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第47話 その感情をラブは認める

黄色い道を進む。


風が揺れる。


かかしが後ろからついてくる。


「ありがとう、助けてくれて!」


何度も言う。


ラブは笑う。


「いいっていいって!」


軽い。


アリスは前を見る。


無言。


しばらく歩く。


森に入る。


木々が増える。


日差しが遮られる。


少しだけ、


涼しい。


そのとき。


「……あ」


かかしが声を上げる。


「聞こえない?」


耳を澄ます。


微かに。


金属の音。


ぎい、ぎい、と。


ラブが反応する。


「ほんとだ!」


音の方へ走る。


アリスも続く。


森の奥。


木の間。


そこにいた。


斧を振り上げたまま、


止まっている。


ブリキの人形。


腕が固まっている。


動かない。


「……あー」


ラブが近づく。


顔を覗き込む。


「動けない感じ?」


ブリキの男が、


ゆっくりと目を動かす。


「……油」


かすれた声。


「さして……くれ……」


白うさぎが慌てる。


「ゆ、油ですか!?」


周りを探す。


近くに、


小さな缶。


アリスがそれを拾う。


無言で差し出す。


ラブが受け取る。


「ありがと!」


関節に油を差す。


ぎい、と音が変わる。


ゆっくり、


腕が動く。


一度。


二度。


やがて、


滑らかに動き出す。


「……ああ」


ブリキの男が、


息を吐く。


「助かった」


ラブがにこっと笑う。


「よかったー!」


ブリキの男は、


自分の胸を見下ろす。


軽く叩く。


コン、と乾いた音。


「でも」


少しだけ、


声が落ちる。


「やっぱり、足りない」


ラブが首を傾げる。


「なにが?」


ブリキの男は、


胸に手を当てる。


「心だ」


静かに言う。


「私は、感情がない」


「だから……」


言葉を探す。


「誰かを愛することも、できない」


ラブは少し考える。


それから、


あっさり言う。


「でもさ」


ブリキの男が顔を上げる。


ラブは続ける。


「助けてもらった時、嬉しかったでしょ?」


ブリキの男が止まる。


「……それは」


ラブは笑う。


「それ、感情じゃん」


軽く言う。


「ありがとうって思ったならさー」


一拍。


「それ、ちゃんと“ある”よ」


ブリキの男が黙る。


少しだけ、


考える。


「……そう、なのか?」


ラブは大きく頷く。


「うん!」


迷いがない。


「感じてるなら、それでいいじゃん」


やわらかく言う。


その横で。


アリスが口を開く。


「それで満足なの?」


空気が少し冷える。


ブリキの男が振り向く。


アリスは続ける。


「嬉しい“みたいな反応”があるだけで」


「それを心って言うの?」


静かな声。


「ただの反応かもしれないのに」


淡々と。


でも、


否定。


ブリキの男が言葉を失う。


ラブが間に入る。


「いいじゃん!」


少し強め。


「反応でも感情でも!」


「感じたなら、それでいいでしょ!」


アリスは視線だけ向ける。


「……それでいいならね」


繰り返す。


短く。


ブリキの男は、


二人を見る。


迷う。


揺れる。


胸に手を当てる。


コン、と音がする。


「……わからない」


小さく。


「でも」


一拍。


「欲しい」


視線を上げる。


「ちゃんとした“心”が」


ラブが笑う。


「そっか!」


「じゃあ一緒だね!」


指をさす。


道の先。


「オズのところ行こ!」


一歩、


近づく。


「今のままでもいいけど」


にこっと笑う。


「欲しいなら、取りに行こ!」


ブリキの男が頷く。


「……ああ」


かかしも頷く。


少しだけ、


安心した顔。


アリスはそれを見る。


何も言わない。


ただ、


目を細める。


風が吹く。


葉が揺れる。


黄色い道は、


まだ続いている。


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