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チート転生者と白狼娘  作者: ゴルゴン
2/17

賞金付きのチュートリアル

 

  目が覚めるとまた知らない天井が目に入った。

  (わら)と木でできた簡素な家だ。


  俺は起きて周囲の状況を確認する。

  ベッドに寝かされていたらしい。

  服装を確認する。

  学校の制服ではなく何らかの防具?を着ている。


  「何だこれ?鑑定するか……ん?鑑定ってなんだ?」


  俺は無意識に発した自分の言葉に混乱した。


  考えられるとするなら俺を転生させてくれたおじさんがこの世界の知識を埋め込んだくらいか……まあ使ってみるか。


  俺はそう結論づけると自分自身を鑑定してみると情報が頭の中に流れ込んできた。


  タクヤLV.1。職業、放浪者。防具、レザーヘッド、レザージャケット、レザーアーム、レザーブーツ。

  使用可能魔法、疾風切りLV.1。反射LV.1。封竜解放。封竜使役。


  これが俺の今の職業と防具と使える魔法らしい。

  いかにも冒険の始まりといった感じだが武器だけは神話クラスの武器のはずだ。

 

  神羅が壁に立てかけられているので俺は立ち上がって取りに行こうと刀に近づいた。するとドアが開きゴツくて豊かなヒゲを生やしたおじさんが笑顔で挨拶してきた。


  「よう(あん)ちゃん、目が覚めたみたいだな。気分は良くなったか?」


  男はそう言うとかまどの方に向かった。


  「兄ちゃんも起きたことだし朝飯にすっか、兄ちゃん腹減ってるか?飯食いながら兄ちゃんに何があったか聞かせてくれるか?」

  「は、はい!是非いただきます。あとありがとうございます」


  俺は慌てて返事を返し男を手伝うためにかまどに向かった。

  飯を机に運び飯を食べていると男が話しかけてきた。


  「まずは自己紹介だな。俺はルガル、ハニー村に定住してる冒険者だ」


  男は苗字を名乗らなかった。つまりこの世界では平民には苗字がないのかもしれない。


  「俺の名前はタクヤと言います……記憶が曖昧で名前くらいしか覚えていません」


  前世の記憶を話すのも何だかヤバそうな気がするからここは嘘をついておきついでにこの世界のことを聞くことにする。


  「ここは一体どこですか?地名も通貨の名称すら忘れてしまいました。」

  「タクヤお前さん自分の名前以外はほとんど覚えてねえ感じなんだな…ここはギガス大陸の中央部にあるハニー村だ。この大陸の通貨はゼニだ。この村の特産品は蜂蜜(ハチミツ)でな、帝都から来る行商人に売って利益を得てる。ここから南に向かえば帝都ルドラスにつくぜ。大陸で1番でかい街で種族の差別もなく平和でいいところだぜ?……ん?ああっとすまねえ話はここまでだタクヤ……どうやらお客さんらしい」

 

  なにやら外が騒がしくなってきた。

  村人の悲鳴や怒声などが上がっている。

  ルガルさんは立ち上がり壁にかけてある馬鹿でかい大剣を担ぎ竜の鱗?のようなものがついたいかにも上等な防具をつけながら俺の方を見て言った。


  「兄ちゃんも変わった武器持ってたよな、戦えるか?戦力は多いほうがいい」


  ……一応俺は強くなるために転生しているし剣と魔法の世界ならばいつかは戦わなきゃならないよな。


  「はい!俺もやってみます!」

  「いい返事だ!じゃあタクヤ、急いで準備して外に出な!俺は先に行ってるぜ」


  ルガルはそれだけ言うと扉を乱暴に開け外に飛び出していく。

  俺も刀を手に取る。

  背負いやすいように紐が付いている。刀を背負い外に出た。


  外では村人と俺の身長の半分くらいの小さな魔物が戦っていた。

  鑑定を使って正体を探る。


  ゴブリンLV.2ゴブリンLV.1ゴブリンLV.3……

 

  視界に入ったすべてのゴブリンの情報が頭に入ってくる。


  頭いてえ!鑑定って結構面倒なんだな……。


  ゴブリンの1匹が俺に気づいた。その手にはダガーが握られている。


  「人間、喰ウ!殺ス!死ネ!!」


  ゴブリンが俺にダガーを刺そうとした瞬間俺は瞬時に回避し体勢を崩したゴブリンの首を斬り落としていた。


  ……あれ?なんか体が勝手に動いた?でもこれならやれそうだ、どんどんいくか!


  次に村人と戦っているゴブリンの背中を斬りつける。


  「グァ……」

 

  一撃で倒れてしまった。不意打ちとはいえあっけない。レベル1や2だとこんなものなのか。

 

  村人は俺を見て一言礼を言うと急いで走り他の村人に加勢していく。

 

  俺もこの辺りのゴブリン達に斬りかかる。

  少し距離があるので疾風切りと唱えてみた。すると一瞬でゴブリンとの距離を詰め刀を横薙ぎに斬りながらゴブリンを通り越した。

  たまたまゴブリンの頭に命中しゴブリンの頭部を輪切りにする。


  意識がスピードに追いつかない……けど勝手に刀が振られた。狙いさえつければあとは勝手に斬ってくれるってわけか。


  俺はもう一度ゴブリンに疾風切りをつかう。やはり一撃で倒した。今度は胴体を真っ二つにした。

  同胞の腹わたが撒き散らされるのを見たせいかゴブリンたちが逃げていく。


  「アノ人間カナワネエ!ニゲロ!」

  「そう簡単に逃がすか!!」


  俺は疾風切りで距離を詰め逃げるゴブリン達の背中を1匹ずつ切り裂いていった。

  周りが落ち着いたせいか手が震える。魔物とはいえ生き物を殺してしまった感触と疲れでその場にへたり込んでしまう。

  俺の様子を見ていた村人達が駆け寄ってくる。村人達の武器のほとんどが低レベルでなおかつ魔法などが使えないため俺の援護ができなかったのだろう。


  「助かったよ、ありがとう!」「あんたのおかげで命拾いした……」などと礼を言ってくれた。だが一人の男が急いで駆け寄ってくる。


  「おい!手を貸してくれ!森の入り口にまだ村長の娘とルガルさんがいる!」

 

  俺はそれを聞いて立ち上がる。まだ休んでいる場合じゃない。


  「俺がいきます!案内してください!」

  「おお、ありがとう!こっちだ!」


  森の入り口ではルガルが気絶しているのかぐったりしている娘を庇いながら5匹のゴブリンとでかい魔物に肩車されているゴブリンと戦っていた。


  「ルガルさん!加勢します!!」

  「ん?おおタクヤか!頼むぜ、こっちは片手に花抱えてるからよ!」


  俺は最も近いゴブリンを疾風切りで斬り倒しその勢いのままもう1匹のゴブリンの首に刀を突き刺す。

 

  ようやくゴブリン達は俺に攻撃されたことに気づいたらしく迎撃態勢に入った。


  「俺ばっか見てていいのか?」


  俺はニヤッと笑う、ゴブリン達の後ろからルガルさんが力任せな一撃で3匹のゴブリンをバラバラにしてしまった。


  「いい攻めだタクヤ、もう一人の男に村長のとこの娘さん任せて戻ってきたぜ!あとはボスだけだな!」

 

  最後のゴブリンとゴブリンを乗っけている魔物を鑑定する。


  ホフゴブリンLV.10

  ガードゴーレムLV.25


  ホフゴブリンはともかくガードゴーレムが厄介そうだ。4メートルくらいの高さで手足は細いが土でできている。頭部には穴が3つ空いている。


  「グオオオオオオ!!!!!」

 

  声は大きいがなんとなく迫力のない雄叫びだ。無機質というか機械のサイレンに近い。


  「ガードゴーレムか、懐かしい奴に出会ったもんだぜ…タクヤ、あのデクノボウは操ってるやつを仕留めれば動かなくなる。俺が足を吹き飛ばすからそのあとすぐにゴブリンを殺してくれ、でないとデクノボウが再生しちまう」

  「わかりました、任せてください」


  ルガルさんは腰を落とし大剣を地面につけると体にオーラ?が出ている。魔法か何かだろう。

 

  ルガルさんの様子を見て危険だと判断したのかゴーレムはルガルさんに突進する。


  「お前の相手は俺だ!」


  俺はガードゴーレムの前に移動し足を狙って疾風切りをお見舞いする。しかしガードゴーレムの土でできた足には効果が薄いようだ。

  ガードゴーレムは動きは鈍重で攻撃も見切りやすく隙を見つけては攻撃しているがあまり大きなダメージは与えられていない。


  硬いな…‥じゃあ神羅自体の能力を試すか?

 

 自身の使える魔法や体術はある程度わかったから今度は神羅の能力を試そうかと攻撃をかわしながら考えていたらルガルさんが怒声を上げる。


  「うおらあああああああ!!!!!」


  ルガルさんは腰を落としたままの姿勢を維持しながら地面の中に大剣をめり込ませながら猛スピードで近寄ってくる。そしてガードゴーレムの目の前に来ると目にも留まらぬ速さで大剣を振り上げる。

  土煙を上げながら放たれた一撃は大地を抉りながらガードゴーレムの右足をバラバラに砕いた。

  衝撃とダメージでガードゴーレムが倒れる。


「グワッ!オ、オイ何シテンダ!早ク立テ!」


  足が地面とガードゴーレムの間に挟まれてしまったらしい。

  耳障りな声をかき消すように首を斬り落とした。

 

  ホフゴブリンに変化が起きた。

  ホフゴブリンが人間の姿になってしまった。

 

  ルガルが近寄って死体を確かめ懐から羊皮紙を出し男と羊皮紙を見比べて小さく頷きいた。


  「こいつは賞金首のロッシュだな。たしか盗賊団のリーダーだったはずなんだがいつの間にゴブリンの盗賊団なんて作ってたんだか……ったくそれならホフゴブリンがガードゴーレムを操れてたのも納得だな」


  操り主が死んだせいかガードゴーレムの形が崩れ土塊になってしまう。耳を澄ましてもゴブリンの雄叫びや村人の悲鳴は聞こえない。村長と村人が数名走ってきている。ようやく終わったらしい。


  「ルガルさーん!大丈夫ですか?!」

  「俺なら大丈夫だー!それより賞金首が出たぞ、結構大物だ。タクヤがぶっ殺してくれた」

  「おお!なんと頼もしい冒険者様だ!!ぜひ定住してほしいものですな!わっははは!」


  村長とルガルが会話をしている。周囲の村人達は緊張の糸が切れたせいかその場にへたり込んで休んでいる者やまだ周囲の警戒をしてくれている者など様々な行動を取っている。


  俺も少し休むか…‥さすがにへとへとだ。


  刀を大地に突き刺しその場に座って休んでいるとルガルと村長が近寄ってくる。


  「お疲れさんだ!タクヤ!村と俺を救ってくれたお前に報奨金を出すぞ!あと何日かこの村で休んだら帝都に行ってくれ。そこでこの羊皮紙を役場にだして賞金5万6千ゼニを受け取ってくれ。あとはタクヤが倒したゴブリンのアイテムも報酬として受け取ってくれ!」

  「俺は当然のことをしたまでです。報酬なんて受け取れません…」

  「いいんだよタクヤ!この村の財政は今のままでも十分潤ってるし賞金を払うのは帝都だ、俺たちじゃないからな!ガッハッハ!!」


  ……たしかにルガルさんの言う通りだ。それに俺は今一文無しでこの先どう生活すればいいかもわからないし金は多いに越したことはない。


  「わかりました。受け取っておきます……それだけの資金があれば冒険者になれそうですか?」


  「お、タクヤは冒険者目指してんのか!そんだけ金と腕っぷしがあれば余裕でなれると言いたいとこだが薬草やキノコ。あとは薬の調合の知識なんかもないと冒険者にはなれねえぜ?」


  「え?そうなんですか?記憶喪失で忘れていました」


  「なんなら俺が教えてやろうか?あと一週間後くらいに村と帝都を行き来する行商人がくる。そいつと一緒に帝都に行くといいぞ。それまでなら付き合ってやるよ」


  「いいんですか?!では宜しくお願いします!!」


  「いいってことよ!ま、今日は疲れたし明日からみっちり頭に詰め込んでやるから寝るぞ!」


  異世界に来ても勉強が待ってるとは思ってなかったがなんか楽しみになってきた。

  一応自分を鑑定するとレベルが上がっていた。


  タクヤLV.5、疾風切りの威力がアップ、反射の成功率上昇、魔力と体力の最大値が上昇、風体(ふうたい)を取得、内なる炎を取得。


  なんか色々増えてる……しかし初期装備に初期の雑魚敵にベテランの味方……これなんてチュートリアル?

 

 


 

 


 


 

 

 

 

通貨の補足、銅貨1枚100ゼニ、銀貨1枚1000ゼニ、金貨1枚1万ゼニとなっています。


プロローグでも書いてありますがタクヤは神羅の使い方を大体理解しています。使いこなせるかはまた別ですが……。



魔物紹介

ゴブリン…世界中に生息するオーガ種の一種、基本的に群れで生活し旅人や行商人を襲うことが多い。ホフゴブリンなどの少し強いゴブリンもいるが狼の群れにも負ける程度の戦闘能力しかない。


ガードゴーレム、元々迷宮(ダンジョン)の宝箱や部屋を守っていた魔物であり攻撃力は高くはない。上位種にガーディアンゴーレムがいる。


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