が舞ったのか背後から「キャッ!」と可愛い声が聞こえ少しだけ、本当に少しだけ気になってしまったがなんとか耐えた。
ゴブリン達はたむろしているヤンキーのようにしゃがんでいた。タクヤは神羅を抜きこちらに背中を向けているゴブリンを狙い風体を重ねがけし速度を上げて神羅を横薙ぎに払った。
タクヤと向かい合っていたゴブリンはタクヤを見かけると「ギィッ?!!」と素っ頓狂な声をあげたが背中を向けていたゴブリンは反応すらできずに首が飛んだ。
ブシューッ!!とゴブリンの首から血が噴水のように吹き出して倒れた。仲間が倒れて他の三匹が立ち上がり戦闘態勢を整える頃にはすでにタクヤは横薙ぎの勢いを利用して素早く振り返り先ほどタクヤの正面にいたゴブリンの首も切断した。
左右のゴブリンのうち右のゴブリンは距離を取り足元の石を拾い狙いを定め左のゴブリンはダガーではなく棍棒を振り下ろそうと突っ込んでくる。
タクヤは冷静に躱すと石を構えていたゴブリンはタクヤが躱した場所に石を投げてきた。
棍棒ゴブリンも避けられるのは想定済みだったのかすぐに振り返り追い討ちをかける。
ゴブリンの意外な連携能力の高さを身を以て体験しタクヤは感心した。だがそれだけである、タクヤは『反射』のスキルを使い石を棍棒ゴブリンに反射する。
反射された石は全く勢いを殺すことなく棍棒ゴブリンに飛んでいき肩に当たった。
棍棒ゴブリンは面食らったがダメージはない様子だったが態勢は崩れた。もう一匹はまた石を拾おうとしている。
もちろんそんな隙を見逃すはずもなく素早く距離を詰め神羅を振り下ろし石を拾っているゴブリンを一刀両断する。
態勢を崩していたゴブリンは怒り狂いジャンプして全体重をかけて振り下ろそうとした。
タクヤは対処しようと振り返ったらホロがダガーを逆手持ちにしてゴブリンに飛びかかって首に突き刺した。
ゴブリンに意識を集中させていたとはいえそこそこ距離があったにもかかわらずタクヤに全く気づかれることなくゴブリンの急所をダガーで刺す動作に全く無駄がなく美しささえ感じる動きにタクヤは思わず「綺麗だ……」と呟いてしまった。
風にも負けるような声量だったがホロにはバッチリ聞こえていたようで尻尾をフリフリし「えへへ…」と無邪気に笑っていた。
「凄いなホロ、どこで覚えたんだ?」
「私のご主人様達はいろんな方がいたのでこういったことも覚えさせられたのです…前までは嫌でしたが今はタクヤ様のお役に立てて嬉しいです…!タクヤ様こそあの距離を一瞬で詰めるなんて獣人やエルフ以上の身体能力です!」
「そっか、ありがとな…恩にきるよ、それじゃあ帰ろうか。依頼は完遂した」
「えっ…?あっ……そうですよね……わかりました」
タクヤ達はザンクの首を手土産にキャンプまで戻るとギルドの案内人が血相を変えて駆け寄ってきた。
「ようあんた無事だったか!いや心配したぜ…昨日ギルドのやつが急いできてよ、なんでも刃獣ザンクって言うC級でも上位の魔物が出るようになったらしくてな…かなりやばいやつだがあんたがよかった。ところで後ろにいる白狼人の姉ちゃんは誰だ?」
「この子はこいつに襲われてた奴隷商の娘です。この娘以外は全滅してたから保護してきました」
保護されたと聞いてホロは嬉しそうに微笑んでいる。道具扱いではなく獣人として見てくれていることが嬉しいのだろう。
そう言ってタクヤはザンクの首を差し出した。
それを見ると案内人は信じられないと言った様子でタクヤとザンクの首を見比べていた。
「おいおいマジかよ……こいつを初見で倒したのか?しかもその鎧も見たことねえ、あんた何者だ?」
「奴隷商の馬車の中に隠してあった鎧を貰いました。これがなければ命を落としていましたよ。それで依頼は完了したと言うことでいいですか?」
案内人は「こいつは大事件だな〜……」と頭をガリガリ掻いて了承した。
さてと、あとはホロについてだな……正直また奴隷にするのは可哀想だ。何より俺は彼女の見た目や戦闘技術に惚れてしまった。よし、手に入れよう!
「ところで奴隷商の主人がいなくなった奴隷はどうなるんですか?」
タクヤがそう尋ねると案内人は「そりゃ他の奴隷商に引き取られるに決まってるだろ?」と当然のように言った。
「あーだけど奴隷は物扱いされるし戦利品ってことでお前さんが貰うのは全然ありだと思うぞ。ギルドを通せば確実に後ろ盾になってくれるだろうよ」
よかった……ならばあとはホロの気持ちだけだ。
タクヤはホロの目を真っ直ぐ見つめて言った。
「なあホロ…ホロさえ良ければ一緒にこないか?もう奴隷になんてさせないぞ」
「………え?い、いいんですか?私なんてあまりお役に立てませんが……」
「役に立つ立たないじゃない、俺はホロの意思を聞いてるんだ。このまま戻ってまた奴隷になるか俺と一緒にくるかこの場で決めるんだ」
ホロは自分の意思と言われるとタクヤを見つめ返し即答した。
「タクヤ様と一緒に行きたいです……もうあんな仕打ちは嫌です…私も連れて行ってください!」
ホロはそう言うと涙をボロボロ流した。
今まで全く優しくされたこともなく毎日苦痛の中で生きてきたがそれがようやく終わりを迎えた。
「そっか……よし、じゃあ街に帰ろう。今夜はご馳走だな!そう言うわけなんでこの娘は俺が引き取ります!異論は認めませんからね」
「オーケーオーケーじゃあギルドの方には俺から言っとくから街に着いたら速攻美味い飯でも食わせてやんな、あと多分お前さんは次からC級冒険者になってると思う。ザンクを倒した新人なんて今までほとんどいなかったしちょっとした騒ぎになるかもな」
「ありがとうございます!騒ぎになるのは困りますが昇格できたのは嬉しいです」
「いいってことよ、嬢ちゃんのためにさっさといい装備を整えてやんな。あ、ザンクの首を預からせてくれ。昇格するための証拠にするからよ」
タクヤは頷いてザンクの首を渡した。
「確かに受け取ったぜ、じゃあ帰るぞ!お嬢ちゃんもいつまでも泣いてねえで準備手伝ってくれ」
「ぐすっ……はい!」
ホロは涙をぬぐいキャンプの片付けを手伝う。
案内人は見た目や話し方は怖いがその目はとても優しげな感じだ。
ホロはよほど疲れていたようで帰りの馬車の中では安心しきった顔でぐっすり眠っていた。
タクヤはその隣に座り神羅にこびりついていた血と脂を拭いていた。本当は拭く必要などないのだが手入れのフリでもしておかないと怪しまれるかもしれないと思ったからだ。
そういえばホロのスキル確認してなかったな、このままボーッとするのもあれだし見せて貰うか。
タクヤは鑑定を使いホロのスキルとレベルをチェックすると驚いた表情を浮かべていた。
白狼人ホロ、Lv15、スキル・嗅覚Lv2、連携Lv3
たったこれだけだった。
ゴブリンに跳躍して距離を詰めたのはあくまで自分の身体能力によるもので戦闘系のスキルは皆無だったのだ。
今までは奴隷だったのもありスキルを磨くこともできなかったのかもしれないしこれは強くなりそうだとタクヤは思った。
「ん?」
思案しているとホロの手がタクヤの手に重なる。よほど愛情を注がれたことがなかったのだろう。タクヤはホロの手を優しく握り眠りについた。
しばらくすると街の門が見えてきた。
冒険者を安全に送り届けるのが仕事の案内人はホッとした顔をしてタクヤ達に報告した。
「おーい着いたぞ……って寝てやがる、全くしょうがねえな〜おい起きろ新人ども!もう俺の仕事は終わったぞ!!」
案内人が怒鳴るとようやくタクヤとホロが目を覚ました。
「お前らの宿はギルドのやつらに聞いてあとで報酬持ってってやるからとっとと帰れ、ザンクをぶっ倒した分の報酬も上乗せされるだろうから結構な額になるだろうし楽しみにしてな!」
タクヤとホロは別れる直前まで優しい案内人に「ありがとうございます!」とお礼を言い二人で宿に帰って行った。
「やれやれ、なんだかんだいってまだ新人だな……ザンクの相手はよっぽどきつかったんだな」
タクヤはホロと二人で宿に向かって歩いていた。
タクヤが疲れた声でホロに話しかけた。
「これからは冒険者として一緒に戦ってもらうことになるけど後悔はないんだな?」
「後悔なんてありません!この命に代えてもタクヤ様をお守りします」
「そうか、でも守るのは俺だ。明日はホロの装備を整えて簡単な依頼にでも行こう。さすがにすぐC級にいくのは辛いだろう。今日はホロのためにご馳走を用意してもらうからたくさん食べて元気出してくれ」
ホロは「ご馳走」と聞いて耳をピクピク動かし尻尾をブンブン振って「はい!」と元気な返事を返した。
大太刀神羅と覇竜の鱗鎧……覇竜の眷族のみが身につけることができる装備。大太刀は覇竜の爪、鱗鎧は一枚の鱗で造られている。本来は神殺装備だがタクヤはまだまだ扱いきれていない。




