チートをぶつけても無駄
恵みの森に到着したタクヤとホロは案内人とキャンプを作り念のため装備を再確認し森に入る。
今更だが恵みの森は木の実や薬草やキノコ類、洞窟には豊富な鉱石もある。当然木の実やら草を食べる動物も多いためそれを狙う魔物の種類も多いのだ。
荷物は武器と防具、それにギルドから支給される少量や薬が少々だ。
「スンスン……あれ?タクヤ様、オークはどの辺りにいますか?血の匂いはしますがオークの匂いを薄くしているみたいで正確な場所が把握できないです…」
タクヤは覇竜の瞳を使い周囲を見渡す。
オークはすぐに見つかった。
牛のような動物を五匹で食っているようだ。一匹だけでかい上によく食べるオークがいたから奴がリーダー格だろう。
ちなみに周囲を確認した時に街の方向から馬車に乗らずに馬を使いこちらに向かってくる五人組も発見したが今はあえてスルーすることにした。誰がきているかはなんとなく予想がついているからだ。
ホロがオークの匂いに気づかなかったのは
「オークは川辺で食事中だ。返り血がついているから相当派手に殺したんだろうな」
「わかりました、早めに終わらせましょう!」
奴隷でなくなってからのホロは本当に元気だ。少し凶暴になった気もするが狼だから仕方ないと思っておく。
まっすぐオークの元へ歩く。もちろん足音も気配も殺している。ホロはレベル以上の実力と経験があるのか足はタクヤより遅いものの足音に関してはタクヤよりも消している。
水が流れる音と「ブモォ!ブモォ!」という豚と牛の鳴き声を合わせたような声が聞こえてきた。
茂みに身を隠してみるとオーク達がまだ肉を食べていた。
豚面というよりは猪面といったほうがいいかもしれない。リーダーは子分に比べ牙がデカイのでわかりやすい。
ホロが今にも飛び出そうとしているのを抑えながらタクヤは鑑定を行う。敵を倒すためには情報がいるのだ。
オークLv8(四匹)、石の斧、鉈、石の板、棍棒を装備。
オークチーフLv10、石棍棒を装備。
……スカルがないのか、意外だが武器はどれも人の胴くらいありそうなほどデカイから必要ないのかもしれないな。
「ホロ、あいつらには特殊なスキルがないが見るからに力任せな攻撃をしてきそうだし注意しろ。おれも二匹は倒すがチーフを含めた三匹はホロに任せるぞ」
「お任せください、必ずやり遂げてみせます」
それだけ言うとタクヤとホロは茂みから飛び出す。
タクヤは風体を使い急接近し喉元を突きオークを絶命させる。見た目より硬い皮膚に少し驚く。
オーク達の対応はゴブリンよりも早くすでに戦闘態勢に入っていた。
ホロはジャマダハルですでに切り掛かっていたが皮膚が硬く刃が通りにくいと判断するやすぐに武器をクレイモアに変形させ力任せに叩き切る。
「ブモォ〜〜!!!」
ホロと斬り合っていたオークは雄叫びをあげながらガムシャラに石棍棒を振り回す。
あまりにデタラメな攻撃で流れが読めないのかホロは顔をしかめながら隙を伺っている。
その間にもう一匹が後ろに回り込んでいるのに気づいていないようだ。
「ホロ!後ろ!」
ホロは素早く反応し後ろを振り返るがすでにオークは突進を始めている。
助けようか迷ったがホロはその場でジャンプし空中で一回転し綺麗に着地する。
突進したオークは避けられるとは思ってなかったのか「ブモォ?!?」と驚いたような声をあげてもう一匹にぶつかりそのまま倒れ込んでしまった。
タクヤサイド
ホロが素早く追撃するのを見届けてタクヤは自分と対峙しているオークに向き直った。ちなみによそ見している間襲われなかったのは竜の威圧を使ってビビらせていたからだ。
「待たせたな、やろうか」
タクヤが威圧を解くとオークは我に返ったように襲い掛かってきた。
オークが石の斧を振り下ろしてくるが大振りで遅いため横にすっと避けると簡単に態勢を崩した。
態勢が崩れたガラ空きの背中に突きを放ってみたが「ブモォ?」と間抜けな声をだすだけであまり効果はないようだ。
武器を奪われないように素早く抜くとオークは振り向いて石の斧を振り上げてくる。
またかわして今度は喉元を突くと今度は鳴き声を出すことなく絶命した。
ホロの方を見るとオークチーフと熾烈な戦いをしていた。
ホロサイド
危ないですね…タクヤ様が教えてくれなかったら後ろにいたオークに気づくことができませんでした。タクヤ様にはいくら感謝してもしたりません!私に優しくしてくれるのもタクヤ様だけ。タクヤ様になら襲われても……いや今はこっちに集中しましょう。
ホロは気合いを入れ直し倒れているオークの一匹にクレイモアをオークの首に振り下ろすとほとんど抵抗もなく刃が肉に食い込んだ。
タクヤ様が最初の一匹を喉を突いて倒していたから喉を狙ってみましたが効果抜群ですね、さすがタクヤ様です!何故かオークチーフは襲ってこないみたいですし一気に行きます!
ホロはクレイモアからジャマダハルに変化させ姿勢を低くして接近する。
同胞の死体をどかし立ち上がったオークはホロを一瞬見失ってしまう。ホロはすでにオークの懐に入り込んでおり正面から全力で走っているのにもかかわらず勢いを殺さずにオークの背後に回り膝裏に一本のジャマダハルを突き刺す。
「ブモッ!!」
激痛のあまり片膝を地面についてしまったオークの首にもう一本のジャマダハルを突き刺すとオークは倒れた。
タクヤサイドに戻る
『見事だ、眷族の娘は中々やるではないか、貴様もうかうかしてられんな』
タクヤは急に出てきたシンラに苦笑した。
「また急に出てきたな。でもまだ敵いるから後でな」
ホロは倒れたオークからジャマダハルを抜きオークチーフの方を向いた。オークチーフはグチャグチャと食事を続けていたが肉を飲み込むと石の剣を持ち立ち上がった。
ホロがオークチーフに駆け出すと同時に「ブモォォォォォ!!!」と雄叫びを上げ剣を振り下ろす。
ホロは焦ることなくかわしジャマダハルで脇腹を斬るが筋肉の鎧に阻まれ刃が通らない。
オークチーフは明確にホロを狙い剣を振り回す。
ホロは刃で受けないよう躱すが一発だけ避けきれずに刃で受けてしまう。
ホロの方が軽いため三メートルほど後ろに飛ばされてきたので後ろに回って受け止めてやる。両手が痺れたのか腕をダランと下げていた。
「大丈夫か?無理をするなよ!」
「はぁ…はぁ…大丈夫です……だんだん動きは見えてきました……」
それだけ言うとホロはまた駆け出していく。
オークチーフはどっしり構えホロの出方を待つ。ホロは姿勢を低くしオークチーフの左側に走る。
オークチーフが横薙ぎに剣を振ろうと構えた瞬間ホロは側面ではなく正面から接近し思い切りジャンプする。
オークチーフは面食らったようで若干動きに戸惑いを見せた。その隙を見逃さずホロは右手のジャマダハルをオークチーフの目に突き刺す。
「ブモォォォォォッ!!!!?!?」
オークチーフは激痛のあまり剣を捨て暴れ回るがホロは突き刺したジャマダハルを掴んで離れない。
「くぅぅ……!暴れないでくださいよ!!」
オークチーフは走り回ったり木に突撃して粉砕したりしている。なんとか離れずにいるがホロ自身も攻撃する余裕がないのか苦しそうに叫ぶ。
「……そろそろいいか」
一言呟いてタクヤは鎌鼬を発動させオークチーフの下半身を切断した。目の出血が激しかったのかすぐにすぐに死んだ。急に暴れなくなってホロは驚いた表情をしていたがなんとか着地できたようだ。
「お疲れ様ホロ、よくできたじゃないか!」
そう言いながらホロの頭を撫でてやるとホロは肩で息をしているが嬉しそうな顔をして尻尾をブンブン振っていたが急にシュンとして呟いた。
「ですが仕留めきれなかったです……」
「それは仕方ない、それに今日買った武器でオーク二匹を倒せた上にリーダーのオークチーフを瀕死に追い込んだのは間違いなくホロだ。誇っていいと思う」
「タクヤ様……勿体無いお言葉ありがとうございます!あ、あの……もっと頭を撫でてもらってもいいですか……?」
ホロはおそるおそる聞いてきたので無言で撫でてやるとさっきより尻尾を振っている。見た目は返り血でびしょ濡れで真っ白な毛が台無しだがそれでもホロは美しかった。
さてと、ホロにこれから先は見せたくないな……もっと撫でてやりたいけど仕方ないよな。返り血のおかげで鼻がきかないようだしちょうどいい。
「ホロ、返り血がすごいから一旦川に行って洗っておいで。あと薬も渡すからもし怪我してるとかあったら手当てしてくるといい、俺はまだやることがある」
「……わかりました、それでは一旦失礼します!」
ホロは名残惜しそうに川に歩いて行った。ホロがある程度離れたところで茂みにいるやつらに声をかけた。
「出てこいよ、おっさん。用事があるんだろ?」
そう言うと茂みからガサガサと音を立てて武装した五人の男たちが出てきた。
一人は見覚えがあった。もちろん朝見かけた酔っ払いだ。ボアラだったか?そいつはゲスい笑みを浮かべると早口で話しかけてきた。
「へっ!気づいてやがったのかようぜえ野郎だ……ぶっ殺しにきてやったぜ〜俺様に恥をかかせたくれた礼はたっぷりしてやるよ。てめえを殺した後はあの女を犯しまくってゴブリンにくれてやるよ!なにせゴブリンは女を犯すことしか頭にねえ奴らだしな」
「なんだ、お前らと一緒じゃないか。よくそれでB級にまでなれたもんだな……時間ないしとっととやろう、めんどくさい」
本音を言ったらボアラはプルプルと震えてひたいに青筋を浮かべながら背中の大剣を抜く。
「よく言った、このグランドバスターの鯖にしてやるよ!おいてめえら!囲め囲め!!」
他の四人は「は、はい!」だとか「へい兄貴!」だとか返事をしてタクヤの周りを囲む。
囲まれてるタクヤ本人は平然としているのにさらに頭に血が上ってボアラが何か喚いている。
……ぐ、グランドバスター?そんなダサい名前だったのかその剣……鑑定は……面倒だ、さっさと終わらせよう。一人はドワーフで大斧が武器、残り三人は人間でダガーを二本装備した細身のチビ、ロングソードと盾を装備したゴツい男、槍を装備した細マッチョか……鎧を着た相手にはメイスなんかの鈍器の方がいいと思うんだがな。
「うらあああー!!!」
まずドワーフが飛び込んできた。大斧の威力とリーチ。さらにドワーフの身長の低さを利用して足を輪切りにしようと横薙ぎに振るう。
後ろに下がって回避すると槍を装備している奴が突進し全力で突いてきた。
頭を軽く振って回避し一歩踏み込んで神羅を振り上げるとバキッ!!と音がして槍が折れ槍使いも態勢も崩れ尻餅をついている。
タクヤは首を斬り落とそうと横薙ぎに振るうと間に盾とロングソード使いが割って入り攻撃をガードしさらに背後から両手ダガー使いが迫ってくる。
タクヤは盾使いの顔を殴り怯ませて横に回避しダガー使いの攻撃を防ぐ。
必勝パターンでも終わったのか四人は固まってタクヤを睨む。タクヤは余裕そうに神羅を肩でトントンと叩いていると急に姿を消した。
「どこ言っーガハッ!!」
「…………は?」
一番厄介そうな盾使いを疾風斬りで首を切り落とした。
他の三人は仲間の首が飛び血が噴水のように出ているのを見てようやく状況を理解したようだった。
このままのんびりやってても勝てるだろうがホロが戻ってくる前にケリをつけたかったので急いでいた。
タクヤは竜の威圧と風体と竜力を使い一気に攻勢にでる。
目にも留まらぬ速さで繰り出される斬撃に三人は固まってなんとか凌いでいるが目に見えて傷が増え武器もボロボロになって行く。
槍使いは予備のショートソードを使っていたが慣れていないのか動きがぎこちなくタクヤの猛攻を防ぎきれずに片腕を落とされると泣きながら叫んだ。
「リーダーも手伝ってくれぇ!!!こいつ化けもっ!!」
「敵から目を逸らすと死ぬぞ……ってもう死んでるか、悪いけど時間がないから容赦しないぞ」
タクヤは冷徹に、冷静に一人ずつ確実に息の根を止めていく。
肝心のボアラは木にもたれかかってタクヤの動きを観察していた。
ダガー使いが倒れ最後に残ったドワーフは体力が限界にきたようで地面に膝をついていた。実際ドワーフの腕力は強く竜力を使ったタクヤの攻撃を一番凌いでいたのも彼だったりする。
ドワーフは「チッ!」と舌打ちし懐から爆弾を取り出した。
「てめえも道連れにしてやる……」
ドワーフは火をつけようとして火魔石を取り出し爆弾に火をつける。
シュゥゥゥっと爆弾についたヒモに火がつくがすぐに消えてしまいドワーフは困惑した。
「な、なんで……」
「悪いな、小さくした鎌鼬で消した。魔力の操作の練習になった。死ね」
それだけ言ってドワーフの首を突いてとどめを刺した。
ボアラの方を見るとようやく俺の番かと言った感じでダルそうに大剣を抜いた。
「随分余裕そうだな、仲間はどうでもよかったのか?」
「あ?こいつらは盗賊崩れのクズ共だから知ったこっちゃねえな、てめえこそ随分容赦なくやってくれたじゃねえか……化け物が」
化け物ね……違いない、世界を制した竜の血が入ってるしここまで他者を殺すのが楽シイなんて思いもしなかったよ。
気がつくとタクヤは笑っていた。フルフェイスの兜を被っているのでもちろん表情は見えないがボアラはなんとなく察しているようだ。
「じゃあ俺様も本気を出すとするか……ぬんっ!」
ボアラの筋肉がボコボコと隆起し体が大きくなる。
オークチーフよりひとまわりほど大きくなり巨大化が止まった。
「これは……っと危ねえ!」
ボアラの正体を見抜こうと観察していたら突進してきたので慌てて回避する。
まるで某マーベ◯のヒーローのような見た目になったボアラは自慢のグランドバスターとオークチーフの石の剣を拾った。
「ハァァァァ……ブッ殺シテヤルヨ」
これだけは鑑定を使うか……そこそこ強そうだ。
魔人形態・ボアラLv42、グランドバスター、石の剣を装備。スキル・鉄化、剛力、超再生、狂化。
見た目通り接近戦に特化したスキル持ってんのか、全部強力なスキルだけど一番ヤバそうなのは狂化か?
ボアラの筋肉がまた隆起し突進してきた。先ほどの突進より速度が増している。
剛力を使ったのだろう。一瞬で距離を詰めグランドバスターを振り抜いてくる。
タクヤは竜力を全力で使い迎え撃つ。
鉄球をぶつけ合ったような音が響く。
「モウ一発!!!」
ボアラはもう片方の石の剣を振り下ろす。
タクヤは力を抜いてわざと後方に吹き飛ばされらことでこれを回避した。
……スキル一つでこの強さか、接近戦に付き合ってる場合じゃねえな。
タクヤは鎌鼬を使い遠距離から切り刻もうとするがボアラの体を浅く傷つけるだけで超再生ですぐに治ってしまった。
ボアラは再生する自分の体を見てニヤリと笑った。
「オマエノ攻撃ナンカ効カネエヨ!!オトナシク俺様ト斬リ合オウヤ!!」
『我の炎を使え、今貴様の下僕は草やキノコを集めているのが見えるがあまり時間はないぞ』
遅いと思ってたらそんなことしてくれてたのか……あとで褒めてあげるか。なんか怖くて使えなかったけど死炎使ってみるか。
「硬いな、じゃあ俺も切り札を使わせてもらうよ」
「マダナンカアンノカヨ……キナ!マトメテ潰シテヤルヨ!!」
こういう奴は調子に乗るからわざと言ってみたけど思い通りになりすぎだろ……まあこれで邪魔されないだろう。
「死炎!」
死炎を発動すると神羅の根元から炎が噴出して刀身全体が炎で包まれた。普通の炎とは違い血のように真っ赤な色をしている。
「これは……凄いな」
炎を見ているとまるで光に集まる虫のような吸い込まれるような奇妙な感覚になった。ボアラも同じ感覚になったらしく「ウ、ウゥ……」唸って震えている。
「さて、待たせたなおっさん。手早く終わらせよう」
一言だけ言って風体も使って接近するとボアラはハッとして武器を構える。
ボアラが石の剣を振り上げて迎え撃つ。
タクヤは石の剣を狙い横薙ぎにする。石の剣に神羅がぶつかるとジュゥゥゥッと石の剣をバターのように溶かしそのままボアラの足も焼き切る。
ボアラはとっさに鉄化による硬化と剛力による無理矢理な筋肉の増加、そして超再生を使い全力で足を守ったが全て無意味だと言わんばかりに足が切り落とされた。
「グアァァァァァァァァッ!!!!俺ノ足ガァァァァ!!」
膝から下が切り落とされた悶絶するボアラ。焼き切られたのもあり出血はしていないがその代わり火傷による激痛に襲われていた。だがボアラの超再生はたとえ切断されようがくっつければ元に戻る高性能なスキルだ。
ボアラはグランドバスターを振り回しタクヤを引き離し切られた足を拾おうとすると驚くことに切り離された足は凄まじい速度で燃えやがて炭になってしまった。
「こんなもんか、次はこれを使うか……鎌鼬!」
ボアラが伸ばした腕に向かってタクヤが鎌鼬を使うと鎌鼬にも炎が付与され風と炎の刃となってボアラの無防備な腕を切断し足と同じように炭にした。
サイクロプスやトロールに殴られても堪えなかった
防御力に絶対の自信を持っていたボアラは紙切れのように切られ炭となった足と腕を見て呆然としていた。
タクヤが近づいていくと恐怖に怯えた表情をしながら後ずさっていく。
「ヒッ……?!クンナ!クルンジャネェ!!」
「なんだ、もう終わりか?そのでかい剣は飾りじゃないんだろ?もっと足掻けよ」
ボアラは意を決したようにグランドバスターを投げてくるが痛みと恐怖で頭を狙っているのが丸わかりで簡単に弾くことができた。
タクヤはグランドバスターに神羅を突き刺しさらに魔力を注ぎ込むと死炎が激しくなりグランドバスターを簡単に溶かし尽くした。
「俺にケンカを売るとこうなる、お前は生かしとかと危険だから死んでもらうけどな。このスキルの試運転にちょうどよかった、じゃあな」
「マ、マテー」
ボアラが何か言う前に首を切り落とし首も体も炭に変えていく。
『この炎に焼かれれば再生など許さずに燃やし尽くす。眷族の炎はまだ未熟だが初めてにしては上出来だ、褒めてやろう』
「そいつはどうも、でもあいつ狂化使わなかったなぁ……もったいない」
タクヤは他の死体も同じように燃やしながらシンラと会話をしていると視線を感じた。
ホロかと思って周囲を確認するがホロはまだ採取に夢中のようだった。
覇竜の瞳はまだ視力を異常によくする程度にしか使えないタクヤでは視線の正体はわからない。
視線が感じなくなり探しても無意味だと思ったタクヤは冒険者たちの死体を早々に焼却しホロの元へ向かうことにした。
一方ホロは地面に積まれた大量の果実やキノコ、それに山菜を見て満足げに頷いていた。
「これだけあればタクヤ様に喜んでもらえそうです……せっかくタクヤ様を誘おうと長めに水浴びしてたのにきてくれなかったですね」
実はホロがタクヤが戦っていることに気づいていなかったのは耳が悪いのではなく全身に浴びた血を滝に当たって念入りに洗っていたのと長年の奴隷生活で受けた虐待のせいで五感が鈍っているのもある。
オークの匂いがわからなかったのもそのせいだ。
あとホロが惚れっぽいのは優しくされた記憶が一切ないためだ。ホロがいた奴隷商は返品を受け付けており記憶を全て消し去り体に受けた傷も完全に治して何度も売られてきたのだ。
親の顔も知らず優しくされたこともないホロからしたら優しく接してくれるタクヤはまさに英雄のような存在なのだ。
「もっと集めてタクヤ様に褒めてもらいたいなぁ……けど早く戻らないといけないですよね?」
などと自問自答しているうちに森の中からガサガサと音がした。
「ようホロ、長く水浴びしてただけあって綺麗になったな。それに果物もたくさんあるし宿に帰ったら一緒に食べようか」
「き、綺麗だなんてそんなことありませんよ……ありがとうございます……」
「とりあえず明日から二日間は休みにしよう。ホロも疲れてるだろうしな」
「私なら全然大丈夫ですよ?少しお腹が減ったくらいです!」
さりげなく綺麗と言ってくれるタクヤ様優しすぎます……!でも体力がないと思われるのは嫌です。
「いや、ホロは奴隷生活が長かったし一日休んで次の日からいきなり冒険者の仕事をやらせたのは流石に酷いと思ってな…この二日間でたっぷり栄養とって疲れもとろう」
今まで他人を気遣うことをしたことが全然なかったタクヤはホロが元奴隷ということをすっかり忘れていたのだ。
「わかりました、では明日から二日間休ませていただきます。ありがとうございますタクヤ様!」
やっぱりタクヤ様は優しいです、タクヤ様が何を殺していたとしても私はタクヤ様の味方であり続けます。
その後に果実を持ってタクヤとホロは街に帰りゆっくり休んだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
タクヤがボアラを倒した後遠くでタクヤを見ていた人物が二人いた。
一人は猫耳のルビーのような綺麗な赤色の髪と瞳の女性だ。髪は肩くらいまで伸ばしており美で引き締まった体をしており特殊な皮で作られた防具を着ている。動きやすいようにボディラインが強調される全身タイツのような見た目で貧乳が目立つが本人は特に気にしていない。木の上からタクヤを監視していた。武器はショートソードを二本と服の下に仕込んでいる無数のナイフだ。
もう一人は槍を背負った金髪で碧眼の男性だ。比較的軽装だが急所は希少なオリハルコンでできた金属でカバーされている。無駄のない体つきで超細マッチョである。
「どうだケミー見えるか?」
「うん、黒い鎧にここらじゃ見ない武器、それに魔人ボアラを簡単に倒した強者……マーリン様から言われた通りだね」
「へえ……魔人形態のボアラは面倒なんだがな。魔力の質と量だけならもうS級いってるかもな」
「戦っちゃダメだよ!あくまでも目的は監視なんだからね!」
「うるせえなわかってるよ!まったく……上司は俺だっつうのに口が悪くなったもんだ」
「誰の影響よ……っと監視に気づいたかも、周りキョロキョロしてる。潮時だね」
「それじゃあひくぞ、あいつが王国でヤンチャするような奴には見えねえし報告は適当でいいだろ」
「相変わらず適当なのね……根拠はあるの?」
「何も。ただの勘だ」
その後もくだらない会話をしながら二人は街に帰った。
魔物紹介、オーク……猪面をした魔物。力が強くあまり群れないが今回はオークチーフが統率していたので群れていた。ほとんどのオークは棍棒を持っているが冒険者から奪った武器を使うこともある。
オークチーフ……オークの中でも特に強い個体で通常のオークよりも筋肉質な体をしている。石の剣を装備しておりその一撃は岩を簡単に砕く。たまにゴブリンを率いることもある。
ボアラ……魔物ではない。B級冒険者の荒くれ者、魔人形態では鉄化や剛力を用いたゴリ押し戦術を好む。超再生のおかげで受けた傷も即回復し筋力はオークチーフをはるかに凌駕しているが今回は相手が悪く理性を飛ばして身体能力を強化する狂化のスキルもあったのだが使う前にタクヤに倒された哀れな人。通常はかなりの難敵。狂化スキルを持った敵はまた出す予定。




