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第60話 その裁きはすべてを許す

お茶会。


静かに笑い声が響く。


意味のない会話。


繰り返される言葉。


アリスはそれを見ている。


動かない。


そのとき。


音。


一斉に。


踏み込む足音。


トランプ兵。


押し寄せる。


整列。


一瞬で、


空気が変わる。


帽子屋が笑う。


「ああ!」


「いいね!」


三月ウサギも言う。


「それもいい!」


「乱入も楽しい!」


眠りネズミが呟く。


「うん……いいよ……」


誰も止めない。


誰も疑わない。


ただ、


受け入れる。


トランプ兵が一斉に向く。


アリスへ。


「非演者」


「非演者」


「非演者発見」


詰め寄る。


距離が一気に縮まる。


アリスは眉を寄せる。


「……何それ」


一歩、


引く。


すぐに言う。


「チェシャ」


短く。


チェシャ猫が笑う。


「もちろん」


指を鳴らす。


音が響く。


――何も起きない。


間。


静止。


アリスの目がわずかに開く。


「……は?」


もう一度。


「チェシャ」


チェシャ猫が首を傾げる。


「おかしいね」


「出ないや」


軽く言う。


その間に。


トランプ兵が動く。


腕を掴む。


押さえ込む。


拘束。


「裁判対象」


「確保」


アリスがもがく。


「ちょっと!」


「チェシャ!」


チェシャ猫は笑う。


でも。


目が細い。


「うーん」


「やっぱりここはおかしいね」


そのまま。


輪郭がぼやける。


背景に溶ける。


消える。


完全に。


アリスの顔が歪む。


「うそでしょ!?」


「今消えるの!?」


返事はない。


トランプ兵が持ち上げる。


「裁判」


「裁判」


無機質に繰り返す。


アリスが叫ぶ。


「チェシャー!!」


声が響く。


でも。


返ってこない。


そのまま。


連れていかれる。


暗い部屋。


狭い。


手は拘束されたまま。


立たされている。


被告人待合室。


アリスはため息をつく。


「……大体なに」


「裁判って」


小さく呟く。


壁。


隙間。


そこから、


会場が見える。


覗く。


広い空間。


トランプ兵が並ぶ。


中央。


証言台。


そこに立つ。


トランプ兵。


そして。


ハートのジャック。


アリスが呟く。


「……トランプ兵も」


「罪に問われるんだ」


小さく。


そのとき。


声が響く。


「こ、この者は!」


少し震えた声。


「女王のタルトを盗んだ罪である!」


アリスの目が動く。


「……この声」


分かる。


白うさぎ。


白うさぎが続ける。


「じょ、女王様!」


「判決を!」


緊張している。


焦っている。


でも。


止まらない。


アリスは見る。


玉座。


影になっている。


顔が見えない。


一拍。


沈黙。


それから。


声。


軽い。


明るい。


「えー」


少し間。


「無罪でいいよ」


会場が揺れる。


ざわめき。


広がる。


女王の声が続く。


「だってさ」


軽く。


「食べたかったんでしょ?」


間。


「じゃあ、いいじゃん」


迷いがない。


考えていない。


「悪くないよ、それ」


「欲しいって思ったんでしょ?」


「なら正しいよ」


少しだけ笑う。


「あなたの罪は」


「最初から罪じゃない」


一拍。


「全部、肯定するよ」


アリスの呼吸が止まる。


「……嘘」


小さく漏れる。


その声。


聞き間違えるはずがない。


ラブ。

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