安宿なんて嘘だ!
遅くなって申し訳ないです。少し忙しかったです。
帝都の門に行くと門番が2人いた。
門の前にいくと止められ門番が近づいたきた。
「ルーさんいつもお疲れ様です。美味しいハチミツを売ってくれて私の妻も喜んでおりますよ!では規則なので一応商品の確認をさせてもらいますね」
「お願いいたします。それと今回はゴブリンの落とすダガーが20本もあります」
もう1人の門番が商品の馬車に積まれている商品を確認する。
「ダガーが20本も?何かあったのですか?それとそちらの方は?」
「ハニー村がゴブリンの盗賊団に襲われたらしいのです。村に定住してるルガル殿とこちらの冒険者希望のタクヤ殿の活躍により救われました。賞金首にロッシュがホフゴブリンに変身してゴブリン達を従えていたようです」
「ほう……ロッシュを成敗するとは将来有望かもしれませんな!帝都は良いところでございます。王様のお陰で戦争でも冒険者の依頼でも他国に比べると死傷者の数は圧倒的に少ないですからな!ははは!」
俺は適当に会釈をしておいた。旅の疲れもあり早く休みたいのだ。
今日はギルドまで行き冒険者希望をだし賞金を受け取り寝るだけだ。
明日からはとっととD級までのし上がるつもりだ。
門番の商品の点検が終わるとルーは世間話を早々に切り上げ移動を再開する。
「さてと、我々は今日は休み明日から商売を開始する予定です。タクヤ殿はどうされますか?」
「俺は冒険者ギルドと賞金受取所に行きたいのですが案内を頼んでよろしいですか?」
「もちろんです!では最初に賞金受取所に行きましょう」
ルーは部下に先に宿で休むよう命じると先に歩き出した。
賞金受取所は門のすぐ近くにあった。
目立ちにくい建物だ。
建物のすぐ隣に掲示板があり他の賞金首が貼り出されている。
「ここですタクヤ殿。私は外で待っております。中の男は見た目は怖いですがいい人です」
頷いて中に入ると眼鏡をかけた男が何かの書類を整理していた。
眉間にしわが寄っていて目つきが悪い男だ。
「失礼、ちょっといいか?賞金をもらいに来たんだが……」
「ん?ああちょいと待ってな……よしいいだろう。なんだ?誰を殺した?」
「盗賊のロッシュだ。紙には20万ゼニとあるが貰えるのか?」
「あの変身野郎か、よく分かったな……まあいいほら20万ゼニだ。とっとと仕事終わらせたいから帰んな」
男はそう言って部屋の奥に行き金貨の入った袋を持ってきて机に放り投げた。
若干腹が立ったが我慢して金を受け取って受取所をでた。受取所をでるとルーが屋台で食べ物を買っていた。
「ああタクヤ殿早かったですね。あなたの分も買ってありますよ」
そう言って片手に持っているホットドッグのような食べ物を渡してきた。パンに挟まっているのはソーセージと野菜ではなくひき肉と野菜だった。
少し食べにくいが肉はジューシーで野菜はシャキシャキしてて美味しかった。
「モグモグ……次は冒険者ギルドですね。冒険者ギルドは帝都の中央にあります。毎日のように帝都の住民や近隣の村から依頼が舞い込みます。稼ぐにはこまらないですぞ」
ルーは案内しながら説明してくれた。
街の中央には様々な店が開かれていた。
魚を売っていたり野菜を売っていたりしている。
ちゃんとした店舗は意外と少ない。
鍛冶屋や薬屋はさすがに店舗を持っているようだ。
ひときわ大きく目立つ建物があった。
「ここがギルドです!いつ見ても大きな建物です。私もいつかこんな店を建てたいものです」
「そうですね、そうなったら商品を買わせてもらいます。案内ありがとうございます」
「ぜひお願いします!では私はこれで失礼します……あ、宿はギルドからでてまっすぐ進むと私たちがよく利用する安くていい部屋があります」
ルーに礼を言ってギルドに入る。
扉を開けた瞬間まるでライブのような轟音が響いていた。もちろんライブなんてものはこの世界にはない。冒険者達が酒を飲んで騒いだり楽器を使って適当な演奏をしたりしているのだ。
難易度の高い依頼を完遂したのか集団で祝い酒を楽しんでいる者達や喧騒に負けないように声を張り上げながら作戦会議をする者達など騒ぎ方は様々だ。
酒とタバコの臭いがする。
くっさ〜……慣れなきゃならんけど今日は早く帰ろ。
奥にカウンターがある。カウンターには美人な女性2人とエルフの細マッチョイケメンが1人いる。冒険者達がカウンターの隣にある掲示板の羊皮紙を剥がし女性達に話しかけている。そこで依頼の受付などをしているようだ。
「すいません、冒険者になりたいのですが……」
上から目線になれない日本人の性は辛い。
受付の女性は笑顔で答えた。
「はい、冒険者カードを作ればすぐに冒険者になれますよ。冒険者カードは身分証明書になるので無くさないようお願いします。あと冒険者カードには魔法が込められており本人の血を一滴垂らすことで冒険者カードとして完成します」
「血か、わかりました。ナイフはありますか?」
受付の女性はカウンターの引き出しの中から何も書かれていないカードと箱を取り出し中からナイフを出した。ナイフに軽く火の魔法をかけ消毒してくれた。
「ではこのナイフで血を一滴お願いいたします。血を垂らしたらこちらの薬草粉を傷口に少しつければすぐ治ります」
頷いてナイフで指を少し切り血をカードに垂らす。
血がつくとカードに俺の顔といくつかの個人情報が浮かび上がる。
「このカードは本人とギルド、それと商人のみが確認することができます。あなたには見えていますが他の者には見えておりませんのでご安心を悪用されることはございませんのでご安心を」
「ありがとう、明日からさっそくF級とE級の植物や薬の試験を受けたいのだが可能ですか?」
「ご存知でしたか、もちろん可能ですが講習は受けなくてもよろしいですか?初回は無料ですが2回目からはゼニが必要になりますのでご注意ください」
「わかった、ありがとう」
ギルドを出て宿を目指す途中ドワーフが経営している鍛冶屋が目に入った。
ドワーフか、初めて見たな。やっぱ小さいんだな。金に余裕はあるし防具だけ見ておいて損はないか、さすがにいつまでもレザー防具をつけているわけにもいかないしな……。
鍛冶屋では複数のドワーフが忙しそうに働いている。みんな顔は真っ赤で汗だくだ。邪魔をするようで話しかけるのは気がひけるがこちらもそのうち命をかけることになるから仕方ない。
「ここの防具を見せてもらってもいいか?」
「ああ?なんじゃお主は?この辺じゃ見ない顔だな、防具なら色々揃っとるぞ。ハードレザー防具、チェイン防具、鋼鉄の防具などがある。どれも逸品だ!」
「確かにどれもいい品だが値段は?」
「1番安いハードレザー1式で1万ゼニ。チェインが1万3千ゼニ、鋼鉄1式が2万ゼニだ。言っとくがつけにしたり値下げなんかはしないからな。」
「ふむ……そうか、金はあるから本格的に冒険者として働いたらまたくるよ。冷やかして悪いな」
「買ってくれさえすれば文句は言わんわい。ではまたくるんだぞ!」
ドワーフはそれだけ言うとまた奥に行き鍛冶仕事に戻った。
改めて宿に向かう。もう夕暮れだが人通りは全く減っていないのは帝都ならではだ。村なら大体の家は扉と窓を閉め切っている。
建物には看板がついている。宿の名前は「巨人の腰掛け」と書いてある。
……変わった名前だな、由来でも聞いてみようかな。
宿はギルドほどではないが大きな建物だが食事付きで安くルー達行商人も利用しているらしい。
中に入ると美味そうな料理の匂いが漂っている。
レストランのようになっており2回から部屋に続いているのだろう。
受付にいくと眼鏡をかけた若い男性が対応してくれた。
「ようこそいらっしゃいました。巨人の腰掛けにようこそ。私は受付のベリックと申します。本日はどういったご用件でしょうか?」
「ここでしばらく泊まりたい。明日から本格的に冒険者として活動するつもりだ。金ならあるからある程度いい部屋を頼みたい。ここにはルームサービスはあるか?」
ベリックは部屋の利用者の名簿を確認しながら答えた。
「そうですね……今空いているお部屋ですとオパール部屋ならば空いております。家族でも住めるいい部屋です。お一人でご利用に限り食事代は無料となっています。お部屋の代金は1泊なら3千ゼニ、長期のご利用ならば2万ゼニになります」
たっか!でもいい部屋か……金はあるけど、こういうとき貧乏性は辛いな……。
「部屋を拝見してもいいか?」
「もちろんです。ではご案内いたします」
ベリックは奥の鍵が入れてあるケースからオパールの部屋の鍵を取り出し案内する。
「オパール部屋は2階の最奥にあります。音が外部に聞こえないよう特別な加工が施されているため隣人などに迷惑をかけることもありません。この部屋です」
鍵を開けて中に入ると予想以上にいい部屋だった。
ベッドは大きく生活に必要な家具も人通り揃っている。大体4人は住めそうな良部屋だ。イスやベッドに座らせてもらったがハニー村のベッドとは比較にならないほど柔らかく気持ちいい。
「いい部屋だ。ここにしよう!長期の利用とは具体的に何日になるんだ?」
「ありがとうございます。長期的な契約は2年となっております。すぐに2万ゼニをお支払いする必要はございませんのでゆっくりお支払いしてくださっても結構です」
長期の方が遥かに安いしこれで食事付きならば文句ないだろう。この世界には風呂がないのが残念だが。
「ここではタオルでお体を拭く以外にもサウナもございますのでどうぞご利用ください。では受付に戻って契約書にサインをお願いします。それがすみしたら鍵をお渡しします」
今さらっとすごいこと言ったよこの人。サウナまであんのかよ!後で入らせてもらうか。
契約書にサインをしたあと早速部屋に戻り荷物を置きサウナに向かう。
他の人達は食事をしているのかサウナには誰もいない。
裸になってサウナに寝転がって暑さを楽しむ。行儀は悪いが注意する人間などいないので問題ない。
さてと……ちょっと魔法を鑑定するか。封竜使役はなんであんなにショボかったんだ?
封竜使役を鑑定する。
封竜使役……神羅に封印されている竜を操り戦う魔法。竜の力は制限することが可能であり使役する力を制限しすぎると竜は眠りから目覚めることもない。
「つまりリザードマンを蒸発させたのは寝息ってことか?とんでもない化け物が封印されてんだな…」
神羅の中に封印されている姿のわからない竜にビビりつつサウナを楽しんだ。
サウナから上がり受付にいるベリックにルームサービスを頼むと部屋に戻った。
ルームサービスでは日替わりの食事になるため変更はできないがここで何も食べたことがない俺にとっては関係ない話だ。
装備の点検をしているとドアがノックされた。中に入ってきたのは可愛らしい女性だ。俺と同じ10代だろうか?
「失礼します。給仕のルーシーと申します。お食事をお持ちしました。本日はポークビーンズ、パン、特製ドレッシングをかけたサラダ、硬魚のムニエルでございます。ごゆっくりどうぞ」
ルーシーはそれだけ言うと足早に去っていった。サウナから上がるときにはすでに1階のレストランは満席だったから忙しいのだろう。
早々に食事を終え装備の点検を済ませ明日に備えて眠った。
安いの基準がよくわからない街だ。
……あ、ゴブリンのダガーまだ売ってないな。
種族紹介
ドワーフ……小柄なおっさんで髭面とマッチョが多く酒と賭け事を好む。使用武器は両手斧や戦鎚、手斧など力任せな武器を好む。豪快な性格なものが多くエルフとはまた違う方向性の鍛冶技術に優れている。




