帝都に出発、チートの片鱗
執筆って難しい。
次の日からさっそくルガルさんに連れられ村周辺の森に入り薬草やキノコを採取していった。
採取するときに名称や効能、そのまま食べても効果がでるもの、調合しなければ効果がでないものなどを徹底的に教わることができた。
冒険者といえば割と自由なイメージのある職業だが帝都では冒険者の死傷者を極力減らすようにしているらしく最初は薬草やキノコの知識、薬の調合法などを教え込まれる。
休憩中にルガルさんが教えてくれた。
「帝都でも植物の講習を受けられるが有料だ。だが帝都ではここと違って本を読むことしかできん。もちろん本を読むのも大事だが現地で自分の目で見ることのほうが大事だ」
「百聞は一見に如かずということですね」
「ひ、ひゃくぶ?なんだそれは?」
「ああいやこっちの話です!」
こっちでは諺はないのか……記憶が曖昧って設定だし気をつけるか。
「教え込まれるだけなら問題ないんじゃないですか?適当に講習を受けて冒険者になる人もいそうですが……」
「冒険者ギルドは依頼の難易度わけをしてる。S級からF級まであるんだがF級では薬草やキノコの知識のテスト、E級では薬の調合の知識をテストされる。この2つの試験を突破できねえと冒険者の資格すらとれないんだ」
「なるほど、間違って毒草なんか食べて死なれたら困りますもんね」
「そういうことだ。よし、続きやるぞ!」
その後の6日間ルガルさんにみっちり指導してもらい大体は暗記できた。
一度だけ毒キノコを食べてしまい死にかけたのは内緒だ。
6日後の朝。
帝都から行商人が来た。
「タクヤー帝都から行商人がきたぞ!準備しな!」
「今ちょうど終わりました。元々荷物はあまりありませんので」
ルガルさんの家から出ると1人の行商人が馬車にハチミツを積みもう1人は村長と話をしていた。
村長がこちらに気づいて手招きをしてくる。
「おはようございますタクヤ殿。よく眠れましたかの?紹介いたします。こちらの方がいつも村に来てくださる行商人のルー殿です。そしてルー殿、こちらがルガル殿と共に村を救ってくれた英雄じゃ」
村人やルガルさんが倒したゴブリンのアイテムも一緒に馬車に積まれ商品が増えたせいかルーはホクホクした顔で言った。
「初めましてタクヤ殿、この村は私の商売にはかかせない相棒です。それを救ってくれたタクヤ殿を特別にタダで帝都までお送りさせていただきます」
「ありがとうございます。ですが俺は英雄ではありません。命を救ってくれたお礼をしただけです」
多分わざと助けさせるように黒いおじさんが仕向けたんだろうけどな…。
「またまたご謙遜を!時間も惜しいので早速帝都に向かいたいと思います。ささ、タクヤ殿も馬車にお乗りください。タクヤ殿の武勇伝を馬車の中でゆっくり聞かせていただきます」
「はい。村長とこの村には大変お世話になりました!俺が有名になったらまた遊びにきます!」
「いつでもおいでください。村人全員が心待ちしておりますぞ」
俺は村長に頭を下げたあと荷物と一緒に馬車に乗り込む。
ルガルさんはいないのかと思ったがよく見ると村の端っこでこっちを見て笑っていた。
あの人カッコつけてるとこあるよなあ……ありがとうございました!またきます。
ルガルさんの方に向かって頭を下げ行商人と共に村を出発した。
道中ルーは様々なことを聞いてきた。
聞いてくるのはほとんどゴブリン達との戦闘のことだった。
大量のゴブリンはともかくガードゴーレムはほとんどルガルさんのお陰で勝てたようなものだ。
「いやあ最近怖い噂をきくようになりまして……ドラゴンの動きが活発になってきているらしいのです。まだ上位の竜はおとなしいのですが下位の竜はただてさえ凶暴なのですがさらに活発化すると私達行商人が困るのです。盗賊の被害が減るのは助かるのですが……」
なるほどね……つまり護衛役がほしいのか。しかしドラゴンもいるのか……まあこの刀も竜を封印してるし今更か、かなりやばい奴が眠ってるけど……。
「なるほど、護衛の依頼があればなるべく受けるようにします」
「おお!よろしいのですか?!報酬はたくさん出せませんがよろしくお願いいたします」
その後もルーと他愛のない話をしていると馬が急に怯え始めた。
「ヒヒーン!!!」
「どうした?ま、まさか魔物?」
俺は馬車から飛び降り刀を抜いて周囲を確認する。
ルガルさんの助言を思い出す。
正体不明の敵が近くにいる場合まずは周囲の環境を確認する。例えば湖や川がある場合リザードマンがいたり山岳地帯ならばハーピィやグリフィンなどがいることが多い。
時間も関係ある。
魔物も一応生き物ではある。夜に活動するものや昼に活動するものがいる。
夜間に活動する魔物の多くはアンデッド系の魔物、つまりゾンビやレイスなどである。ゾンビは動くが死肉の塊でありそれを狙う屍肉喰らい(グール)等も動き回っている。
今は太陽はほぼ真上、昼を過ぎたあたりだ。
近くには川がある。
川を見るとちょうど川の中から何かが這い上がってきた。
「グルルル……」
緑色の鱗に覆われズングリとした体。目は血のように赤く光っている。その手には様々な動物の骨を木に括り付けた骨の槍を握っている。
鑑定を使う。リザードマンLV.3が2体、LV.6が1体。
数は3体……真ん中のやつだけ少し大きいな。新しい魔法の試し打ちにちょうどいいか。
風体と内なる炎か……。
3体のリザードマンは真っ直ぐこっちに向かって突進してくる。
「ルーさん、離れていてください」
「は、はひ!!」
ルーは噛みながら返事をした後すぐに馬車を走らせる。
リザードマンのレベルの低いやつが槍を突いてくる。
俺は風体を使う。すると動きが急激に早くなり目と鼻の先に迫った槍を回避できた。
疾風切りほどの速度はないし意識もなんとか追いつく。
回避にも使えるし距離をとったり詰めたりするのに使えるな……次は内なる炎!
内なる炎を使うと体が熱くなり力がみなぎってくる。
試しに疾風切りを使うとリザードマンLV.3の槍ごと頭を斬り落とした。
次は内なる炎を解除しながらもう1体に神羅を振り下ろす。
リザードマンが槍でガードしてくる。
力任せに振り下ろし槍を両断する。その勢いのまま頭も斬ったが硬い鱗に阻まれ致命傷には至らなかった。
……ゴブリンと違って大分硬いな、それに普通に攻撃をガードしてくる。反応速度、防御力、攻撃力、どれをとってもゴブリンとは比較にならないな。奥の手いってみるか!
一度神羅を鞘にしまいリザードマンから距離を取り封竜使役を唱える。すると頭の中に文字が浮かび上がってきた。
警告、使役する力を制限してください。
……使い方はわかってる。世界が終わるほどの力だしな。使役する力を2%に設定…さあどうなる?
神羅を抜くととてつもない魔力が神羅から流れ炎を纏い始めた。
2%ではこの程度らしい。
俺は少しがっかりしながら走ってくるリザードマン達に神羅を横に薙ぎ払う。
蒸発した。もはや燃えるとか斬るとかではなく文字通り灰になってしまった。
アイテムは残されるらしい。
リザードマンの鱗、リザードマンの尻尾×2が残されている。
「………は?こんなに威力あんのか……チートってやつだな」
神羅を鞘にしまい。アイテムを拾いルーを探すとすぐに見つかった。
近くに馬車を置きルーと他の行商人は茂みに身を隠し震えていた。
「終わりました。素材も回収したので行きましょう」
「お、おお終わりましたか?随分お早いのですね……」
「リザードマンが3体いただけだったので楽に勝てましたよ」
俺は行商人達と共に馬車に乗り込み移動を再開した。
それからは至って平和に進み無事帝都に到着した。
ようやく冒険者としての生活が始められる。
今回は少しだけ神羅に眠る竜の力を使いました。
タクヤ自身も強いですが神羅のチート性能にはかなわなかったよ……。
魔物紹介
リザードマン…湖や川などの水辺に生息する魔物。肉食で縄張りに通りかかる人間や動物を狙っている。
食した動物の骨を木に括り付けて槍にする程度の知能を持つ。今回はお披露目できなかったが毒液を吐くこともできる。




