表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/66

第51話 その優しさをラブは肯定する

風。


冷たい。


さっきまでとは違う。


ラブは一人、


立っていた。


「……あれ?」


周りを見る。


知らない場所。


白うさぎもいない。


アリスもいない。


「はぐれちゃったかー」


でも。


特に気にしない。


「ま、いっか!」


軽く笑う。


歩き出す。


石畳。


古い街。


人はいる。


でも。


少しだけ、


暗い。


元気がない。


俯いて歩いている。


「んー?」


首を傾げる。


少しだけ、


眉が寄る。


(なんか、重いね)


でも。


すぐに、


笑う。


そのとき。


上から、


声。


「ねえ」


ラブが顔を上げる。


高い場所。


広場の中央。


大きな像。


王子。


金でできた体。


宝石の瞳。


輝いている。


でも。


表情は、


悲しそうだった。


「あなた」


優しい声。


「少し、手伝ってくれない?」


ラブは目を輝かせる。


「いいよー!」


即答。


迷いなし。


王子が少し驚く。


「……ありがとう」


そのとき。


小さな影が降りてくる。


羽音。


ツバメ。


王子の肩に止まる。


ラブを見る。


「この人、すぐそうやって頼むんだ」


少し呆れた声。


ラブは笑う。


「いいじゃん!」


「困ってるならさ!」


ツバメはため息。


「僕はもう南に行きたいんだけどね」


ラブがしゃがみ込む。


目線を合わせる。


「でも、手伝ってるんでしょ?」


ツバメが黙る。


少しだけ目を逸らす。


ラブは続ける。


「やりたいならやればいいし」


「行きたいなら行けばいいし」


軽く言う。


「どっちでもいいよ」


ツバメが顔を上げる。


少しだけ、


揺れる。


王子が静かに言う。


「この街には」


「苦しんでいる人がいる」


視線を遠くへ向ける。


「私は動けない」


「だから、この子に頼んでいるんだ」


ラブは頷く。


「うんうん」


「いいことじゃん!」


にこっと笑う。


王子は続ける。


「今も」


「一人の女性がいる」


「寒さに震え、泣いている」


ラブの表情が少しだけ変わる。


ほんの一瞬、


真面目になる。


「そっか」


真っ直ぐ頷く。


王子は言う。


「私の目にある宝石を」


「その人に届けてほしい」


ツバメが驚く。


「え?」


「それ、君の“目”だよ?」


王子は静かに言う。


「構わない」


迷いがない。


ラブはすぐに笑う。


「いいね!」


「優しいじゃん!」


ツバメは戸惑う。


「いや……でも……」


ラブは軽く言う。


「困ってる人がいるならさ」


「助けたいって思うのも」


一拍。


「嫌だって思うのも」


両方、


そのまま言う。


ツバメが止まる。


ラブは笑う。


「どっちでもいいよ」


「でも」


少しだけ前に出る。


「やるって決めたなら」


「それでいいじゃん」


王子を見る。


まっすぐ。


「無理するのもさ」


一拍。


「その人のやりたいことなんでしょ?」


王子の目が、


わずかに揺れる。


ツバメは小さく息を吐く。


「……わかったよ」


羽を広げる。


王子の目を見上げる。


「取るよ」


王子は頷く。


静かに。


覚悟を決めた顔で。


ツバメが近づく。


くちばしが、


宝石に触れる。


一瞬。


躊躇。


それでも。


引き抜く。


光が、零れる。


王子の視界が、


片側だけ消える。


それでも。


表情は変わらない。


ラブはそれを見る。


じっと。


一瞬だけ、


何も言わない。


それから。


にこっと笑う。


「うん」


「ハッピーになりそう!」


でも。


その言葉の奥で。


ほんの少しだけ、


違和感が残っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ