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第2章 雨だれの石②

 

 ぽと。


 雨だれが石に落ちるような、あまりにも小さな音。


 ここには雨の気配などない。窓の外は澄んだ朝で、風は乾いている。

 セラフィナには聞こえないその音が、室内に入った瞬間からレオニスにだけ聞こえていた。


 廊下に出た後も再度鳴ったそれにレオニスはただ、視線だけわずかに下げた。自分の手首に落ちる。石に触れるでもなく、確かめるでもなく、“そこにある音”を受け止めるように。


 こんな不思議な力があるなんてレオニスは誰からも聞かされていなかった。代々ローゼンフェルト家に伝わる家宝の石で、王都の近衛騎士として出仕することが決まった際に末の息子に甘い家族に護符として持たされた。子供の頃、守護の石だからなににも汚れないのだと、兄が泥を塗りつけて親にこっぴどく怒られていた記憶くらいしかない。


 仕方なくつけていたそれから、濡れてもいないのに濡れたような感触と共に水を滴らせる音が聞こえる。


 ぽと。


 もう一滴。


 セラフィナは音に気づかなかった。

 話に聞いていた以上に薄幸な印象を身に纏わせている末の王女。彼女が聞いているのはいつも、人の足音の震えと、扉が閉まる音と、祈りのざわめきだけなのだろう。


 レオニスの石が、もう一度鳴った。その音の先にいるのはあの自分が守るべき姫なのだと、なぜか直感がそう告げている。


 レオニスは石から響く音が増えるたび、空気が薄く震えるような気がした。

 それは恐怖ではない。恐怖よりもっと現実的な、“危険”の予感だった。


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