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第52話 その結末にラブは迷う

夜。


冷える。


昼とは違う空気。


静か。


広場。


王子の像。


その肩に、


ツバメ。


ラブは下で見上げている。


「いくよ」


ツバメが言う。


小さな声。


王子は頷く。


何も言わない。


ツバメは近づく。


王子の目。


宝石。


くちばしで、


そっと触れる。


外す。


きらり、と光る。


「……」


ラブはそれを見る。


少しだけ、


目を細める。


ツバメは飛び立つ。


夜の中へ。


しばらくして、


戻ってくる。


「届けてきた」


息が少し荒い。


王子は静かに言う。


「ありがとう」


ラブは笑う。


「よかったね!」


素直に。


でも。


王子の顔を見る。


片方の目がない。


空洞。


それでも。


表情は変わらない。


穏やか。


優しいまま。


「ねえ」


ラブが言う。


「大丈夫?」


王子は答える。


「問題ない」


すぐに。


迷いなく。


「まだ、できることがある」


ラブは少し黙る。


それから。


「……そっか!」


笑う。


でも、


ほんの少しだけ、


呼吸が遅れる。


次の日。


また、


夜。


ツバメは飛ぶ。


宝石を運ぶ。


また一つ、


また一つ。


王子の装飾が、


減っていく。


金が剥がれる。


輝きが消える。


街の人々は、


それを受け取る。


喜ぶ。


笑う。


「助かった!」


「ありがとう!」


でも。


誰も、


上を見ない。


王子を見る者は、


いない。


ラブはそれを見る。


「いいことだよね」


小さく言う。


自分に言い聞かせるみたいに。


ツバメが戻る。


息が荒い。


羽が重そう。


「寒い……」


震える。


ラブが近づく。


「大丈夫?」


ツバメは笑う。


「平気」


少し無理をしている。


「もう少しだけ」


王子を見る。


王子は言う。


「最後に」


「もう一つだけ頼みたい」


ラブの目が動く。


ツバメも黙る。


王子は続ける。


「私の金を、全部」


「剥がしてほしい」


「まだ困っている人がいる」


静かに。


迷いなく。


ツバメが固まる。


「……それやったら」


声が震える。


「君、ただの像になるよ」


王子は答える。


「構わない」


すぐに。


ラブはそれを見る。


言葉が出ない。


一瞬。


ほんの一瞬。


止まる。


ツバメを見る。


震えている。


王子を見る。


何も変わらない。


街を見る。


誰も見ていない。


全部が、


同時に見える。


でも。


「……いいんじゃない?」


言う。


少しだけ、


遅れて。


「助かる人がいるならさ」


笑う。


でも。


今度は、


目が少しだけ逸れる。


ツバメは目を閉じる。


それから、


頷く。


「……わかった」


羽を動かす。


一枚。


また一枚。


金が剥がれる。


王子は、


どんどん色を失う。


灰色。


ただの像へ。


風が吹く。


冷たい。


ツバメが震える。


「……さむい」


小さく呟く。


ラブがそれを見る。


何も言えない。


言葉が、


出てこない。


朝。


広場。


王子の像。


もう、


輝いていない。


ただの、


汚れた像。


その足元。


ツバメが落ちている。


動かない。


ラブが近づく。


しゃがむ。


「……ねえ」


返事はない。


触れる。


冷たい。


指が、


少しだけ止まる。


それから、


ゆっくりと王子を見る。


王子は動かない。


ただ、


そこにあるだけ。


人々が通る。


立ち止まる。


「なんだこれ」


「汚いな」


「撤去しようぜ」


軽い声。


誰も、


躊躇しない。


ラブはそれを聞く。


何も言わない。


少しだけ、


顔を上げる。


空を見る。


青い。


いつもと同じ。


変わらない。


「……あれ?」


小さく呟く。


「いいこと……したよね」


誰に言うでもなく。


返事はない。


少しだけ、


考える。


今までより、


ほんの少し長く。


「……これ」


言葉を探す。


「これって……」


喉まで出て、


止まる。


形にならない。


分からない。


風が吹く。


冷たい。


ラブは立ち上がる。


もう一度、


王子を見る。


ツバメを見る。


それから。


小さく、


笑う。


少しだけ、


弱く。


「……アリスちゃんなら、どうしたのかな」


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