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第48話 その恐怖をアリスは否定する

黄色い道。


森を抜ける。


視界が開ける。


風が強くなる。


かかし。


ブリキの男。


ラブ。


その後ろを、


アリスが歩く。


静か。


そのとき。


「う、うわあああ!!」


突然の声。


低く、


大きい。


草むらが揺れる。


次の瞬間。


飛び出す。


ライオン。


大きな体。


牙。


爪。


迫る。


白うさぎが叫ぶ。


「ひぃいいい!!」


ラブは止まらない。


前に出る。


「おー!」


楽しそうな声。


ライオンが止まる。


一瞬。


間。


「……え?」


戸惑う。


ラブはにこっと笑う。


「びっくりしたー!」


普通に言う。


ライオンが目を瞬かせる。


「……こ、怖くないのか?」


ラブは首を傾げる。


「んー?」


少し考える。


「びっくりはしたけど」


「別に?」


あっさり。


ライオンが後ずさる。


「……おかしいだろ」


声が震える。


大きな体が、


わずかに揺れる。


かかしが言う。


「この人、変なんだ」


ブリキの男も頷く。


「うむ」


ラブは気にしない。


ライオンに近づく。


「で、どうしたの?」


自然に聞く。


ライオンは少し迷って、


それから言う。


「……俺は」


視線を落とす。


「臆病なんだ」


拳を握る。


「すぐ怖くなる」


「逃げたくなる」


ラブはすぐに答える。


「いいじゃん!」


ライオンが顔を上げる。


「……え?」


ラブは笑う。


「怖いのにさ」


「さっき飛び出してきたよね?」


指をさす。


「それ、すごくない?」


ライオンが固まる。


「……そ、それは……」


ラブは続ける。


「怖いのに動いたんでしょ?」


一拍。


「それってさ」


「“怖くない人”よりすごくない?」


軽く言う。


ライオンの目が揺れる。


「……そう、なのか?」


ラブは頷く。


「うん!」


「怖いって分かってるのに動けるなら」


「それ、ちゃんと勇気だよ」


やわらかく言う。


そのとき。


アリスが口を開く。


「違うでしょ」


空気が変わる。


ライオンが振り向く。


アリスはまっすぐ見る。


「怖いなら」


一歩近づく。


「それはただの恐怖」


静かに言う。


「動いたから勇気?」


首を傾げる。


「結果が出てないなら意味ないでしょ」


ライオンの表情が固まる。


ラブが少しだけ眉を寄せる。


アリスは続ける。


「怖いまま」


「逃げたくなるまま」


一歩。


「それを抑えられてないなら」


一拍。


「それ、勇気じゃない」


淡々と。


「ただの反応」


言い切る。


ライオンが震える。


「……俺は……」


言葉が出ない。


ラブが前に出る。


「いいじゃん」


少し強め。


「抑えられてなくてもさ」


「それでも前に出たんでしょ?」


ライオンを見る。


「それだけで十分だよ」


アリスを見る。


「ね?」


アリスは視線を返す。


「……それでいいならね」


短く。


ライオンは二人を見る。


揺れる。


大きく揺れる。


胸が上下する。


呼吸が荒い。


それでも。


「……欲しい」


小さく言う。


「ちゃんとした勇気が」


ラブが笑う。


「そっか!」


振り返る。


道の先。


「じゃあ決まりだね!」


「みんなで行こ!」


一歩、


踏み出す。


「今のままでもいいけど」


にこっと笑う。


「欲しいなら取りに行こ!」


かかし、


ブリキの男、


ライオン。


三人が並ぶ。


少しだけ、


自信のない顔で。


それでも、


前を向く。


アリスはそれを見る。


何も言わない。


ただ。


小さく呟く。


「……曖昧」


風が吹く。


黄色い道は、


まだ続いている。


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