表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/66

第56話 その偽りをアリスは断罪する

森。


同じ景色。


同じ音。


同じ会話。


「いい子だね」


「うん!」


繰り返される。


ラブは動けない。


ただ、


見ている。


そのとき。


「……成立してない」


後ろから声。


ラブが振り向く。


アリス。


そこに立っている。


ラブの顔が、


少しだけ緩む。


「……アリスちゃん」


小さく。


安心したように。


アリスは前を見る。


ピノキオ。


ゼペット。


そして。


トランプ兵。


「何これ」


短く言う。


ラブが言う。


「ねえ」


少し迷う。


「これ……いいのかな」


弱い声。


アリスは即答する。


「よくないでしょ」


一切の迷いなし。


ラブが少しだけ顔を歪める。


「でも……」


ゼペットを見る。


「寂しかったなら……」


言葉を絞る。


アリスは遮る。


「だから何?」


冷たい。


ラブが止まる。


アリスは前へ出る。


ピノキオを見る。


「本物になんてなれやしない」


静かに。


はっきりと。


ピノキオの笑顔が、


わずかに歪む。


アリスは続ける。


「あなたはただの人形」


「心なんてものはない」


ゼペットを見る。


「夢を見てるのはあなた」


「そいつじゃない」


空気が歪む。


揺れる。


ピノキオの身体が、


ぶれる。


ゼペットの手が、


震える。


ラブが一歩出る。


「……でも!」


声が出る。


初めて、


強く。


「それでもいいじゃん!」


「寂しかったんだから!」


アリスの動きが止まる。


ゆっくり、


ラブを見る。


「……私を否定するの?」


低く。


ラブが固まる。


「え……そんな……」


言葉が続かない。


アリスは目を逸らさない。


「ラブが教えてくれた」


一歩、


踏み出す。


「気持ちを否定しなくていいって」


「続けていいって」


一拍。


「だから私は、否定を続ける」


空間が揺れる。


剣を呼ぶ。


歪みが落ちる。


重い音。


大剣。


手に収まる。


「少し強くなれた」


ラブの目が揺れる。


「アリスちゃん……」


そのとき。


ピノキオが笑う。


ゼペットも笑う。


同じ形で。


同じ角度で。


「いい子だね」


「うん!」


また重なる。


声がズレる。


響きが狂う。


ゼペットの腕が、


不自然に伸びる。


ピノキオの肩に絡む。


木と肉が、


溶けるように混ざる。


「ねえ、パパ」


「いい子だね」


二人の声。


重なって、


離れない。


身体が一つになる。


木と肉が歪む。


関節が増える。


顔が重なる。


笑顔が二つ。


重なって、


一つになる。


「一緒なら」


「いいよね」


「ずっと一緒」


「離れない」


歪み。


完全に。


ラブが息を呑む。


「……なに、それ」


トランプ兵が動く。


一斉に。


「歪み確認」


「適合」


「排除対象」


アリスへ向く。


チェシャ猫が笑う。


「完成だ」


アリスは踏み込む。


大剣を振るう。


一閃。


トランプ兵が砕ける。


紙のように裂ける。


また来る。


また斬る。


止まらない。


歪みが声を出す。


「幸せを望んで」


「何が悪い」


二つの声。


重なる。


歪む。


アリスは止まらない。


「違う」


一歩踏み込む。


「幸せそのものを否定してるんじゃない」


大剣を構える。


「幸せを“作り出してる”ことを否定してる」


「嘘で満たしてるだけ」


歪みが揺れる。


形が崩れる。


それでも、


笑っている。


「それでも」


「一緒にいられるなら」


「それでいい」


アリスは振り上げる。


「それは優しさじゃない」


一拍。


「依存だ」


振り下ろす。


斬撃。


歪みが裂ける。


音もなく。


崩壊。


形が保てない。


崩れていく。


消える。


森が揺れる。


静まる。


何も残らない。


アリスは剣を下ろす。


「……くだらない」


ラブは立っている。


動けない。


ただ、


見ている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ