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第54話 その優しさをアリスは断ち切る

ひび。


空間に、

亀裂が走る。


遅れて、音が響く。


白雪姫の周囲。


歪む。


光が揺れる。


床が軋む。


それでも。


白雪姫は立っている。


動かない。


笑っている。


「壊すの?」


静かに言う。


アリスは答えない。


ただ、


手を伸ばす。


「チェシャ」


短く呼ぶ。


チェシャ猫が笑う。


「はいはい」


指を鳴らす。


空間が歪む。


落ちる。


重い音。


アリスの手に、


大剣。


異様な大きさ。


人の身長ほどある刃。


なのに。


重さが、ない。


「……軽い」


一言。


握る。


馴染む。


「壊すのに丁度いい」


小さく呟く。


白雪姫がそれを見る。


目を細める。


「やっぱり」


「そうするんだ」


アリスは一歩踏み出す。


「それしかないでしょ」


即答。


白雪姫の身体が揺れる。


形が崩れる。


でも。


消えない。


維持している。


自分で。


「……ねえ」


白雪姫が言う。


声が重なる。


二重に。


ズレて。


「それでも」


「優しくできるのに」


床が裂ける。


黒いものが滲む。


白雪姫の背から、


歪みが溢れる。


影のような、


何か。


それでも、


顔は変わらない。


笑っている。


「全部受け入れれば」


「壊さなくていいのに」


アリスは止まらない。


「それが間違ってる」


大剣を構える。


重心が落ちる。


「押し込めた感情は」


「歪むだけでしょ」


一歩。


踏み込む。


「綺麗なままなんて」


「ありえない」


振るう。


横一閃。


空気が裂ける。


遅れて、音が追いつく。


白雪姫の歪みが弾ける。


それでも、


立っている。


「……それでも」


声が震える。


でも、


消えない。


「私は」


「これでいいって」


「思ったのに」


アリスは踏み込む。


距離を詰める。


迷いがない。


「それ、思い込みでしょ」


大剣を振り上げる。


「現実から逃げてるだけ」


叩きつける。


轟音。


床が砕ける。


歪みが吹き飛ぶ。


白雪姫が膝をつく。


それでも。


笑う。


崩れながら。


「優しさは……」


「残るよ……?」


アリスは答える。


「残らない」


即答。


剣を向ける。


「それはただの“誤魔化し”」


白雪姫の身体が崩れていく。


影が剥がれる。


でも。


最後まで、


目はアリスを見ている。


「……あなたは」


「冷たいね」


アリスは一瞬も迷わない。


「現実的なだけ」


剣を振り下ろす。


真っ直ぐ。


縦に。


切断。


歪みが裂ける。


音もなく。


光が弾ける。


白雪姫の姿が、


消える。


静寂。


崩れた空間が、


ゆっくりと戻る。


何もなかったように。


元の城。


ただ。


誰もいない。


アリスは剣を下ろす。


少しだけ、


息を吐く。


「……終わり」


チェシャ猫が笑う。


「見事だねぇ」


「もう説得すらいらない」


アリスは剣を見る。


それから、


消える。


「必要ないでしょ」


短く言う。


そのとき。


扉が現れる。


何もない空間に。


アリスはそれを見る。


一瞬。


ほんの一瞬。


白雪姫の言葉が、


よぎる。


――優しさは残るよ


かすかに、残る。


「……」


すぐに、


消す。


考えない。


「関係ない」


小さく呟く。


扉に手をかける。


開く。


光。


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